戻る 石渡明(前原子力規制委員会委員)記者会見[2024/11/18] 戻る

○初めに
 今年(2024年)9月に原子力規制委員会を退任された石渡明さん、今年は退任時の記者会見以外で、3回講演及び記者会見を行っています。
 1回目が6月18日のウィーンIAEA本部での 講演 (PDF形式レジュメ)、2回目が8月5日の大阪公立大学での 講演 (PDF形式レジュメ)、3回目が11月18日の日本記者クラブ(日本プレスセンタービル)での会見です。3回目の会見の模様は YOUTUBE に公開されています。
 今回、3回目の記者会見の文字起こしを行い、当日の画面のスクリーンショット、2回目の講演のレジュメの画像とあわせたものを以下に作成しました。
 石渡さんの10年間の様々な功績の全ての紹介とはなりませんが、皆さんの理解を深める一助となれば幸いです。
 

○全体の構成
 
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(1) 記者クラブ会見 石渡明・前原子力規制委員会委員 会見
(2) 記者クラブ会見 石渡明・前原子力規制委員会委員 会見
(3) 記者クラブ会見 自然ハザードに対する日本の最近の原子力規制、再審査及びバックフィット
(4) 記者クラブ会見 石渡明 自己紹介
(5) 記者クラブ会見 今日の話の内容
(6) 記者クラブ会見 はじめに(2011年3月11日 東日本大震災の体験)
(7) 記者クラブ会見 2011年3月11日に津波災害を受けた仙台市海岸部の水田(同年3月27日石渡撮影)
(8) 記者クラブ会見 岩手県大槌町と江岸寺墓地の津波被害(2011年7月31日石渡撮影)
(9) 記者クラブ会見 岩手県大槌町の江岸寺墓地の津波・津波火災被害状況(2)(2011年7月31日石渡撮影)
(10) 記者クラブ会見 津波火災により全焼した石巻市立門脇(かどのわき)小学校 隣接する西光寺墓地の墓石
(11) 記者クラブ会見 福島第一原子力発電所から80km以内における2011年12月と2022年10月の空間線量の分布(μSV/h)
(12) 記者クラブ会見 原子力規制委員会 独立した規制機関
(13) 記者クラブ会見 原子力規制委員会の組織理念
(14) 大阪公立大学講演 自然ハザードに対する原子力規制要求
(15) 記者クラブ会見 (1)津波
(16) 記者クラブ会見 原子力発電所に来襲した2011年3月11日津波
(17) 記者クラブ会見 (2)活断層
(18) 記者クラブ会見 「活断層等」の判断基準
(19) 記者クラブ会見 川内原発における断層と鉱物脈の関係
(20) 記者クラブ会見 各原子力施設_現在の状態_活断層等の判定表
(21) 記者クラブ会見 (3)地震
(22) 大阪公立大学講演 より科学的で精密な基準地震動の策定
(23) 記者クラブ会見 解放基盤面と地震基盤面の深さ
(24) 大阪公立大学講演 基準地震動を超える加速度が観測された発電所
(25) 記者クラブ会見 川内原子力発電所から100km以内の活断層
(26) 大阪公立大学講演 2016年熊本地震
(27) 記者クラブ会見 (4)火山活動
(28) 記者クラブ会見 自然ハザード関係のバックフィットと改善事項
(29) 大阪公立大学講演 バックフィット(1)気中火山灰濃度
(30) 大阪公立大学講演 バックフィット(1)気中火山灰濃度の適正化_富士山噴火の例
(31) 大阪公立大学講演 1707年宝永噴火の火山灰層(最上部の>1m、御殿場市水土野にて)
(32) 大阪公立大学講演 降下火砕物の終端速度と堆積量から気中平均濃度を推定
(33) 大阪公立大学講演 航空機の基準、実測値、人体影響
(34) 大阪公立大学講演 原子力事業者の火山灰対策
(35) 大阪公立大学講演 バックフィット(2)火山灰層厚の見直し(関電)
(36) 大阪公立大学講演 バックフィット(3)警報なし津波
(37) 大阪公立大学講演 バックフィット(3)警報なし津波
(38) 大阪公立大学講演 バックフィット(4)標準応答スペクトル
(39) 記者クラブ会見 改善(5)地滑り対策の斜面セットバック(福島第一原子力発電所)
(40) 大阪公立大学講演 改善(5)地すべり対策の斜面セットバック(福島第一原子力発電所)
(41) 大阪公立大学講演 敷地内の富岡層風化部の分布状況[南北断面]
(42) 記者クラブ会見 敷地内の富岡層風化部の分布状況[東西断面]
(43) 記者クラブ会見 斜面対策工の検討
(44) 記者クラブ会見 改善(6)津波引き波対策の防護柵設置 JAEA東海再処理施設
(45) 記者クラブ会見 改善(6)津波引き波対策の防護柵設置 JAEA東海再処理施設
(46) 記者クラブ会見 トピックス:2024年1月1日能登半島地震
(47) 大阪公立大学講演 2024年1月1日能登半島地震の震源(黄色)と既知の活断層位置
(48) 記者クラブ会見 2024年1月1日能登半島地震による地盤 変動:4mの隆起と3mの西向き移動
(49) 記者クラブ会見 2024年8月19-20日能登半島地震調査
(50) 記者クラブ会見 結論
(51) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答1
(52) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答2
(53) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答3
(54) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答4
(55) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答5
(56) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答6
(57) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答7
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[2]記者クラブ会見 画像と文字起こし(抜粋)  TOP
 [凡例]
 (##)記者クラブ会見 タイトル部
   とあるのは、11月18日の記者会見で、図と石渡さんのコメントが有ります。
 (##)大阪公立大学講演 タイトル部
   とあるのは、8月5日の大阪公立大学での講演で、図のみとなります。
 ※タイトル部もしくはアイコンをクリックすると拡大図と文字起こし(全文)のページが開きます。

(1) 記者クラブ会見 石渡明・前原子力規制委員会委員 会見
 2014年9月から今年9月までの10年にわたり原子力規制委員会の委員を務めた石渡明さんが登壇。自然ハザードに対するこの間の原子力規制委員会としての対応を振り返るとともに、能登半島地震で得た知見と今後の課題などにも触れた。
 自然ハザードが多い日本では「厳しい原子力規制が必要になる」との考えを示した。
 石渡さんは、敦賀原子力発電所2号機直下の断層を巡る審査で活断層の可能性を否定できないとし、新規制基準に適合しないという結論をまとめたほか、原子力発電所の60年超運転を可能にする法改正に伴う規制制度の変更に際し、規制委の会合で最後まで反対したことで知られる。
 質疑応答では、敦賀2号機について規制委員会が正式に不合格としたことへの受け止め、60年超運転を可能とする法改正に反対した理由などについての質問も寄せられた。
 司会 行方史郎 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)

(2) 記者クラブ会見 石渡明・前原子力規制委員会委員 会見

【司会】
 今日は今年9月に原子力規制委員会の委員をご退任された石渡明さんをお招きしました。石渡さんは、岩石学地質学がご専門で金沢大学や東北大学で教鞭を取られ、日本地質学会の会長などをなされた後、2014年9月に原子力規制委員会の委員に、ご就任され、2期10年間お務めになられました。
 原発の地震や火山対策などの審査を担当され、敦賀原子力発電所2号機の断層を巡る審査では、活断層の可能性を否定できないとして、基準には適合しないという結論をまとめられました。
 また60年を超える原発の運転を可能にする法改正に対しては、規制委の中での議論で、最後まで反対の立場を取られました、本日は規制委員会での10年間を振り返ってもらうとともに、規制行政のあり方、課題についても、話がお伺いできればと思っております。


(3) 記者クラブ会見 自然ハザードに対する日本の最近の原子力規制、再審査及びバックフィット

【石渡】
 皆様こんにちは石渡と申します。今日は40分間ほどお話をさせていただいて、その後ご質問を受けるという形にしたいと思います。
 今回お話しするのは、私がこの10年間どんな仕事をしてきたかということについてですね、ご紹介をするという趣旨であります。表題はここに書いてあるように「自然ハザードに対する日本の最近の原子力規制、再審査及びバックフィット」ということで、お話をさせていただきます。

(4) 記者クラブ会見 石渡明 自己紹介

【石渡】
 その後日本へ帰ってきて、しばらくして公募に応募したところ金沢大学の方でとっていただいて、助手、助教授、教授という具合いで、22年間金沢におりました。その後東北大に移って、東北大の東北アジア研究センターというところの教授を6年半やらせていただきました。
 その中で原子力規制委員会の方から、色々お話があって、例えば、当時有識者の調査団というのが、敷地内の活断層の調査というのをやってまして、私は当時日本地質学会の会長をやっていたので、ピアレビューというのをやるということで、そのピアレビューの座長をやってくれないか、というような話がまい込んできました。何回かお引き受けしたんので、そんなこともあってかどうかは分かりませんが、規制委員に就任してくれという話が来まして、大学を6年半で辞めて、この原子力規制委員会の委員というものを10年間させていただいたということになります。

(5) 記者クラブ会見 今日の話の内容

【石渡】
 今日の話は、初めに、なぜ私がこういう原子力規制委員会というような仕事を引き受ける気持ちになったのか、2011年の東日本大震災を仙台で体験し、津波とかの調査を行ったということが非常に大きい。自分の中では大きな比重を占めています。
 その後、この自然ハザード関係の、バックフィットというのを、原子力規制委員会では何件か行ってきました。これは昔はなかった制度でありまして、要するにこういう自然ハザードのようなことは、非常に不確定さが大きい、状況が変化するいうことです。一度決めたらば、それをずっと守ってればいいというわけには、中々いかないわけです。ですから、その状況が変化した、あるいは新知見が出てきた、という場合は、これはやはり規制に反映させる必要があるということで、このバックフィットという制度が設けられたわけです。

(6) 記者クラブ会見 はじめに(2011年3月11日 東日本大震災の体験)

【石渡】
 東日本大震災を起こしたこの地震というのは、この東北地方太平洋の日本海溝で発生したマグニチュード9という、日本の歴史上最大の地震だったわけです。これについては、誰も、こんな大きな地震が起きるということは、地震学者の中でも、予想をしていた人はいないわけです。
 ただ、その歴史を見ますと、平安時代に869年でしたかね、貞観の大地震っていうのがありました。
 この仙台平野に、かなり大きな津波が来たという記録がある。特に東北大学の地質学者が、仙台平野を掘ってみると、確かにその時の津波の堆積物がある、ということが事前に分かっていたわけです。ただ、それは残念ながらあまり注目されていなかったという状況です。


(7) 記者クラブ会見 2011年3月11日に津波災害を受けた仙台市海岸部の水田(同年3月27日石渡撮影)

【石渡】
 こういうふうに津波が襲ったところは、この田んぼが、全部泥で埋まっているわけで、これをご覧になると、一面平らに見えます。田んぼっていうのは必ずあぜ道があったり、色々あるわけですけど、それ全部砂に埋まってるわけです。20cmぐらいの砂が溜まっております。どこでも大体20cmぐらい。
 そこにタンクが転がっていたり、車があったりで、津波の被害を受けた墓地ですけれどももう墓石がこう土台からひっくり返っていたりで、お墓の間には津波が運んできた、ゴミがいっぱい埋まっていたり、非常に惨憺たる状況になっておりました。

(8) 記者クラブ会見 岩手県大槌町と江岸寺墓地の津波被害(2011年7月31日石渡撮影)

【石渡】
 これは岩手県の大槌町という、非常に大きな被害を受けたところに調査に行った時の写真です。この町のすぐ横に江岸寺というお寺がありまして、ここが江岸寺の墓地、お寺そのものはもう完全に流されて、土台しか残っていない状況です。
 この墓地も墓石がほとんど全部壊されているか、流されているか、墓石が流れていくというのは、初めてみました。しかし、地震はここはあんまり強くなかった。
 丘の上の方へ行くと、お墓は平気でして、全然被害を受けていません。強い地震があると、墓石というのは倒れやすいんですけれども、ここは全然倒れていない。だから地震の揺れはひどくなかったんですけど、津波の被害が大きかった。

(9) 記者クラブ会見 岩手県大槌町の江岸寺墓地の津波・津波火災被害状況(2)(2011年7月31日石渡撮影)

【石渡】
 墓石がこう後ろに倒れかかっていますが、これどっちへ倒れているかというと、こう海側(下流側)へ向かって倒れています。というのは、上流側(陸側)から来た水の流れ、あるいは、その流れに漂流物があって、それが当たって、こう海側へ倒れてるているのです。
 津波というのは、押してくる波、海から来る波だけが怖い、のではなくて、引いていく波というのは、非常に強力ですということを、実地にこの被害状況を拝見させていただいて、こう印象を非常に強くしたところです。

(10) 記者クラブ会見 津波火災により全焼した石巻市立門脇(かどのわき)小学校 隣接する西光寺墓地の墓石

【石渡】
 これは宮城県の石巻市の門脇(かどのわき)小学校です。この小学校は周りが墓地になっております。油とかあるいは木材が一緒に流れてきて、それらがこう燃えた状態で流れてくることがあります。津波火災ですね。
 例えばここに墓石がございますけれども、周りが丸くこの四角い石が丸くなってしまってる。なぜこういうことになるかというと、非常に熱い火がこう来るわけですから、そこで急に暖められて、次の瞬間は冷たい水が来るわけで、それを何回も繰り返しますと、この表面から風化が非常に進んでボロボロになる。こういう立派な花崗岩の墓石が、もう周りからボロボロになって、まんまるになってしまうというのを私は初めて見ました。この小学校は津波火災の火をまともに受けて、全焼してしまったわけです。

(11) 記者クラブ会見 福島第一原子力発電所から80km以内における2011年12月と2022年10月の空間線量の分布(μSV/h)

【石渡】
 これ(左図)は2011年の12月現在の、放射線量の分布、ここが福島第1原発でこのちょうど放射性物質が放出された時の風向きが、この南東から北西へ行って、北西へしばらく行ってから、こちら側の風に乗ってこういう風に流されたという様子がよく分かります。でこの1番赤いところは、これ大体20マイクロ以上のところです。毎時20マイクロシーベルト以上のところが、赤く塗ってあります。でこちら(右側)は、これ去年(2023年)の状況で、12年経って、線量は弱くなっております。

(12) 記者クラブ会見 原子力規制委員会 独立した規制機関

【石渡】
 さてそれでこういう原子力事故を契機として、日本の規制行政っていうのは全く、面目を一新したわけです。これは事故の前と事故の後の規制行政、行政機関の違いを示した図であります。
 例えば原子力安全・保安院というのが、これは経産省の一部としてあったわけです。これが事故後は、この文科省、経産省、こういったところとは全く別の推進側なんですけど、その規制側から独立した組織として、環境省の外局として、原子力規制委員会というものが作られたということで、独立した規制行政を行うという機関として発足したわけです。

(13) 記者クラブ会見 原子力規制委員会の組織理念

【石渡】
 これは原子力規制委員会の組織理念ですけれども、原子力に対する確かな規制を通じて人と環境を守る。これが使命であると、独立した意思決定、実効ある行動、透明で開かれた組織、向上心と責任感、そして緊急時の対応。実際に委員をやってますと、これが非常に大変で、これは何かあると、いつでもすぐに出勤しなければいけないので、これは結構大変です。
 規制委員は5人ですけれども、それをサポートするための事務局として規制庁という役所がございまして、職員は約1000人、今は1000人を超えて多分1100人に近いと思いますが、それぐらいの職員が働いています。

(14) 大阪公立大学講演 自然ハザードに対する原子力規制要求


(15) 記者クラブ会見 (1)津波

【石渡】
津波については既往最大を超えて、科学的に妥当な津波を設定するとで、深層防護の方針に基づいて、多重的な対策を行うということが求められております。
 例えば、ここに原子力発電所の原子炉があって、ここがこの色の濃いところが普段の水面で、ここにこういう高い津波が来た場合でも、大丈夫なように防潮堤を高くしてくださいと、この基準津波というのを決めるわけです。それがこう来た時でも、中に水が入らないだけの高い防潮堤を作ってください。
 ただし、それを超えてしまう場合もあり得るので、そういった場合でも、この原子炉の建物の中に水が入んないように、水密扉を作ってくださいとか、当然のことながら、津波の監視装置を用意してくださいとか、そういう色々な条件がございます。

(16) 記者クラブ会見 原子力発電所に来襲した2011年3月11日津波

【石渡】
 実際に来た津波の高さは東通原発で4m、女川原発で13mぐらい、福島第一、第二で15m、東海第二で5mでした。問題の事故が起きたところは、この福島第一なんですけれども、実は福島第二も結構危なかった。これについては皆さんよくご存知だと思います。
 女川については敷地の高さが15mありましたので、幸い津波の高さよりはちょっと高かったので、ほとんど浸水はしなかったんですけど、ただこの時女川原発は実は地震の時に1m沈降した、この15mっていうのは実は14mになったんです。そういう意味ではギリギリだったということが言えると思います。

(17) 記者クラブ会見 (2)活断層

【石渡】
 原子力の方では活断層っていう言葉はあんまり使わずに、この「将来活動する可能性のある断層等」という言い方をします。これは非常に持って回った言い方なんです。英語では活断層っていうのは、アクティブフォールトと、普通言いいます。原子力関係ではこのケイパブルフォールト("Capable faults")っていう、地震を起こしうる断層、動きうる断層ということ、そういう言葉遣いがちょっと変わっております。
 日本では、定義として、後期更新世(12〜13万年前)、これ以後に1度でも活動したもの、これを将来活動する可能性が否定できない断層というふうにします。
 で、もしこれで決着がつかない場合は、40万年前まで遡って調べなさいということが、審査ガイドに書いてあります。耐震設計上の重要度Sクラス、一番重要な建物、原子炉とか、あるいはそのタービン建屋とか取水路とか、こういった建物は、この「活断層等」の露頭がない地盤に設置することを要求しております。

(18) 記者クラブ会見 「活断層等」の判断基準

【石渡】
 では、その「活断層等「をどうやって判断するか、地層というのは古いものから新しいものへ重なっております。この真ん中この茶色い層が12〜13万年前としますと、下にはそれより古い地層があって、上には新しい地層があるわけです。この新しい地層がずれてたら、これはアウト、ダメです。
 では12〜13年前の地層だけがずれていて、それより上の地層はずれていません。これもダメです。これ「活断層等」になります。では、その12〜13年前の地層はずれていませんが、その下がずれています。これはオッケーです。
 ただこういう地層が、いつもあるとは限らないわけです。そういう時はどうするかというと、この鉱物脈法というのを使います。別に鉱物の脈じゃなくても、例えば岩脈でもいいんです。何でも目で見えるものでも、顕微鏡で見えるものでも何でもいいんです。断層を貫いているか、断層に切られているかで、この脈が12〜13年前あるいはそれより新しい脈がこの断層に切られていたら、「活断層等」です。でも、これが全然切られていなければ、これはオッケーですと、こういう判断基準です。

(19) 記者クラブ会見 川内原発における断層と鉱物脈の関係

【石渡】
 これは私が就任する直前に最初に許可された川内原発、この審査は私の前任の島崎委員がなさったわけです。その資料から取ったものです。
 例えばこの写真ですと、左上から右下へ、茶色い幅広いバンドが伸びています、これが断層の破砕帯です。この断層の破砕帯をこの白い脈がズバっと切って、ずれていませんね、これが鉱物脈です。
 鉱物脈はいつできたか、川内原発がある地域というのは、菱刈鉱山(ひしかりこうざん)という、日本で唯一稼働してる金鉱山があります。で、金鉱床ができたのが大体100万年前なんです。その時にこの脈ができてるわけです。これは12〜13年前よりずっと古い脈なわけです。それがずれてないわけですから、これは「活断層等」ではありませんという判断になります。

(20) 記者クラブ会見 各原子力施設_現在の状態_活断層等の判定表

【石渡】
 これは、今までこう審査をしてきた、北から南までずっと並べまして、上載地層法と鉱物脈法、どれくらいの割合でやっているか、緑色が鉱物脈法で、黒いのが上載地層法です。ざっと見て分かるわかるように大体半々ぐらいです。
 ここでまだ結論が出ていないのか、3つあります。大間と浜岡と敦賀で、敦賀については、ついこの前に最終的な判断が出まして、将来活動する可能性があることは否定できない、ということになりました。大間と浜岡については、この活断層に関しては、まだ審査中で結論が出ていません。

(21) 記者クラブ会見 (3)地震

【石渡】
 この「震源を特定せず策定する地震」として、この2004年に北海道で発生した留萌地震、この地震波を原子炉の下に入れるということで、今まで審査をしていました。それ以外に13個の地震がリストアップしてあって、これについても考慮しなさいと、審査ガイドにリストが載っています。
 我々は電力会社の社長さんとかとお話をする時に、いつもこの留萌地震1つでは非常に心もとないので、他の地震についても、ちゃんと解析して、それを「震源を特定せず策定する地震」の入力地震動として、おたくの原子力発電所に入力して大丈夫かどうか確かめてくださいということを、いつも申し上げていたんですが、残念ながら事業者さんは、それを一向にやらなかったんです。
 そこで、我々としては業を煮やしてですね、では自分たちでやりますということで、標準応答スペクトルというのを作りまして、これを全国の原発に原子力発電所に、バックフィットをかけました。

(22) 大阪公立大学講演 より科学的で精密な基準地震動の策定


(23) 記者クラブ会見 解放基盤面と地震基盤面の深さ

【石渡】
 原子炉の直下に入れると申しましたが、ではどこに入れるか、どれくらいの深さのとこに入れるか、ある程度岩が硬くなる所を解放基盤面とします。地面に近いとこは柔らかいので、深いところ、S波の速度が700m毎秒になるところを解放基盤面とします。
 日本の原子力発電を北から南へずっと並べてますが、この辺を境いに、解放基盤面の深さが全然違うということがお分かりになると思います。西日本は非常に地盤が硬くて安定した地盤です。それに対して、東日本は非常に深くもぐらないと、この地震波のスピードが700m超えない、要するに、柔らかい地盤だということです。
 発電所によって、全然地質が違う。日本の原子力規制は、全部一律に同じ値を入れるとか、そういうことは中々出来ません。

(24) 大阪公立大学講演 基準地震動を超える加速度が観測された発電所


(25) 記者クラブ会見 川内原子力発電所から100km以内の活断層

【石渡】
 熊本地震の例なんですけれども、この川内原発の許可をした時に、「震源を特定して策定する地震動」として、この布田川ー日奈久断層、長さ93km、マグニチュード8.1っていう地震をあらかじめ想定してありました。
 熊本地震は2016年だから、川内原発の許可を出した2年後に、地震が起きたわけです。この地震は地面ではっきりと動いた断層の出た長さが35kmぐらいです。余震域の長さっていうことで言いますと、これ130kmぐらい、大分の辺りまで余震が起きてますので、余震というか関連地震、非常に長い地域で、地震が発生した。ただこの地震はマグニチュード7.3でありました。従って我々が予想したと言いますか、あらかじめ想定していた地震よりも、幸いにして小さかったということになります。

(26) 大阪公立大学講演 2016年熊本地震


(27) 記者クラブ会見 (4)火山活動

【石渡】
 火山活動ですけれども、これは半径160kmにある火山を全て調査をするということになっております。立地評価と影響評価、両方やります。立地評価は、主に火災流、大規模火災流が来ないかどうかと、来る可能性がある場合には、その火山がすぐにその大規模噴火をするような火山ではない、ということを証明していただいて、その上で動かした後も、モニタリングをやっていただく、ということになっております。
 影響評価の方は、火山灰が降っても大丈夫です、という評価をしているわけです。これについてもバックフィットをやりました。

(28) 記者クラブ会見 自然ハザード関係のバックフィットと改善事項

【石渡】
 火山については、気中火山灰濃度が極端に低い値を取っていたので、それは現実的ではないので、事業者は最初1立方m当たり3mgという値を使っていたんです。これが実際に火山の噴火が起きて、例えば富士山の宝永噴火で、1立方m当たり、1000mgを超えますという結果が出ております。
 つまり300倍、それぐらいを火山灰というのは濃いものになる。それにも対応してください、ということをお願いしました。
 火山灰の層厚が、例えば関西電力の3つの発電所は10cmだっていうことで許可をしたんですけれど、その後、京都辺りで30cm積もってるというのが発見されましたので、バックフィットをかけました。
 高浜の津波警報なしでくる火山の噴火とか、今お話した「震源を特定せず策定する地震動」の標準応答スペクトルというものを作りました。

(29) 大阪公立大学講演 バックフィット(1)気中火山灰濃度


(30) 大阪公立大学講演 バックフィット(1)気中火山灰濃度の適正化_富士山噴火の例


(31) 大阪公立大学講演 1707年宝永噴火の火山灰層(最上部の>1m、御殿場市水土野にて)


(32) 大阪公立大学講演 降下火砕物の終端速度と堆積量から気中平均濃度を推定


(33) 大阪公立大学講演 航空機の基準、実測値、人体影響


(34) 大阪公立大学講演 原子力事業者の火山灰対策


(35) 大阪公立大学講演 バックフィット(2)火山灰層厚の見直し(関電)


(36) 大阪公立大学講演 バックフィット(3)警報なし津波


(37) 大阪公立大学講演 バックフィット(3)警報なし津波


(38) 大阪公立大学講演 バックフィット(4)標準応答スペクトル


(39) 記者クラブ会見 改善(5)地滑り対策の斜面セットバック(福島第一原子力発電所)

【石渡】
 地滑り対策というのがございます。ここが第一発電所なんですけど、この1993年に出たこの産総研という、今は産総研、産業技術総合研究所、この頃は地質調査所という役所があったんで、その地質調査所が出した地質図があります。
 ここのところに直径が1kmぐらいの地滑りが書いてある、福島第一原子発電所のすぐ南側です。
 私はこれを見て、非常にびっくりしまして、なんでこんなとこで地滑りが起きるんだろう、確かにこのこれはちょっと前に撮影された航空写真に基づくわけですけど、確かにこう地滑りのように見えるんで、色々調べてみました。

(40) 大阪公立大学講演 改善(5)地すべり対策の斜面セットバック(福島第一原子力発電所)


(41) 大阪公立大学講演 敷地内の富岡層風化部の分布状況[南北断面]


(42) 記者クラブ会見 敷地内の富岡層風化部の分布状況[東西断面]

【石渡】
 そうするとですね。この辺の地層はこの富岡層と呼んでいる地層なんですけど、緩やかにこう海側に傾いてまして、その上に段丘の堆積物が乗っかっているんですけど、この1番てっぺんのところ、ここが非常に柔らかいということが分かりました。

(43) 記者クラブ会見 斜面対策工の検討

【石渡】
 非常に柔らかい地層があります。これ崩れやすいですよねっという話になりまして、で実はこの原子炉がこっちにあって、向こうが海なんですけど、ここに使用済みの燃料を冷却する建物があるんで、そのすぐ裏がこの崖になってます。これは人工的に作った崖なんですけど、元々段丘を削ってこの原子炉を作ったので、でこの距離が20mしかないです。
 これ崩れるとまずいですよねっていう話になって、これを30m掘り下げて50mの余裕を作るとというようなことを、やっていただいたわけで、これ今工事中です。

(44) 記者クラブ会見 改善(6)津波引き波対策の防護柵設置 JAEA東海再処理施設

【石渡】
 津波の引き波対策の話です。日本原子力研究開発機構の再処理施設ががございます。燃料を細かく裁断して、溶かした液体が多量に保管されています。
 津波が来た場合に外に流れると非常に困るわけで、ここは新規制基準には適合してないんですけれども、その液体をとにかく早く処理してガラス固化してくださいということで、操業が許可されております。
 ここに、もし今の時点で津波が来た場合、やはり非常にまずいので、柵を設けます、特に漂流物が衝突すると、建屋が壊れてしまって、まずいことになりますから、津波の漂流物、例えば車とかバスとか家とか、そういうものは流れてきても大丈夫なように、柵を作る。

(45) 記者クラブ会見 改善(6)津波引き波対策の防護柵設置 JAEA東海再処理施設

【石渡】
 この黒い線で書いてあるように、この建屋の海側とこの川がある。こっちの川側ですね。つまりこの2方向に柵を作りますという計画が、委員会の席上に出てきたんです。
 私はこれはちょっとまずいと、その場で思いまして、津波というのは海から来る波、あるいは川をのぼる津波だけが危ないんではないんです。のぼった後、その水はまた海へ返るんです。返ってくる時の津波の方が、いろんな漂流物をたくさん持ってくるので、危ないですよ、と言って、陸側にも柵を作らないとこれは意味がないですよという話をしました。この3方向に津波防止の柵を作るということで、計画を変えていただいて、そのように工事をされたものと理解しております。

(46) 記者クラブ会見 トピックス:2024年1月1日能登半島地震

【石渡】
 この能登半島の北側に、あらかじめ位置が分かっていた断層があるわけです。今年の1月1日にこれが連動して全部動くという、大きな地震、マグニチュード7.6という地震が起きたわけです。この余震域の幅が150kmという、これはとてつもない長さなわけです。

(47) 大阪公立大学講演 2024年1月1日能登半島地震の震源(黄色)と既知の活断層位置


(48) 記者クラブ会見 2024年1月1日能登半島地震による地盤 変動:4mの隆起と3mの西向き移動

【石渡】
 この時非常に驚いたのが、皆様よくご存知のように、この能登半島のこの断層に沿った地域が非常に大きく隆起した。特にこの輪島の西から門前にかけて4mぐらい隆起した。
 これは関東地震の時の三浦半島房総半島の隆起、あれが1mぐらいですから、それに比べても、非常に大きな地殻変動が起きたということであります。こういうのを、私が生きてる間に目にするとは思わなかったということです。

(49) 記者クラブ会見 2024年8月19-20日能登半島地震調査

【石渡】
 例えばこれはよくご存知の、輪島市鹿磯(かいそ)漁港、門前町のところにある漁港の岩壁が4m隆起した所です。白くなっている海岸は珠洲市の北側の海岸ですけれども、こういう風に、ここは隆起は2mぐらいですけれども、この隆起したところが、真っ白くなっております。あと断層が珠洲市の若山川沿いで出たり、これ断層からは20km近く離れているんです。けれども、こういう2mぐらいのズレを持つ断層が出現した。
 こちらは液状化、内灘町でひどい液状化が起きた。非常に大きな被害がございました。で、こういう風に日本はやはり非常に自然災害、自然ハザードですね、これが非常に起きやすいところです。

(50) 記者クラブ会見 結論

【石渡】
 これについて原子力についは、特に厳しい規制が私は必要で、それは絶えずバックフィットのような形で、絶えず改善していく必要があるという風に考えております。
 この間、17基の原発が規制基準に合格して許可されまして、ついこない女川が動き始めたので、これが13基になりますね、13基稼働しています。もうすぐ島根が動くのでこれは14機になります。でしかし他の発電所については、まだ審査中のものはたくさんあります。それで1基については規制基準に、適合性適合していないという結論になった、ということであります。ご清聴ありがとうございました。以上です。どうもありがとうございます。

(51) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答1
●質問
 今日核のゴミの問題については、直接は触らられなかったんですけれども、ちょっとその件についてお伺いしたいんですが、この地震大国、火山大国の日本で、10万年間安全な地層処分できる適地ってのは本当にあるんでしょうか。
 関連して、もしやはり不安があるということであれば、代替案というのが、あるんでしょうか。

●回答
 私は6月にフィンランドへ出張に行きまして、いわゆるオンカロという処分場、最終処分場を見せていただきました。ご承知のようにフィンランドというところは非常に地殻が古い時代の土地で、安定した、いわゆるバルト盾状地と呼ばれる、非常に安定した地盤であると、それはその通りなんですけれども。
 では断層とかそういうものは一切ないかというと、それは違う。あそこはやはり元々が日本と同じような造山帯であります。18億年前までは造山帯だったところです。ですから、そういう意味で日本と同じように破砕帯を伴う断層が何本もございます。
 坑道を掘る場合はそれらを避けて、それらが比較的影響が少ないと思われるところを掘って作っている。というのを実際行ってみてよく分かりました。
 ですから、私は、フィンランドでああいうことができるのであれば、日本でも不可能ではないという風に考えております。

(52) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答2
●質問
 例えば、次にマグニチュード9クラスの地震が起こった場合に、現在の審査適合した原発については、ほぼ心配がないと言えるのかどうか。
 もう1点は、先ほど津波・地震・火山のリスクのお話をされてましたけど、今後例えば100年とか200年という間に、原発のリスクでこの3つのうち、最も起こる可能性が高いもの。そしてもう1つは、最も甚大な被害を起こしそうなケースを教えていただければと思います。

●回答
 例えばマグニチュード9クラスの地震が起きる場所というのは地球上では比較的限られておりますね。つまりその大きなプレートの沈み込み帯、こういうところでしか、マグニチュード9クラスの地震は今まで起きておりません。
 マグニチュードが大きければ危ないかっていうと、決してそういうことではなくて、小さい地震でも近くで起きるとこれは被害がものすごい大きくなりますから、そういう場合はこれ非常に不確定になりますね。
 何が1番危ないか、これは全部危ないですよね。
 日本の火山というのは、そういう意味で、いわゆる第四紀火山っていうのを、原子力では全部調査してください、ということになっておりまして、活火山に限らず、そういう意味で、地震と津波と火山というのは今の規制では、どれも非常に影響が大きいということで、同じような比重で審査をしております。

(53) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答3
●質問
 能登半島地震の時のように、原発の敷地が仮に隆起した場合、原子炉や重要な施設は隆起による影響で、損傷の心配はないのでしょうか、規制に生かすべき知見等はないのでしょうか、という質問です。
 2つ目は先ほどの噴火の関連ですけれども、巨大噴火は観測の経験もなく科学的に分からないことが非常に多いと思います。現在事業者の方からモニタリングや規制委での報告にどのような意味があるというお考えでしょうかという質問です。

●回答
 隆起そのものは、非常にゆっくり起きるわけです。いきなりぴょんと飛び上がるわけではなくて、比較的ゆっくり上がるもんだと思います。従って土地全体が隆起するわけですから、ある場所だけが上がるわけではないので、特にそれで何かものが壊れるとか、そういうことはないと思います。
 巨大噴火、これについては確かにその人類というのは地球上で巨大噴火を経験していません。今やっているモニタリングというのは、これは許可した時の状況から変わっていません、ということを確かめるためのモニタリングです。
 もしそれが変わっている場合は、これはそれについて、すぐに我々はその評価をしなきゃいけなくなります。大きく変わった場合は原子炉を止める、もし本当に巨大噴火に繋がりそうな兆候があれば、核燃料をよそへ搬出するというような方針も決められております。

(54) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答4
●質問
 能登半島地震の地震によって、その原発の審査にどういう影響があるのか。
 もう1つ、志賀原発なんですが、で改めて審査した結果、活動性はないという結論が出たと思うんですけれども、電力会社側のその対応状況について、先生の方でどう思われてるのか教えていただきたいです。

●回答
 原子力規制にこれからどういう風に取り入れるべきかというのは、これは今一生懸命研究者が研究してるところですので、中々予断を持っては言えませんが、はっきりしていることは、当然地震動として志賀原発なり、他の原発にも取り入れなきゃいけません。
 当然今回の地震のその断層モデルというものをしっかりと決めていただく必要がある。これを元にして地震動を計算しますので、これについては色々アイデアは出ていますが、まだ確定的ではないように思います。まだ解析の途上なんではないかなと思っています。
 上載地層法と鉱物脈法があるとで、最初の結論は北陸電力は上載地層法でしかやってなかった。それを鉱物法のデータをたくさん出された。これが決定的で、全然動いてないですよね、ということがはっきりしたわけです。それで我々はこれは活動性がないという結論にしました。

(55) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答5
●質問
 日本原燃の敦賀原発に関して、正式に不合格というものが決定されました。率直にどのようにお感じになったのかというのを聞かせいただきたいのと。
 敦賀原発の審査に関しては、非常に長い時間かけて審査が続いてきたと思うんですけども、振り返って、まあどういうところに問題点があったのか。

●回答
 長い間時間がかかったと言っても、審査が止まっていた時間が結構長かったです。決して9年間ずっと審査をしてたわけではなくて、審査が止まっていた時間が結構長かったということはございます。
 けれども、我々としてはやはり焦点を絞ってK断層というものの活動性というものが1番大事だから、とりあえずこの1点に絞ってやりましょうということで、これ事業者側にもご了解をいただた。
 その間、2回現地調査をやりました。審査会合は確か6回だったかな、やりました。十分な時間をかけてやったというふうに考えております。
 敦賀の場合は、非常に心配なのは浦底断層、これは日本原子力発電も認めている活断層、原子炉がそこから200mちょっとぐらいの距離にあるということです。K断層というのは派生しているかどうかは分かりませんが、浦底断層とこう斜めに交わるような形で伸びている断層です。でそれの活動性が残念ながら否定ができないという状況なわけです。

(56) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答6
●質問
 結局敦賀2号の根本的な、安全問題というのは浦底断層に気づいた後に、それに手当てしてこなかったということだと思うんですね、なぜ浦底断層というところに焦点を当てきれなかったか。
 もう1つ、後任の委員について、先生、ご意見を述べられたか。

●回答
 人事に関することにはお答えはできません。
 それで例えば、バックフィットで400m以内はダメですというようなことを、今の時点の科学的な知識でもって、そういう規則を作ることができるか、これはできないです。何メートル離れれば、オッケーだというような、そういういう決まりを、今の時点で作ることは不可能です。50年代の頃の知識だったら、それはできたんだと思うんです。
 これ非常に難しい問題で、そういう意味で今の規則というのは、直下にしていてはいけないという、そういう決まりになっているんだと思います。

(57) 記者クラブ会見 石渡明 会見 質疑応答7
●質問
 原発の60年延長問題を反対なさった理由を教えてください。

●回答
 私がそもそもこの職に着いた時に炉規法とか基本的な法律、原子力基本法もそうですけど、これは全部読みました。読んだ上で、いわゆるその40年ルールというのが明確に書いてあった。1度だけその延長ができると、でそれは結局だから60年ですよね。
 年間を切ったルールが法律には書いてあって、私はこれを守るということで、就任しましたので、これを何かの理由によって、しかも外部のからの働きかけによって、勝手に変えるということは、私は科学的にそれでもいいですよという理由がない限りは、これはできないということで、私は反対しました。
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