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●初めに
 2024年1月1日に石川県能登地方でマグニチュード7.6、震度7の大地震が発生しました。
 それ以降、当会(地震がよくわかる会)では関連記事を採集し、現在(2025年1月24日)で総数688件となりました。今回、地震後ほぼ1年たったという節目ということで、KEYWORD(総数:83件)毎の記事一覧を コチラ に作成しました。
 以下はその記事一覧から志賀原発の変圧器問題を中心にまとめた(記事総数:56件)ものです。時系列昇順ですので、順次読みことで、能登半島地震(2024/01/01)で、変圧器の問題が如何に深刻であったが、分かるかと思います。
 当記事一覧が皆さんの能登半島地震と志賀原発問題の考察の一助となれば幸いです。

※【 表示例 】
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●変圧器の耐震性向上が必要 <==KEYWORD名
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(1) 共同 2024/1/1 志賀原発の変圧器で火災発生、消火済み
   <==通し番号、新聞名、日付、タイトル
       タイトル部をクリックすると元記事が表示される
 
 林官房長官は、石川県志賀町の北陸電力志賀原発で、変圧器で 火災 が発生したと明らかにした。消火済みで、プラントに影響はないと説明した。
   <==元記事の抜粋及び画像
       赤色下線は編集側(地震がよくわかる会)で加えたものです。
       リンク下線(通常は青色)をクリックすると、当該用語の解説箇所へ移動します。
 

○全体の構成
 
 [1]変圧器問題の用語 Q&A
 
 [2]記事一覧[総数:57件]
 

 
●記事一覧
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●能登2024-変圧器の耐震性向上が必要_
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(1) 共同 2024/1/1 志賀原発の変圧器で火災発生、消火済み
 [2024/01/01 19:59 発表]
 林官房長官は、石川県志賀町の北陸電力志賀原発で、 変圧器火災 が発生したと明らかにした。消火済みで、プラントに影響はないと説明した。

(2) 北陸電力 2024/1/1 石川県能登地方で発生した地震による志賀原子力発電所の影響について
 [2024/01/01 20:04 発表]
 本日16時10分、石川県能登地方で震度7(マグニチュード7.6、 震源深さ極浅い)の地震が発生し、志賀町において震度7(1号機原子炉建屋地下2階震度5強、399.3ガル)が観測されました。
 1号機 起動変圧器 からの油漏れがあることを確認したことから、19時23分に代替の 予備電源変圧器 への切り替え操作を実施しました。
 2号機 主変圧器放圧板 の動作及び噴霧消火設備の起動を確認しました。またこれにより、自動的に予備電源変圧器へ切り替えられております。

(3) NHK 2024/1/1 志賀原発 電気受ける1系統使えず 使用済み燃料冷却問題なし
 [2024/01/01 20:08 発表]
 国の緊急時対応センターによりますと、石川県志賀町にある北陸電力の志賀原発では、地震が起きた際、外部から電気を受けるための 変圧器 付近で、「爆発したような音と焦げ臭いにおいがあった」という情報があり、発電所員が確認したところ午後5時半時点では火は確認されなかったということです。

(4) まさのあつこ 2024/1/1 原子力規制庁の広報官が記者ブリーフ
 [2024/01/01 20:09 発表]
・一時、変圧器付近で、爆発したような音と焦げ臭い匂いがあったという情報が入っている。その後、発電所職員が現場状況を確認。17:30時点には火が出ていないことを確認。消防署に連絡
・1号機 起動変圧器 付近で油漏れを確認。機能への影響は確認できていない。

(5) NHK 2024/1/1 志賀原発 “外部電源一部使えずも 冷却は継続” 規制庁
 [2024/01/01 22:40 発表]
 北陸電力によりますと、 火災 ではなく、地震の揺れで変圧器内部の圧力が高まり、圧力を抜くための装置が作動して大きな音がしたほか、消火設備が起動したとみられるということです。

(6) NHK 2024/1/2 志賀原発 外部電源一部使えず 安全上重要な機器の電源は確保
 [2024/01/02 19:16 発表]
 このうち、1号機の変圧器を撮影した写真には、絶縁や冷却に使われた油の熱を放出する「 放熱器 」と呼ばれる設備から、大量の油が漏れて地面に流れ落ちている様子が写されています。
 しかし、志賀原発では1日の地震の影響で、27万5000ボルトの送電線から1号機に電気を送るための変圧器と、50万ボルト送電線から2号機に電気を送るための変圧器それぞれ1台が使えなくなっています。
 いずれも配管が壊れて絶縁や冷却のための油が漏れ出したことが原因で、それぞれ1号機は6万6000ボルトの送電線から電気を受けているほか、2号機は27万5000ボルトの送電線から電気を受けているということです。


(7) 北陸電力 2024/1/3 地震による志賀原子力発電所の影響について(第4報)
(1)2号機 励磁電源変圧器※の油漏れ(添付資料1、添付資料2)
 当該変圧器の現場確認を行い、変圧器の 絶縁油約100リットル(推定)漏れていることを確認しました。
 ※発電に必要な磁束を発生させる発電機のコイル(励磁装置)に電源を供給するための変圧器

(8) 北陸電力 2024/1/5 2024年能登半島地震による志賀原発の影響について(第5報)
 なお、1月2日にお知らせした2号機主変圧器からの 絶縁油 漏えいについては、本日、漏えいした絶縁油約19,800リットル(水分も含め約24,600リットル)の回収が完了しました。漏えい量が想定(約3,500リットル)より増えた要因は、当初、漏えい箇所より高い位置にある コンサベータ (油劣化防止装置)内の保有量のみの漏えいを想定していましたが、変圧器本体等の一部も漏えい箇所より高い位置にあり、この範囲にある絶縁油も合わせて漏えいしたことによるものです。(添付資料1)


(1)1号機所内変圧器及び1号機主変圧器の放圧板の動作(添付資料2、添付資料3、添付資料4)
 地震発生時に1号機所内変圧器及び1号機主変圧器の 放圧板 が動作していたことを確認しました。これは、地震により変圧器内部の油が揺れることで、内圧が一時的に上昇し、放圧板が正常に動作したものです。この事象に伴う油漏れはありませんでした。


(9) 毎日 2024/1/5 変圧器からの油漏れ、当初の5倍超
 北陸電力は5日、能登半島地震の影響で破損した、志賀原発2号機(石川県、停止中)の変圧器からの油漏れが、約1万9800リットルに上ったと明らかにした。約3500リットルが漏えいしたと2日に発表していたが、実際はその5倍超だった。

(10) たんぽぽ 2024/1/6 志賀原発電源トラブルの考察_山崎久隆
 起動変圧器の絶縁油が漏れる現象は、2007年の中越沖地震において 柏崎刈羽原発3号機で発生 したのと全く同じです。


 当時、柏崎刈羽原発3号機は稼働していました。(2,3,4号機が稼働)
 地震発生と同時に原子炉はスクラムしたので、発電もそこで止まりましたが、発電機は直ぐには止まりません。惰性で回り続けるときに「 コーストダウン 電流」が発生します。柏崎刈羽原発3号機でも、そうした電流が流れていました。
 さらに、地震により地盤が変状したため、 起動変圧器 の位置が原子炉建屋とずれてしまい、間をつなぐ回路が破損したため、 アーク放電火災 が発生しました。
 その火花は難燃性の 絶縁油でも発火 させ、起動変圧器が炎上しました。
 まとめると、次の三つの条件で火災は起きました。

 1.起動変圧器と変圧器接続 母線 部が上下にずれたこと。
 2.起動変圧器二次側から絶縁油が漏れ出したこと。
 3.起動変圧器二次側の母線接続ダクト内で回路の短絡によりアーク放電が発生したこと。

 もし原発が再稼働して発電していたならば、大電流が流れていて、アーク放電火災が起きた可能性は否定できません。その場合、かなりの確率で火災に至ったと考えられます。
 起動変圧器の絶縁油が漏れた際に、電源ケーブルが損傷し、アーク放電が発生、それにより絶縁油が発火して火災事故になる。原発火災の典型的なストーリーですが、有効な対策はないと思います。女川原発でも311の震災時にアーク放電火災により1号機タービン建屋内の変圧器(※)10台が全焼しています。この時は1台の変圧器火災が可燃性ケーブルを伝って他の変圧器にも延焼しました。
※編集者注:変圧器ではなく電源盤もしくは電気盤だと思われる。詳細は コチラ を参考にしてください。

 志賀原発の基礎マット上の加速度は399.3ガルです。柏崎刈羽原発3号機の基礎マット上で観測された地震動は南北308、東西384、上下311ガルですから、ほぼ同等程度と考えて差し支えないでしょう。
 今回、志賀原発は二基とも稼働していませんので、変圧器にも大電流が流れていなかったのが幸いしました。絶縁油も高温になっておらず仮に漏電していても発火は免れたのではないかと考えます。

 つまり、稼働中だったらかなりの確率で電源部が発火し、油が燃え上がる火災事故に発展したのではないでしょうか。
 この変圧器は何処にあるのでしょうか、原子炉、タービンなどの建屋内にあるのでしたら、さらに危険です。柏崎刈羽原発は屋外にありましたから、この火災は建屋内部に広がることはありませんでした。
 非常用ディーゼル発電機は構内変圧器に直結していますので、外部電源が喪失しても影響はありませんが、変圧器自体が壊れれば全電源喪失します。福島第一原発事故では津波によりそうなりました。

(11) TBS 2024/1/7 志賀原発前の海面上に油膜 外部への放射能影響なし 北陸電力
 北陸電力は7日、オンラインで会見を開き、志賀原発について詳細な点検を進める中で、原発前の海面にわずかに油膜が浮いていることを確認したと発表しました。
 このほか、2号機の変圧器の周りの側溝や道路にも油膜を確認したということです。北陸電力によりますと、志賀原発では1日の地震発生時に変圧器の配管が壊れ、絶縁や冷却のための油が漏れ出していましたが、その際に消火設備が作動し油が飛散し、さらに、その後の雨で周辺に流れ出した可能性が高いとしています。
 漏れ出た油は放射線管理区域内のものではなく、外部への放射能の影響はないとしています。また、油膜は中和剤などにより、すでに処理を行ったということです。


(12) NHK 2024/1/7 志賀原発 付近の海面に少量の油流出も放射性物質は含まれず
 北陸電力は、油のほとんどを回収したとしていましたが、7日に改めて確認したところ、2号機の変圧器近くの側溝で、微量の油膜を確認したほか、この側溝からつながる排水溝の出口付近の海面で、縦5メートル、横10メートルほどの範囲に油膜が見つかったということです。
 この範囲の油の量は100ミリリットル程度だということで、北陸電力は、中和剤をまいたり、オイルフェンスを設置したりして油の回収を進めています。
 志賀原発では変圧器のトラブルで、現在も外部から電気を受ける系統の一部が使えなくなっていますが、北陸電力は、ほかの系統で電気を受けていることなどから、使用済み燃料プールの冷却など、安全上重要な機器の電源は確保されているとしています。

(13) おしどりマコ 2024/1/7 第6報_2号機主変圧器周辺の側溝および道路において油膜を確認
(14) 毎日 2024/1/7 志賀原発2号機 海に油流出 北陸電力「人体に影響ない」
(15) 北陸電力 2024/1/10 令和6年能登半島地震による志賀原子力発電所の影響について(第7報)
 (1)1・2号機変圧器関連
 ●1号機 起動変圧器 からの油漏れ及び 放圧板 の動作,噴霧消火設備の起動
  ・当該変圧器の現場確認を行い、変圧器の絶縁油が約3,600リットル(推定)漏れていたことを確認しましたが、絶縁油は堰内に収まっており、外部への影響はありません。
  ・なお、地震発生時に1号機起動変圧器の放圧板の動作及び噴霧消火設備を手動起動したことが確認されました。放圧板が動作した原因等は調査中です。また、火災の発生は確認されておりません。

(16) NHK 2024/1/10 志賀原発のトラブル 規制委“地震対策見直し必要か検討を”
 これについて、10日、開かれた原子力規制委員会の会合では委員から、「生き残った変圧器が今後の余震で壊れる可能性についても考慮する必要がある。復旧を急ぐとともに、原因究明をしっかり進めてほしい」とか、「発電所内の不具合で受電できなくなることはおそらく想定していなかった。今回の対応で十分と考えるのか、対応を強化した方がいいのか、検討する必要がある」といった意見が出されました。


(17) 時事 2024/1/10 北陸電に正確な情報発信指示 志賀原発で発表訂正相次ぎ―経産省
 経済産業省は10日までに、能登半島地震で被災した北陸電力志賀原発(石川県志賀町)を巡り、発表の訂正が相次いだことを受け、同社に対し正確な情報発信を行うよう指示した。
 北陸電は5日、志賀原発2号機の変圧器から漏れた絶縁油の量について、当初発表した約3500リットルを約1万9800リットルに訂正。このほか、原発敷地内にある取水槽の水位の数値なども訂正した。

(18) 静岡 2024/1/11 相次いだ「想定外」 再稼働審査は長期化
 全電源を失った東京電力福島第1原発事故を教訓に、電力会社は電源の多様化を進めており、送電鉄塔の倒壊などで外部電源が途絶えても原子炉の冷却は維持できる。だが、施設内の変圧器が先に壊れる事態は想定外だった。

(19) 毎日 2024/1/12 能登半島の志賀原発、審査長期化必至 トラブル続発、情報も二転三転
 「発電所内の設備はもっと強くあってもいいのではないか」。10日にあった原子力規制委員会の定例会で、設備の審査を担当する杉山智之委員はこう指摘した。
 規制委が疑問視したのは、比較的揺れが小さかった発電所内でトラブルが起きたことだ。
 1日の地震で、志賀町では震度7を観測したものの、志賀原発の敷地では震度5強だった。しかしこの揺れで、外部電源から電力を受ける変圧器が1、2号機とも破損。約2万3400リットルもの油が漏れた。外部電源の一部が途絶えたままで、全面復旧には半年超かかる見通しだ。
 原発の新規制基準では、変圧器に要求される耐震性能は、3段階あるクラスで最も低い。だが事態を重く見た規制委は、北陸電に原因究明を求めると決めた。

(20) 毎日 2024/1/13 志賀原発 トラブル続出 変圧器破損・油大量漏出・一部電源途絶
(21) NHK 2024/1/15 能登半島地震 志賀原発 変圧器から油漏れ 水野倫之 解説委員
 原子力規制委員会は関連施設も含め設備でおもに2つの被害を注視。  まずは変圧器。福島の事故を受け外部電源は鉄塔が倒壊するなどして失われることも想定し、新基準で多重化が義務付けられている。ただ変圧器のような原発内部の設備の破損で失うことは想定していないということで、変圧器の耐震性、通常の産業機器並みだった。
 非常用発電機もあるが安全確保には外部電源が多い方が有利なので今後変圧器の耐震性をどうするかが焦点の一つ。


(22) 北陸電力 2024/1/17 能登半島地震発生後の志賀原子力発電所 志賀原子力発電所の現況
 2号機 主変圧器(1月1日の地震による油漏れを受け、停止中)
 1月1日の地震により、2号機主変圧器の保護回路が動作し、自動的に 予備電源変圧器 に切り替わりました。
 2号機 予備電源変圧器(現在稼働中)
 1月1日の地震により、 主変圧器 の保護回路が動作し、自動的に予備電源変圧器に切り替わりました。
 現在、予備電源変圧器より受電しており、原子炉施設の安全確保に問題はありません。

 1号機 起動変圧器 (1月1日の地震による油漏れを受け、停止中)
 1月1日の地震により、1号機起動変圧器からの油漏れがあることを確認したことから、同日、代替の予備電源変圧器への切替操作を実施しました。

(23) まさのあつこ 2024/1/17 志賀原発で何が起きていたか? (3)変圧器が壊れる意味
 そもそも「 コンサベータ 」と「変圧器」本体はなぜ油で満たされているのか。役割を聞いてみると、次のような理由だ。
 「変圧器は熱を持つ機械なので、中の熱を取るために油で満たされている。変圧器の油は 熱を受けると劣化 するので、コンサベータは熱の影響を受けない、少し離れた上部(以下の青い部分)に油をプールしておいて劣化を防ぐ役割を担う」(規制庁の山口事故対策室長)


 北陸電力も1月12日になって「2号機 主変圧器 (1月1日の地震による油漏れを受け、停止中)」と写真で公開している。
 規制庁の広報室に聞くと、この変圧器の下には13.2m×5.2m×深さ5.4mの「堰」が掘られていて、油が漏れることは想定された上で砂利で満たされているという。ドラム缶123個分の油はそこに入ったというが、どう回収したのかは分からないという。不思議な装置である。


 ○記者 変圧器が動かないと、外部電源が取れないんだということも今回のことで再認識したんですけれども、この耐震性を高めるということもやはり変圧器に関しては見直して、全ての原発に対してバックフィットをするべきだと思いますがいかがでしょうか。
 ○山中委員長 これは外部電源に基本的に期待をしないというのが、我々の新しい規制基準の考え方でございます。外部電源が全て失われた上でも、止める、冷やす、閉じ込めるということが機能として発揮できるように、電源の多重性、あるいは多様性の確保ということに新規規制基準では求めておりますので。特に、変圧器だけ耐震性を上げましても、外部電源がきっちりと確保できるという保証はございませんので、そこだけを強化するというのは今のところ考えておりません。

(24) 京都 2024/1/19 社説:能登地震と原発 日本海側の施設点検を
 東京電力福島第1原発事故を踏まえた原発の新規制基準は、原発内に非常用電源などを整備するよう求めているが、志賀原発では原発内部の変圧器が破損した。「想定外」では済まされない。規制委は今回の地震で得た新知見を他の原発にも適用することを示唆している。厳格に運用してほしい。
 北陸電は地震直後、変圧器の破損や冷却プールの水があふれたことを明らかにせず、その後の発表でも訂正を重ねた。
 同社は1999年に臨界事故を起こし、その後8年間も伏せていた。情報隠ぺい体質が今も続いていると疑わざるを得ない。

(25) ニッポン 2024/1/20 「想定内で、福島第一原発事故のような事象は起きようがない」石川和男が指摘
 変圧器の破損トラブルについても「想定されていた事象。そのため、変圧器の下に砂利などを敷いて漏れた油を吸収するようにしてあり、万が一火災が起きても耐火壁で延焼を防ぐようになっている。安全上はまったく問題ない」

(26) NHK 2024/1/22 志賀原発 完全な復旧には半年以上かかる見通し
 北陸電力は、余震による新たなトラブルに警戒を続けるとともに、復旧や点検を進めていますが、すべての外部電源が使えるようになるなど完全な復旧には半年以上かかる見通しです。
 志賀原発は、▽50万ボルトの2回線、▽27万5000ボルトの2回線、▽6万6000ボルトの1回線、あわせて3系統5回線の送電線で電気を受けられるようになっています。
 これらの送電線から電気を受けるには、変圧器を通して高い電圧を発電所内で使える電圧に下げる必要がありますが、今月1日の地震で50万ボルト送電線から電気を受けるための変圧器が壊れ、現在も使えなくなっています。

[1号機変圧器]

(27) NHK 2024/1/22 志賀原発 相次ぐトラブル 地震で何が起きていたのか?
(28) 国民民主 2024/1/24 【参予算委】竹詰ひとし議員が能登半島地震への対応について質疑
(29) NHK 2024/1/24 参院予算委 能登半島地震への対応など集中審議
 ▽国民民主党の竹詰仁氏は北陸電力志賀原子力発電所について「地震が発生した1日に林官房長官は記者会見で変圧器の火災が発生し、消火済みと発信したが、北陸電力は翌日、火災は発生していないと訂正した。誤情報と判明したのならば、速やかに訂正の発信をすべきではなかったか」と指摘しました。
 これに対し岸田総理大臣は「会見の時点では変圧器周辺で火災があり消火設備が作動したと原子力規制庁に速報があり、その旨を発言したが、その後に現場を確認した北陸電力が情報を訂正した。指摘のとおり火災は発生していないことを確認しており安全確保に影響のある問題は生じていない」と述べました。

(30) 中日新聞 2024/1/30 もし志賀原発が稼働中だったら… 元京都大助教・小出裕章さんの警告
−今回、変圧器が破損した。北陸電力の耐震設計は甘かったのか。
[小出]もちろん甘かったと指摘できる。運転中の原発で変圧器がだめでした、ということになれば、それこそ事故に直結してしまう。

(31) 中日スポ 2024/1/30 『志賀原発で火災』主張の鳩山由紀夫元首相、あらためて火災発生に執着
 能登半島地震に絡み、X(旧ツイッター)に「志賀原発で火災が起きた」と根拠不明情報を投稿して批判を浴びた鳩山由紀夫元首相が30日、あらためてXで火災発生を疑う持論を展開した。
 鳩山元首相は「良き友を持って幸せだ。川内博史君(注:立憲民主党の元衆院議員)が志賀原発に赴き、北陸電力の幹部社員に『今回の地震で火災が起きなかったと断言できるか?』と尋ねたところ、その幹部社員は『断言できない』と答えた」と投稿。「何もなかったと平静を装うのではなく、私はむしろその幹部社員の誠実な応対に感動した」との気持ちを表明した。

(32) NHK 2024/1/30 “変圧器の復旧時期 見通し立たない状況” 北陸電力
 石川県志賀町にある志賀原発では、外部から電気を受けるために使われる変圧器の配管が壊れて、絶縁や冷却のための油が漏れ出し、3系統5回線ある送電線のうち、1系統2回線が現在も使えなくなっています
 北陸電力は30日調査状況などを説明し、それによりますと、変圧器本体と、油の熱を放出する 「放熱器」 と呼ばれる設備をつなぐ太さ50センチほどの配管の接続部で、20センチほどにわたって亀裂が見つかったということです。
 また、変圧器内のガスを分析したところ、内部が故障している兆候が見られたということです。
 来月中旬に内部の点検を行ったうえで、復旧方法について検討することにしていて、復旧の時期については、現在のところ見通しが立たない状況だということです。

(33) note 2024/1/31 志賀原発の変圧器の絶縁油は真っ黒
(34) note 2024/2/3 志賀原発の変圧器の絶縁油について_船橋市_弓場清孝
(35) 読売 2024/2/4 変圧器 最も強い揺れに耐える「クラスC」でも壊れる
 変圧器は 耐震クラスC の製品で、現状入手できるうち最も強い揺れに耐える仕様だという。それが壊れたことは、原発が受けた揺れの大きさを示す。
 原子炉は1000ガル程度に耐えれば十分との立場で原子力規制委員会の安全審査に臨んでいる。しかし、北陸電によると、耐震クラスCの変圧器は500ガルまで耐えられる仕様で、変圧器のトラブルは北陸電の主張や立場を揺るがしかねない。
 原子炉は、立地場所での「最大の揺れ」に対して安全が維持されなければならない。原子力規制委による今後の審査でも、最大の揺れが焦点となる。


(36) 北陸電力 2024/2/5 読売社に対する当社の抗議内容について
(1)志賀原子力発電所の地震動と志賀町富来地区の地震動の違いについて
 ・同じ志賀町ではありますが、今回の地震で観測した地震動は、志賀原子力発電所で399ガル、志賀町富来地区の地震観測計で2,828ガルでした。

(2)「志賀原発の変圧器、最も強い揺れに耐える「 クラスC 」でも壊れる」との見出し・「変圧器のトラブルは北陸電の主張や立場を揺るがしかねない」との記載について
 ・当社が申請している地震動が1,000ガルであるのに対し、変圧器は500ガルまでしか耐えられないということで、あたかも当社が耐震基準を満たしていない変圧器を設置しているかのような内容ですが、当社が申請している地震動と変圧器に求められる耐震性は全く別物です。
 ・原子力発電所は耐震設計審査指針に基づき、各設備の重要度に応じて耐震クラスが設定されています。
 ・今回損傷した変圧器は一般産業品と同等の耐震設計(耐震Cクラス)が要求されており、当然ながら、その要求を満たした変圧器を設置しています。
  その耐震性として500ガル程度の揺れまで耐えられるというものです。

(37) 東京 2024/2/7 <社説>地震国の原発 安全な場所はあるのか
(38) まさのあつこ 2024/2/8 志賀原発で何が起きていたか? (4)変圧器が壊れた後のできごと
 1月2日に各紙が、志賀原発の変圧器から「油が漏れた現場」写真(北陸電力提供)を報じたが、どこを映したものなのかが疑問だった。
 それは、志賀原発1号機の「変圧器」を構成する部品のひとつ「 放熱器 」の1個半の分の下部(以下、黄色枠)を拡大して写したものだった。


 「損傷」とは「亀裂」

 リリースには「損傷」としてあるが、「1号機変圧器の損傷とはどういったものか? 揺れによる破断か? 歪みか? ズレか?」など色々聞いて、やっと変圧器本体と放熱器の接続部に「揺れによって亀裂が入って、そこから油が出た」とわかった。50センチの円周で、20センチの亀裂だそうだ。
 ちなみに、1月30日の会見は、あくまで15日までの外部点検の結果で、原子炉をはじめとする内部の調査はまだまだこれから

 399ガルで壊れた耐震500ガルのはずの変圧器

 この件では、さらに具体的なことがある事件が起きて判明した。
 1月31日の北陸電力の決算会見をもとに報じた読売新聞が、北陸電力の抗議「読売新聞社に対する当社の抗議内容について(2月5日掲載)」を受け、元の「志賀原発の変圧器、最も強い揺れに耐える「 クラスC 」でも壊れる…修理見通し立たず」との見出しを「志賀原発、変圧器故障など複数トラブル…北陸電「新しい知見に基づき安全対策講じる」に変えた。
 この抗議を読むと、「今回の地震で観測した地震動は、志賀原子力発電所で399ガル」。一方で、「今回損傷した変圧器は一般産業品と同等の耐震設計(耐震Cクラス)が要求されており、当然ながら、その要求を満たした変圧器を設置しています。その耐震性として500ガル程度の揺れまで耐えられる」と書いてあったのだ

 変圧器がポンコツ?399ガルが間違い?

 つまり志賀原発の変圧器は、500ガル程度までの耐震設計を要求されていたのに、399ガルで壊れてしまった。変圧器がポンコツだったのか、そもそも耐震性はあてにならないのか? 老朽化していたのか? それとも、399ガルという観測値が間違っていたのか? そのどれかか全てか? そういう新たな疑問が浮かんでくる。

 ドラム缶123個分の油は二重底から回収

 規制庁の広報室に聞くと、この変圧器の下には13.2m×5.2m×深さ5.4mの「堰」が掘られていて、油が漏れることは想定された上で砂利で満たされているという。ドラム缶123個分の油はそこに入ったというが、どう回収したのかは分からないという。不思議な装置である。その後、さらに聞くと、変圧器の下にある「堰」は2重になっていて、油は砂利を通って外側の堰に落ちるので、ポンプでくみ出して回収できるのだという。

(39) たんぽぽ 2024/2/10 変圧器のオイル漏れ_山崎久隆
 最大の問題は、変圧器のオイルもれですね。この写真は変圧器の真下の部分です。これは全部オイルです。油だからすぐ燃えるかというと、さすがに難燃性の油を使ってますから、簡単には着火しないんですけど、それでも 230℃くらいで燃える そうです。この変圧器は当然原発としては動いていませんので、大量の電力が流れているわけではないので、通常の先ほど見ていたようなポンプ類や、あの建屋の中で使っている照明類とか、そういった少量の電力しか流れていません。

 冷たい状態のままだったと思いますけれど、しかし、そこで漏れているこの 絶縁油 というのは運転中ならば高温になります。もし大きな揺れに襲われて、スパークすなわち アーク放電 のような、高い温度になる放電火災が発生したら、着火します。

(40) たんぽぽ 2024/2/10 2号機_主変圧器_1月1日の地震による油漏れ_停止中_山崎久隆
 これは1号機と2号機の変圧器ですが。最大で1万9800リットル、漏れた時に消火剤も起動していたので、消火剤も含めて2万4600リットルが漏洩をしている。そういう状況になりました。


(41) たんぽぽ 2024/2/10 変圧器のオイル漏れ_2号機_主変圧器油漏れ概要図_山崎久隆
 漏洩した場所は、 放圧板 のところより漏れたり、あるいは配管のところで、破損して漏れたり、ということですから、やっぱり柏崎刈羽3号機と同じようなところで、破損が起きているんですね。


(42) たんぽぽ 2024/2/10 1号機_起動変圧器_1月1日の地震による油漏れ_停止中_山崎久隆
 これは1号機ですね、1号機もこういったところ( 放熱器 上部)で破損が発生している。放熱器上部、 絶縁油 の漏洩箇所ということで、下に砂利をしいてありますけど、ここに今漏れ落ちたということですね、絶縁油3,500リットル、消火剤の噴霧水を含めれば、4,200リットル漏洩している。
 放圧板というものがありますが、漏れたのではなくて、ここが開いて、出てしまった。すなわち、爆発する危険性がありますので、圧力を抜くためにある。別に圧力が上がってもいないのに、開いてしまい、砂利の中に入っていた、変圧器の中の絶縁油がここに漏れ出したということです。


(43) 日経 2024/2/16 電事連 能登半島地震 原発への影響検証 チーム設置
 能登半島地震では北陸電力が志賀原発の被災情報を複数回にわたって訂正するなど、情報発信で混乱がみられた。電事連の検証チームでは情報発信の方法についても議論する。

(44) note 2024/3/6 三菱電機の変圧器でのデータ改ざん問題_船橋市・弓場清
(45) 東京 2024/3/7 損傷した変圧器は撤去済みだった 志賀原発を初めて公開
 北陸電力は7日、能登半島地震で設備の故障が起きた志賀原発(石川県志賀町)の敷地内を、地震後初めて報道陣に公開した。激しい揺れで変圧器の配管が壊れて油漏れを起こし、外部電源の一部から電気を受けられない状況が続いている。完全復旧の見通しは立っていない。
 この日公開されたのは、油漏れを起こした1、2号機の変圧器や、揺れで水が飛散した2号機の使用済み核燃料プール、地震後の試運転で止まった非常用ディーゼル発電機など。変圧器の損傷部分はいずれも撤去され、油漏れの状況は分からなくなっていた。1号機原子炉建屋脇の地面に数センチの段差が生じていた。

(46) 東京 2024/3/17 「脱原発」から1年、廃炉が粛々と進むドイツ 共通の課題はどうなっている?
(47) まさのあつこ 2024/3/23 志賀原発 壊れた変圧器は、データ改ざんのあった三菱電機製だった
 石垣のりこ議員による参議院予算委員会(3月4日)での質疑で、まずは壊れた変圧器が、試験性能データに改ざんがあったものだったことが明らかにされた。概要は以下の通り。

  石垣議員:2022年4月に 三菱電機製の変圧器の試験性能データ改ざん があった。どのような事案だったか?
  齋藤健経産大臣:ユーザーに約束した条件が守られていなかった。規制上の問題はない。三菱電機からの報告によると不適切な検査が行われた変圧器は、大手電力10社およびJERA、電源開発で行う発電・送配電事業、火力発電所19ヶ所で計40台、水力発電所10ヶ所で15台、地熱発電所1ヶ所で1台、変電所99ヶ所で192台、それ以外は601ヶ所の施設で907台が使用された。
  石垣議員:原子力発電所は?
  山中委員長:原子力発電所の変圧器のうち35台
  石垣議員:経産省では把握していないのか。なぜ答えなかった?
  齋藤大臣:原子力発電所は原子力規制委員会が所管しているから。
  石垣議員:問題がある変圧器がどこで使われているかは、推進側として把握する責任がある。
  石垣議員:能登半島地震で志賀原発では変圧器が壊れた。使われていた変圧器は、不適切記載のあった三菱電機製の変圧器であると間違いはないか。
  山中委員長:三菱電機製だ
  齋藤大臣:把握している。
  石垣議員:能登地震で壊れた志賀原発2号機変圧器は500ガルまで耐えられるはずだが、最寄りの地震計によれば399ガルで壊れた。耐震性についても疑義が生じたのでないか。
  山中委員長:三菱電機の不適切事象が明らかになった際、今回損傷した2号機の 主変圧器 において、「交流耐電圧試験」、「温度上昇試験」において不適切行為が行われていたとの報告を北陸電力から受けた。耐震性に関する事項については不適切行為が行われたとの報告は受けていない。
  399ガルは志賀原発1号機の原子炉建屋地下2階に設置された地震計で記録された最大加速度。今回、損傷した変圧器が受けた加速度と必ずしも同じではないために、500ガルの耐震性能があるはずなのに399ガルで損傷したとのご指摘は必ずしもあたらない
  いずれにしても北陸電力において内部点検の結果を踏まえた上で、 構造解析 を実施し、変圧器が損傷した原因についての調査が行われている。原子力規制委員会としてはその内容を厳正に確認したい。

  石垣議員:今後の調査を待つところもあるが、40年にわたり法令上の問題がないとはいえ、データ改ざんが行われてきた。耐震性の確認が必要だと思うが。
  山中原子力規制委員長:新規制基準では外部電源の信頼性を高める観点から少なくとも2回線の独立性を求めている。外部電源は遠方の他の発電所から電線路を経由して供給される。長大な電線路のすべてに高い信頼性を確保することは不可能。このため、新規制基準では敷地内で多重性、多様性を確保し、独立性を持たせた非常用電源の設置により、外部電源によらずとも原発の安全機能が維持できることを求めている。今回の志賀原発でも必要な電源は確保されていた。
  ただし、変圧器の故障原因が不明なまま放置されるのは好ましいことではない。本年1月10日の原子力規制委員会で、規制庁事務局に対して、北陸電力に原因究明を行わせること。新たな知見がないかを検討するよう指示をした。
  石垣議員:耐震性を含め検証しなおすべきではないか。
  岸田総理大臣:ご指摘も踏まえて経産省において適切に考えるべき。
  石垣議員:適切にとは?
  岸田総理大臣:製品の技術的観点も踏まえて安全性確保に必要な点を確認した上で対応すべきだ。

(48) 北陸電力 2024/3/25 能登半島地震以降の志賀原子力発電所の現況(3月25日現在)
 1.事象概要
 志賀原子力発電所2号機において、令和6年能登半島地震により、2号機 主変圧器 の絶縁油面の低下警報が発生するとともに、比率差動継電器が動作し、外部電源を受電する変圧器が自動で2号機 予備電源変圧器 に切り替わった。その後、油中ガス分析にて変圧器の内部故障の兆候を確認したことから内部点検を実施することとしていた。(1月 30 日にお知らせ済)

 2.内部点検結果
 ・T相の ブッシング (※1)に放電痕ブッシング損傷が確認された。(下図の@部分)
 ・T相のブッシングケースに放電痕が確認された。(下図のA部分)
 ・変圧器本体内壁面にカーボン(※2)の付着があったが、コイルおよび鉄心に異常は認められなかった。
 ・R、S相のブッシングおよびブッシングケースに異常は認められなかった。
 ※1 ブッシング:ケーブルの固定とケーブルとケースを絶縁するための器具
 ※2 カーボン :炭素( アーク 発生時に絶縁油が熱分解することにより生成)


 3.推定原因
 ・地震により冷却器の配管が損傷(上図のB部分)して油面が低下したことにより、絶縁油で絶縁性能を確保していた充電部の一部が気中に露出し、T相のブッシングで放電現象が発生した。
 ・放電現象としてアーク(※3)が発生し、その衝撃によりT相のブッシングの一部が損傷した。
 ・なお、損傷したブッシング等の復旧方法(取替範囲、工法および試験方法等)について調整中であり、復旧時期については未定である。
 ※3 アーク :気体中の放電で生じるプラズマの一種であり、光と熱を発する

(49) NHK 2024/3/25 志賀原発に到達の津波 約4mまで駆け上がったか 北陸電力調査
 地震で壊れた変圧器は、一部の配管が破損して絶縁用の油が漏れ出したことで、内部で熱を発する放電現象が発生し、機器が損傷したことがわかったということです。交換や修理の方法は検討中で、復旧の見通しは立っていないとしています。

(50) 毎日 2024/3/25 志賀原発の変圧器に新たな破損 能登半島地震での油漏れで放電か
 2号機の変圧器を北陸電が詳しく調べたところ、普段は油につかっているケーブルが露出して放電が発生。内部に傷や黒っぽい放電した跡が見つかった。2号機では元日の地震発生時に焦げのような臭いが確認されたが、この放電とは関係がないとしている。

(51) 日経 2024/4/26 志賀原発「原子炉建屋と設備問題なし」 北陸電、地震で
 北陸電力は26日、志賀原子力発電所(石川県志賀町)の能登半島地震の影響を巡り、原子炉建屋と設備について耐震健全性が確保されていると発表した。再稼働を目指す2号機の主変圧器は引き続き復旧方法を検討していく。

(52) 北陸電力 2024/5/31 能登半島地震以降の志賀原子力発電所の現況(5月31日現在)
1.志賀1号機 起動変圧器 からの絶縁油漏えい
<要旨>  絶縁油の漏えいが確認されたNo.4放熱器について上部配管接続部の損傷(約 60mm)及び補強板と フィン 溶接部の割れを確認。これらについて、破面観察及び 構造解析 を実施。
 損傷した原因は、 放熱器 が地震動と 共振 したため、放熱器上部配管接続部に対して設計時に考慮した 静的水平加速度 0.5G を上回る加速度が発生し、部材に許容値を超える過大な応力が発生したことによるものと推定。

<破面観察結果>
 No.4放熱器上部配管接続部及び補強板において、主に「 延性破壊 (※1)」を確認。
 (延性のある金属材料が過大な荷重を受けた時に発生する ディンプル と呼ばれるくぼみを多数確認。)

 ※1 「延性破壊」:材料に引張力を加えた時に大きな塑性変形を起こし、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊現象。

1.志賀1号機起動変圧器からの絶縁油漏えい(つづき)
<構造解析結果>
(1)固有値解析
  ・変圧器本体(タンク部)が 剛構造 であることを確認
  ・放熱器が共振しやすい構造であることを確認
(2)動的解析
  ・損傷箇所に静的水平加速度0.5Gを上回る加速度が発生したことを確認
  ・損傷箇所に許容値を上回る応力が発生したことを確認


1.志賀1号機起動変圧器からの絶縁油漏えい(つづき)
<事象進展メカニズム>
@ 地震発生に伴い、放熱器が共振
A フィン−補強板溶接部の応力が許容値を超過し破断
B No.4放熱器の補強板−補強板溶接部にき裂が進展し破断
C No.4放熱器の補強板が破断することにより放熱器の揺れが増大
D No.4放熱器の上部配管接続部の応力が許容値を超過し損傷

2.志賀2号機 主変圧器 からの絶縁油漏えい <破面観察結果>  上部配管接続部において、主に低サイクルの「 疲労破壊 (※2)」を確認。  ( 低サイクルの疲労破壊 時に発生する亀裂進展幅の大きいストライエーション状の模様を確認。
※2「疲労破壊」:材料に繰返し応力がかかることで、表面または内部の欠陥や割れなどを起点として小さい割れが徐々に進行し、最終的に構造物が破壊する現象。

3.地震対策
 今回損傷した変圧器について補修等を行う。
 また、地震発生に伴い、変圧器の一部部品に共振が発生したことが原因であることから、更なる信頼性向上のため、共振を抑制する等により、今回の地震動を踏まえた地震対策をすすめる。

(53) まさのあつこ 2024/6/1 金属の「疲労破壊」と「延性破壊」が志賀原発で起きていた
  共振 による 「延性破壊」「疲労破壊」
 1月1日に起きた能登半島地震では、1号機で3600リットル、2号機で2万4600リットルもの絶縁油が漏洩した。既報時点では、揺れで「亀裂が入った」ところまでしか分からなかった。今回はより詳しく、地震動との共振により、1号機の 起動変圧器 では「延性破壊」が、2号機 主変圧器 では「疲労破壊」が起きたと分かった。

 Q:(延性破壊とは)伸びちゃって変形したということですね。
 北陸電力広報:そうです。

 2号機の方は、配管接続部で 低サイクルの「疲労破壊」 を確認したと書いてある。そこで尋ねた。
 「疲労破壊」は経年劣化と同じ事象?
 Q:低サイクルによる疲労破壊というのは、いわゆる「 経年劣化6事象 」の一つとされる、繰り返し応力がかかって起きるのと同じですね?
 北陸電力広報:そうですね。経年劣化ではないが、小さな揺れが何回も繰り返し起きたことで、今回、疲労破壊が起きた。
 Q:すると、今回、全体が揺れたので、この部分だけではなくて、同じように金属疲労、細かい振動を受けたところで同じような繰り返し応力が起きて、疲労破壊が起きたとか起きそうになっているところがあると考えられるんですが。
 北陸電力広報:ご指摘の通りで、平面図のNo.11のところが損傷して漏洩したが、その他の 放熱器 、黄色で枠を囲ったNo.1〜10まで赤の点線のすべての冷却機の配管の接続部が損傷した。ただ漏油した箇所はNo.11だった。


 対策は「共振の抑制」
 Q:対策としては壊れたものを交換することに尽きる?
 北陸電力広報:対策は 6ページ にまとめているが、(損傷は)共振が原因だとわかったので、共振を抑制する対策を取る。具体的には今後検討だが、たとえば、 筋交(すじかい) を入れるといった対応を進めていく。
 Q:耐震性Sクラスの変圧器に変えるということではない?
 北陸電力広報:そもそも変圧器は耐震クラスCとなっていて、(規制要求が)Sに上がってくればそういうことになるんでしょうが、(現在は)Cなので、一般産業品と同等品ということで、我々としては、今回の事象を踏まえて自主的に対策をとっていく。

 それが、たとえば筋交を入れるというアナログな対策なのだ・・・。
 (これは、他会社の他の発電所にも水平展開されることになるのだろうか。)

(54) まさのあつこ 2024/6/7 原発:経年化と地震による「金属疲労」について
 6月5日 会見速記録(関係部分の要点のみ)
  ○記者(まさのあつこ氏) 志賀原発の変圧器について、北陸電力は材料に繰り返し応力がかかって起きた疲労破壊だと。これは 老朽化原発の劣化6事象 (※)の 「低サイクル疲労」 が地震でも生じたと考えられるが。
  ○山中委員長 これは何十年もかかって疲労するものではなくて、地震時に低サイクルの力が加わって破壊をする疲労破壊という特異な現象だ。阪神・淡路大震災能登半島地震は、地震のスペクトルが似ていた(※3)ということで、私も「低サイクル疲労」は起きていたんじゃないかとよく調べてくださいとお願いした。2号機の変圧器は「低サイクル疲労」だという結論が得られた。高経年化とは全く違う事象だ。
  ○記者 「低サイクル疲労」ではあったと。
  ○山中委員長 低サイクルの短時間で起きる疲労現象である。

 つまり、山中委員長は地震で起きる「低サイクル疲労」は、短時間で起きる。何十年もかかって疲労する高経年化とは全く違う事象だと言いたいのだ。私はもちろん、山中委員長も「金属」の専門家ではない。
 そこで、金属の専門家である井野博満 東京大学名誉教授(工学博士)に聞いてみた。

  井野先生:それは原因がなんであれ「低サイクル疲労」です。山中委員長は『カテゴリーが違う』ということを一生懸命言っているんですか?
  まさの:山中委員長の答えは、日本の原発はあちこちで揺らされているから、温度差による金属疲労だけじゃなくて、地震で度々揺らされることによって老朽化はもっと進んでいるんじゃないかと私が聞こうとしていることを、深読みしての答えではないかと思います。
  井野先生:合わせて考えるのが当然です。熱疲労と機械的振動はどちらも低サイクル疲労を起こすわけですから、分けて考えようとすることには無理があって、両方考えないといけない。熱応力による疲労と、地震による疲労は足し算して考えないといけないと思います。

※:編集者注:劣化6事象については 「経年劣化した原子炉と規制のさまざまな問題点」(2023/07/22 井野博満) によれば以下の通り
高経年化対策上抽出すべき主要6事象
・低サイクル疲労(※2)
・中性子照射脆化
・照射誘起型応力腐食割れ
・2相ステンレス鋼の熱時効
・電気・計装品の絶縁低下
・コンクリート構造物に係る強度低下及び遮蔽能力低下

※2:ねじ締結技術ナビの 「低サイクル疲労の基礎知識」 によれば
 低サイクル疲労の特徴
 大型構造物の部材などが降伏点を超える大きな応力あるいはひずみの繰返し荷重を受けて疲労破壊することがあります。構造物が受けるこのような過大荷重によって10の4乗から10の5乗程度のサイクルオーダー以下の繰返し数で破断するような大きな応力振幅条件下では、応力に対するひずみ成分に塑性ひずみ成分が含まれており、この寿命領域での疲労破壊現象を低サイクル疲労と呼びます。
 また、高温機器においては機器の起動・停止に伴って部材に発生する熱応力が材料の降伏点を超えることがあり、この場合の疲労現象も低サイクル疲労となります。(後略)

※3:阪神大震災と能登半島地震のスペクトルが似ていたという指摘は日経クロステックの 「“阪神級”の揺れで建物被害甚大の能登半島地震、火災や津波の複合災害も」(2024/01/03) に記載されている。

(55) 東奥 2024/7/1 志賀原発 電源復旧が長期化
 北陸電は変圧器の部品が地震の揺れと 共振 し、接続部に許容値を超える力が加わったと推定。補強材や、接続部に揺れを吸収する継手を施す対策を念頭に検討している。1号機の変圧器は仮復旧し8月に本格復旧を見込むが、2号機は補修方法を検討中で、復旧時期は見通しが立っていない。

(56) NHK 2024/7/24 志賀原発“設備の本格的復旧には少なくとも2年以上”北陸電力
 これについて北陸電力は24日、オンラインで会見を開き、設備の復旧の見通しを説明しました。地震で壊れた2号機の変圧器一式取り替える必要があり、設備の製造に少なくとも2年程度かかるため、本格的な復旧はそのあとになる見通しだということです。
 そのうえで、復旧までの間は代わりに移動式の変電所を使った受電設備を設ける計画で、来年9月末までには5回線すべてで電気を受けられるよう工事を行うとしています。

(57) 北陸放送 2024/7/25 志賀原発 変圧器復旧に2年以上 能登半島地震で被害

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