[2024_01_17_06]【活断層評価】阪神で注目も海域後回し 能登地震前、警戒高まらず(静岡新聞2024年1月17日)
 
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【活断層評価】阪神で注目も海域後回し 能登地震前、警戒高まらず

 11:30
 能登半島地震は、半島沖に延びる活断層によって引き起こされた。活断層は1995年の阪神大震災で一般に広く知られるようになり、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)ができるなど調査、研究体制の整備が進んだ。だが海域の活断層が起こす地震の切迫度などに関する評価は陸域の後回しとなり、警戒感が高まらないうちに今回の地震が起きた。専門家からは「後手に回った感は否めない。早急に進めなければ」との声も上がる。

 ▽悔い

 「ノーマークではなかったというところが、非常に悔いが残る」。政府の地震調査委員会のメンバーでもある西村卓也京都大教授(測地学)は、こう漏らした。
 能登半島沖の活断層は、2007年の能登半島地震を機に調査が進み、複数の断層が計100キロ以上にわたって延びているとの研究成果もあった。しかし、地震の規模や発生確率を予測する地震本部の「長期評価」は、陸域にある活断層の評価から進めており、海域の評価はわずかだ。
 西村氏は「研究者によっては(海域の活断層に)非常に問題意識を持っていたと思うが、順番にやっている最中だった」と話す。

 ▽批判

 都市直下で起きた地震で多くの被害を出した阪神大震災を機に、活断層の怖さが広まった。研究者は震災以前から活断層に注目していたものの、その危険性が住民に伝わっていなかった。予知に主眼を置いたそれまでの対策にも批判が集まり、調査研究を防災に生かすことを狙いに地震本部は発足した。
 地震本部はこれまで、主に陸域にある114カ所の「主要活断層帯」と、東日本大震災を引き起こした日本海溝沿いや南海トラフ、相模トラフなど各地の海溝型地震の長期評価を公表。一方、海域の活断層の評価は22年に公表した日本海南西部(九州、中国地方の北方沖)のみだ。

 ▽先手

 地震本部が公表している、2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した「地震動予測地図」。関東から四国地方にかけての太平洋側が26%以上となっているのに対し、能登半島は3%程度だ。「(作成時に)能登半島沖に活断層があるという情報が入っていないので結果的に評価が低くなった可能性がある」(西村氏)
 東日本大震災を受け、プレート境界で起こる海溝型地震に目が向きがちだったと指摘する専門家もいる。
 日本海側の津波防災に向け、海域の活断層を評価した国土交通省の調査検討会は、能登半島沖に今回の震源とほぼ一致する活断層のモデルを想定していた。東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は「津波想定としては良かったが、地震による揺れの予測に用いていなかったのは反省すべき点だ」と話す。
 遠田氏は「何かが起こるたびにそれが注目されるというのを繰り返している。自然は不意を突いてくるので、先手先手でやっていかなければならない」と強調。「新幹線の線路やビルの真下で活断層がずれることによる被害など、過去に起きたことがないことも想定して対策を検討しなければいけない」と警鐘を鳴らした。
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