[2024_01_15_08]見過ごされた海底活断層「F43」のリスク 同種地震の予測にも課題(産経新聞2024年1月15日)
 
参照元
見過ごされた海底活断層「F43」のリスク 同種地震の予測にも課題

 20:44
 最大震度7の強い揺れが観測された能登半島地震で震源となったとみられる2本の海底活断層について、政府や石川県が地震動(地震による強い揺れ)の予測に反映していなかったことが15日、分かった。県の被害想定や対策にも影響した可能性がある。海底活断層の影響は他の地域でもほとんど反映されておらず、専門家は早急な対応を求めている。
 [冬の夕刻、能登半島北方沖を震源とした地震が発生する]。石川県の「地域防災計画」に挙げられた大地震のシナリオの一つは、今回の地震とよく似ている。だが、被害の想定は実際よりもかなり小さい。県は「ごく局地的な災害」として、死者7人、負傷者数211人と予測していたが、実際の能登半島地震では15日時点で222人の死亡が確認され、1000人以上が負傷した。
 東北大災害科学国際研究所の遠田晋次教授によると、この想定には、実際に震源になったとみられる海底活断層が考慮されていなかった。能登半島の北の海底を沿うように走る「F43」「F42」と呼ばれる2本の海底活断層。F43を震源とする地震は、事前に予想された規模もマグニチュード7・6と、今回の地震におおむね合致する。
 これら2本を含む海底活断層は、国土交通省が東日本大震災を受けて平成26年にまとめた報告書などに取り上げられ、津波のリスク想定に活用されてきた。だが、全国の地震による揺れを予測・分析する政府の地震調査委員会の「地震動予測地図」には加味されなかった。海底の活断層については、「陸上に強い揺れをもたらすものではない、というイメージが一部にあった」(遠田氏)といい、従来の予測にはほとんど反映されてこなかったという。
 周辺の海底活断層が予測に反映されていないケースはほかにもある。例えば新潟県・佐渡も周辺に海底活断層が集中しているが、地震調査委の長期評価の対象になっておらず、地震動予測にも反映されていない。遠田氏は「このままでは、同じことがまた起きてしまう。早急に取り組むべきだ」と指摘する。
 地震調査委は平成29年4月、海底の活断層について将来の地震発生確率を評価するための分科会を設置。令和4年、日本海南西部(九州・中国地方沖)側の海域活断層についての長期評価が公表された。だが、他の地域は未公表のままだ。
 産業技術総合研究所名誉リサーチャーの岡村行信氏によると、海底活断層は掘削による調査が難しく、活動周期や最終活動時期といった地震予測に必要な情報の信頼性が陸上の活断層に比べ落ちるといったハードルもある。ただ、岡村氏は「難しいが、不可能な話ではない。海底の活断層も当然、予測に組み込むべきだ」と強調した。(花輪理徳)
KEY_WORD:能登2024-海域活断層の評価が後回し_:NOTOHANTO-2024_:HIGASHINIHON_: