[2023_12_05_02]<東海第2原発 再考再稼働>(61)東海村議編 工事不備「隠蔽」で不信感 共産・大名美恵子さん(69)(東京新聞2023年12月5日)
 
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<東海第2原発 再考再稼働>(61)東海村議編 工事不備「隠蔽」で不信感 共産・大名美恵子さん(69)

 08時01分
 原発は危険なものと考えており、東海第2原発の再稼働には反対だ。日本原子力発電が東海第2の再稼働のため進めている安全対策工事で不備が見つかった。しかも安全上とても重要な防潮堤で、工事はストップ。大きな問題だ。原電は不備を6月に見つけながら、公表したのは4カ月も後の10月16日だった。事業者としての信頼は崩れた。
 原電は11月の村議会の聴取に「原因や対策がまとまった段階での公表を考えた」と説明した。しかし私は隠蔽(いんぺい)していたと受け止めている。隠蔽した理由の一つと思われるのが、村議会の全議員で構成する原子力問題調査特別委員会の状況だ。
 特別委では東海第2の再稼働に賛成する請願2件と、反対する3件の審議が最終局面を迎えていた。9月21、26日、10月13日にこのうち4件の採決があり、賛成の2件は「採択すべきだ」となり、反対の2件は「採択しない」となった。残りの反対1件も4日に「採択せず」と決まった。
 特別委の結論は12月の定例会本会議の請願採択でも変わらない見込みだ。賛成の2件が本会議で採択されれば、村は再稼働を求める意見書を国に提出することになる。
 原電は工事不備の公表をできるだけ遅らせて、賛成の請願が順調に採択される流れとなるのを待っていたと思う。私は工事不備の発覚により、今は請願の結論を出す時期ではなくなったと考える。委員会の採決では数の力で負けたが、再稼働を不安に思っている人は大勢いる。村民に事実を伝えていく。
 工事の不備については9月に私のもとに情報が寄せられた。ことしの春まで東海第2の安全対策工事に従事した人からだ。防潮堤の取水口付近の鋼製防護壁を支える基礎部分に、隙間や鉄筋の変形が生じているという話だった。
 電話やオンラインでやりとりする中で、こんなことがあるのかという思いの半面、工事を急ぐ原電なら起こり得るとも感じた。原電は部分的に工事を中断しているが、全体を中止し再稼働ではなく廃炉へと転換すべきだ。
 山田修村長が9月議会で突然、避難計画を年内に策定すると表明した。不足する避難先は民間施設も使うなどとしているが、きちんとした計画を年内に作るのは無理だ。計画を作るさまざまな段階で素案を公開し、住民がその都度納得して合意したことを確認しながら作ることが必要。そうでなければ重大事故が発生した際、適切な避難などできるわけがない。
 私が村議選に初めて出たのは2000年1月。前年の9月に茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で臨界事故が発生した。職員2人が亡くなり、住民らも被ばくしたことに大きなショックを受けた。村には国策で原子力関連施設が集められた。それらや行政を監視することが大切だと考え、村議になった。
 来年1月の村議選では、再稼働に賛成する候補は請願の採択結果と避難計画を、安全性を訴える根拠にするだろう。賛成派の中には、原子力関連施設があるから仕事がもらえ、村も潤い住みやすいと主張する人がいる。原子力施設があるから良い生活ができるという考えは不幸だ。次世代に何を残すのかを考えてほしい。(聞き手・竹島勇)

<おおな・みえこ> 1954年、東海村生まれ。常磐学園短大(現常磐短大)卒業後、保育士として水戸市の私立保育所に就職した。核戦争の否定や女性の権利を守ることなどを目的とする団体「新日本婦人の会」の県本部(水戸市)職員、共産党茨城北部地区委員会職員を歴任。2000年1月の村議選で初当選、6期目。
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