[2023_07_07_03]原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 電気事業法改悪について 「止めている期間が長いほど延長運転期間が長くなる」規定はおかしい 9.異議申立ないし審査請求について…から 15.運転停止命令と取消しとの関係について…まで 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その7)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)(たんぽぽ2023年7月7日)
 
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原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 電気事業法改悪について 「止めている期間が長いほど延長運転期間が長くなる」規定はおかしい 9.異議申立ないし審査請求について…から 15.運転停止命令と取消しとの関係について…まで 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その7)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)

 その2 電気事業法改悪について

 9.異議申立ないし審査請求について

 これらの期間計算について異議があるときは如何なる救済方法が定められるのだろうか。もちろん、処分対象の事業者の場合は、先の条文の計算通りに参入期間が認められないことになると、審査請求を行う対象となりうる。
 例えば東海第二原発の稼働期間について経産大臣が許可を出した場合、これにたいして住民はいかなる異議申立まはた審査請求ができるのか。これについて経産省は行政不服審査法の定める手続きで行われる審査請求は可能としている。電事法等では事業者が行う場合、地元自治体が行う場合、私たち市民が行う場合のいずれも手続きについては想定されておらず、規定もない。

 10.公聴会や意見聴取について

 このような運転期間の延長については、到底容認できないとの声は高まっている。
 昨年12月に取りまとめられた「GX実現に向けた基本方針」について、エネルギー政策を中心に「GX地方説明会」を全国10カ所で開催したが、この段階ではまだ法案も明らかではなかったにもかかわらず、強い批判の声が高まった。
 しかし経産省は改訂法が国会に上程される段階では、公聴会、意見表明の機会等は設けていない。パブリックコメントはあくまでもGX基本計画に対してのものであり、具体的な法令に関しては、一切行わなかった。野党が求めていた福島県での公聴会開催も拒否した。
 今後は、規則、基準等を策定した段階でパブコメにかけると経産省は説明したが、これでは意見を聞くことにはならない。

 11.どこに意見聴取をするのか

 第5項で『経済産業大臣は、第2項の認可をしようとする場合には、あらかじめ、前項第1号に掲げる基準の適用について、原子力委員会の意見を聴かなければならない。』としている。
 住民や自治体ではなく、原子力委員会に聞くという。
 しかしもとは原子力委員会が原発の立地を許可している。(設置許可及び同変更申請の許可)、何故ふたたび原子力委員会の意見を聞く必要があるのか、延長を認めないなどの意見が表明される可能性は考えられない。
 市民や国会や原子力規制委員会の意見は聞かないのに、推進している機関の意見を聞く理由は、あまりにも明確だ。

 12.原発再稼働の上限を定めるべき

 第7項で『第2項から前項までの規定は、第2項の認可を受けた原子力発電事業者が、その発電事業の用に供するため、当該認可により延長された運転期間を超えて当該認可に係る発電用原子炉を運転しようとする場合に準用する。』について、少なくても運転から40年以上を経過した原発については、いすれかの上限を定める必要がある。
 炉規法の最大60年は安全規制であり、これを事実上無制限としているのは安全を犠牲にして経済性を最大限求める立場。
 諸外国には上限を定めない国が多いなどと経産省は言うが、福島第一原発事故を経験した国と、ロシア(ウクライナ)を除き炉心溶融を引き起こし大量の放射性物質拡散事故に至った日本と、それ以外を比較すること自体不適当だ。
 また、このままでは運転をしていない原発は、80年を超えても再稼働が可能になるという、世界でも例のない異常事態になる。
 止めているほど延長運転ができるなどと言った規定を持つ国こそ、どこにもない。停止期間を運転していない時間と勝手に決めた国は世界中で日本だけである。

 13.認可取消しの判定基準についても不明確

 「認可の取消し」について、第27条の29の4では、『認可原子力発電事業者が次の各号のいずれかに該当するときは認可を取り消すことができる。』として、第1号『第27条の29の2第4項第1号、第2号又は第4号に掲げる基準に適合しなくなつたとき。』としていますが、最初は「平和目的外利用」2番目は「炉規法の許可の取り消し」3番目は「当該発電事業を遂行する態勢の見直し及び改善に継続的に取り組むことが見込まれ」ないことだとされています。

 なぜ3項「電気の安定供給を確保することに資すると認められること。」を飛ばすのですか。
 「第2号又は第4号」ではなく「第2号ないし第4号」とするべきではないですか。
 また、平和目的外や炉規法の規定に反した場合、直ちに許可は取り消されるべきであって、それをするのは電気事業法ではなく原子力基本法と炉規法の役割ではないですか。

 14.許可取り消し条件の既定の問題点

 第2項では許可の取消条件として次のように規定する。
 『この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反した場合において、公共の利益を阻害すると認めるとき。』
 これは二段階規定になっている。
 本来は、命令の規定に違反していたら直ちに許可を取り消すべきで、これに「公共の利益を阻害すると認めるとき」と、さらに条件を加えることは理解できない。
 法令違反だけで許可を取り消さない理由は説明されていない。
 また公共の利益を阻害するとは何を具体的に指しているのかも不明確だ。
 存在そのものが公共の利益を阻害していると思うが、そんな発想はないだろうから、この規定の意味を説明する必要がある。

 15.運転停止命令と取消しとの関係について

 規定される「運転停止命令」について、第27条の29の5では(経産大臣は)『原子力発電事業者が第27条の29の2第2項の認可を受けないで同条第1項の40年を超えて発電用原子炉を運転したとき、又は当該認可により延長された運転期間を超えて当該認可に係る発電用原子炉を運転したときは、当該原子力発電事業者に対し、当該発電用原子炉の運転を停止すべきことを命ずることができる。』としているが、炉規法ではこれを「許可の取り消し又は運転停止」としている。
 炉規法と同じと電事法に運転期間の規定を持ってきたときに説明していたはずが、こういうところで規制を大きく緩和させることに怒りを禁じ得ない。なぜ許可の取り消しを規定しないのか納得できる説明はない。(その8)に続く
KEY_WORD:原発_運転期間_延長_:FUKU1_:TOUKAI_GEN2_:ウクライナ_原発_: