[2023_07_11_02]東海第二 地裁「差し止め」 きょう控訴審初弁論 問われる避難計画の実効性(東京新聞2023年7月11日)
 
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東海第二 地裁「差し止め」 きょう控訴審初弁論 問われる避難計画の実効性

 日本原子力発電(原電)が再稼働を目指す東海第二原発(茨城県東海村)の運転差し止めを本県など九都県の住民が求めた訴訟の控訴審第一回口頭弁論が十一日、東京高裁(相沢哲(てつ)裁判長)で開かれる。二〇二一年三月の水戸地裁判決は、重大事故に備えた広域避難計画の不備を理由に原発の運転を差し止める初の司法判断を示しており、高裁でも維持されるかが注目される。(竹島勇)
 地裁判決時点の原告は二百二十六人で、このうち東海第二の三十キロ圏内の住民七十九人が勝訴。原電と、三十キロ圏外の住民がそれぞれ控訴した。死去や高齢などで訴えを取り下げた住民を除き、控訴審には百七十九人が臨む。
 原発から三十キロ圏内の自治体には避難計画の策定が義務付けられている。
 水戸地裁(前田英子裁判長)は、東海第二ではこの範囲に約九十四万人(一五年国勢調査。直近の二〇年調査では約九十二万人)が暮らしていることを踏まえ「実効性のある避難計画や防災体制が整えられているというには程遠い状態で、人格権侵害の具体的危険がある」と指摘した。
 一方、地震・津波対策や火山の噴火への備えが不十分だとの住民側の主張については、原子力規制委員会の審査に不合理な点はないとして退けた。
 控訴審を前に、住民側の大石光伸共同代表は「一審判決を維持してほしい」と求めた上で、「原発が憲法違反であること、地震に対する安全確保が不十分なことなど九項目を主張する」と話した。
 原電は取材に「徹底した安全性向上対策を行っており、地裁判決では安全性については基本的に認めていただいた」としつつ、避難計画の不備を理由に運転が差し止められたことには「現在、(市町村など)関係先で策定に向けた取り組みが行われている状況を加味せずに判決が出されたことは承服できない」と説明。「原判決を取り消していただけるよう、安全性などの主張、立証に全力を尽くす」とコメントした。
 控訴審を巡っては、当初審理を担当する予定だった永谷典雄裁判長に原発関連の訴訟で国側代理人を務めていた経歴が判明し、住民側が反発。今年一月に担当を外れ、同月末に決まっていた第一回口頭弁論は延期になっていた。
 原電は新規制基準に基づく事故対策工事を二四年九月に完了予定。住民側は、控訴審の間に再稼働に向けた動きがあった場合には、運転差し止めを求める仮処分を東京高裁に申し立てる方針だ。
 第一回口頭弁論は十一日午後二時半から。午後一時ごろから傍聴抽選券を配布する。

<東海第二原発> 日本原子力発電が東海村で1978年に営業運転を始めた沸騰水型軽水炉で、電気出力110万キロワット。2011年の東日本大震災で被災し、原子炉の冷温停止に3日半かかった。原子力規制委員会は18年9月、新規制基準に適合すると認め、同年11月には20年間の運転延長を認可した。防潮堤建設などの事故対策工事やテロ対策施設の工事は24年9月に終わる予定。再稼働には県と立地・周辺6市村の事前了解が必要となる。
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