[2023_11_02_03]かすむ原則40年…「福島の教訓 忘れたのか」 川内原発40年超運転認可、古里失った出身者ら憤り(南日本新聞2023年11月2日)
 
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かすむ原則40年…「福島の教訓 忘れたのか」 川内原発40年超運転認可、古里失った出身者ら憤り

 08:50
 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は1日、原子力規制委員会によって20年超運転が認められた。「安全性は」「避難の実効性は」。懸念は払拭されないまま、東京電力福島第1原発事故後に定められた「原則40年」がかすんでいく。立地する薩摩川内市や周辺自治体では期待と不安が入り交じる。「教訓を忘れたのか」と憤る福島県出身者。60年超運転を見据えた「長期運転」の足音が迫る。
 1日、県内からは「住民の不安を無視」「事故が起きれば誰が責任をとるのか」と批判の声が上がった。一方、立地する薩摩川内市の経済関係者は「原発は地元産業に貢献している」と歓迎した。
 安全規制の役割を放棄している−。規制委の認可が出た直後、市民団体「川内原発30キロ圏住民ネットワーク」は、認可撤回を求める抗議文を規制委にメールで提出した。
 高木章次代表(72)らは県庁で会見し「安全性は確保されておらず、県民は不安を抱えている」。九電の新たな基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)に基づく耐震対策を踏まえずに認可したことに「到底許せない」と非難した。
 避難計画の実効性を不安視する声も相次ぐ。計画では、5キロ圏が即時避難。5〜30キロ圏は屋内退避後、放射線量が上がった地域は避難する。薩摩川内市のパート田中ひろみさん(50)は「事故が起こると、退避をせずに避難する人も多いはず。運転延長を認めるなら避難計画もしっかり議論してほしい」と強調した。
 運転延長を望む声も。同市で飲食店を営む若松愛美さん(41)は「飲食や宿泊など幅広く地元経済に貢献し雇用も創出している。厳しい安全面の基準をクリアしており心配はしていない」。出水市野田のクリーニング店経営、中野健一さん(53)は自然エネルギーは安定した電力供給源になっていないと指摘。「原発からバトンを渡すのはまだ早い」と主張した。
 運転延長を「既定路線」と見る向きもある。日置市東市来の国分高明さん(71)は「福島第1原発事故後も原発を稼働させる動きに、『成り行きを見守るしかない』という諦めがあるのではないか」と推測した。
 政府は原発回帰を進め、「原則40年」と定めた運転期間は形骸化する。福島第1原発が立地する福島県双葉町出身の斉藤武夫さん(69)=霧島市福山=は「原発事故は12年たった今も解決していない。古里を失った多くの人を忘れないでほしい」と訴えた。
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