[2023_11_02_04]「例外中の例外」だったはずなのに…川内原発の60年運転を認める議論が20分で終わった意味(東京新聞2023年11月2日)
 
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「例外中の例外」だったはずなのに…川内原発の60年運転を認める議論が20分で終わった意味

 06時00分
 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が1日、原子力規制委員会から「原則40年」を超えて60年までの運転が認められた。「例外中の例外」とされた運転延長が認可された原発は計6基に。2025年6月からは経済産業省の判断で、60年を超えた運転も可能となる。岸田政権の原発推進政策は、事故リスクが高くなる老朽原発の長期運転という危うさを抱える。(渡辺聖子)

 ◆「特段難しい問題や大きな論点はなかった」

 「これまでの運転延長で認めたものと変わりはないか」。1日午前の規制委定例会合で、山中伸介委員長が川内原発の審査が過去の実績と同じように進んだことを確認した。
 審査を担当した杉山智之委員は「特段難しい問題や大きな論点はなかった」と発言。5人の全委員が認可決定に異論はないことを表明し、委員間の議論は20分足らずで終わった。
 会合後の記者会見で、山中委員長は「運転延長の審査経験を積み、今回の審査に生かすことができた」と振り返り、全申請を認可していることについては「規制基準に合致していれば認可する」と述べるだけだった。

 原発の運転期間 東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ、2012年に原子炉等規制法を改正して原則40年と定め、1回に限り最長20年間延長できるとした。当時、野党だった自民党も賛成して成立した。岸田文雄首相は昨年8月、運転期間の見直しを指示。今年5月の法改正で、新規制基準への適合性審査などで停止した期間分を追加して延長することで、将来的には60年超運転が可能になった。

 ◆新規建設は進まない 老朽化原発を動かし続ける各社

 規制委が運転延長を認めた原発は他に、関西電力の高浜原発1、2号機と美浜原発3号機(いずれも福井県)、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)で、既にこの4基は運転開始から40年を超えている。川内1、2号機や運転延長を審査中の高浜3、4号機は37〜39年に達しており、原発の老朽化は進む一方だ。
 政府は、廃炉が決まった原発を対象に建て替えを促す方針を打ち出したが、電力各社は1兆円を超えると想定される新たな原発建設には二の足を踏んでいる。それよりもコストがかからない原発の長期運転に注力しているのが現状だ。
 この日、規制委事務局の担当者から認可書を受け取った九電の林田道生・常務執行役員も、原発を最大限活用するという社の方針を念頭に「大きな一歩になった」と意義を強調した。

 ◆2025年から新制度、議論はまだ始まっていない

 60年超運転を可能にする改正電気事業法が施行される25年6月以降、運転延長の可否の判断の担い手は、規制委から経産省に移る。規制委は、運転開始から30年を起点に10年以内ごとに、原発の劣化状況を審査し、東京電力福島第1原発事故を教訓にした事故対策を盛り込んだ新規制基準に適合しているかを判断する。
 一方、経産省資源エネルギー庁は改正法の施行後、電力会社の申請を受けて60年を超えて以降の運転できる期間を決める。新基準の審査などで停止していた期間が上乗せされる見通し。
 ただ施行まで2年を切ったが、延長期間を巡る有識者の議論は始まっていない。エネ庁原子力政策課は「有識者の議論とパブリックコメント(意見公募)を経て施行までに決める」と説明するにとどまっている。
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