[2022_01_31_02]完成から1年、災害避難道の橋 開通できず 周辺の用地交渉難航、市 強制収用を検討 鹿児島・いちき串木野(南日本新聞2022年1月31日)
 
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完成から1年、災害避難道の橋 開通できず 周辺の用地交渉難航、市 強制収用を検討 鹿児島・いちき串木野

 いちき串木野市で災害避難道として計画された橋が、完成から1年以上経過しても開通できない状態になっている。右岸側のたもとの土地の買収が難航し、道路がつなげられないためだ。津波や九州電力川内原子力発電所(薩摩川内市)の事故が起きた場合の避難道となり、地元からは早期開通を願う声が上がる。市は強制収用の検討を始めた。
 橋は、市街地北部を流れる五反田川に架かる。市によると、全長59.6メートル、幅11.5メートル。事業費は約10億円を見込む。国道3号が通る橋とその下流に架かる橋の中間に当たり、市中心部と山手の平江地区をつないで災害時の住民避難を円滑にするため計画された。
 市は2014年、付随する道路予定地を含む地権者22人を集め、説明会を開催。当時建設について、市は「全員同意していた」と主張する。しかし、平江地区側の橋のたもとの地権者と補償内容を巡って交渉が難航。まとまらないまま20年10月、橋本体が完成した。
 昨年末の市議会一般質問では、市議から「いつまで交渉を続けるのか」と問われた。中屋謙治市長は「法的手続きを視野に入れる」と答え、土地収用法に基づく強制収用の検討を始めるとした。
 強制収用には、県に公益性のある事業と認定される手続きが必要。市都市建設課の吉見和幸課長は「県に相談しようと考えている段階」とし、「強制収用は時間がかかる。早期開通へ地権者との交渉も続ける」と説明する。
 鹿児島市に住む地権者の男性は「市の説明に納得できない点があった。強制収用は時間を要し、住民に迷惑を掛ける。どこかで妥協点を見いだせれば」と話す。
 地元の野平地区コミュニティ協議会の井之上洋一会長(72)は、計画段階から市の説明会に参加。「災害避難道としてはもちろん、利便性も高まる。早く開通してほしい」と早期解決を求めている。
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