[2023_09_02_08]訪日客減少は水産物輸出停止より重大な経済被害 3割減少が30年間続くと、GDPで20兆1800億円の減少、うち雇用者所得10兆1600億円 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕(たんぽぽ2023年9月2日)
 
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訪日客減少は水産物輸出停止より重大な経済被害 3割減少が30年間続くと、GDPで20兆1800億円の減少、うち雇用者所得10兆1600億円 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

 2023年8月25日のメルマガ【TMM:No4846】で、中国への水産物輸出停止に関して、日本経済全体の経済損失の推計を発表した。続いて最近の報道によると、中国から日本行き航空券の予約数が3割減少しており、汚染水放出の影響とみられるという。(※1)
 そこで訪日客の減少による日本経済全体の経済損失を推計してみたところ、水産物をはるかに超える損害が発生することがわかった。

 中国からは、コロナ前の2019年には年間約860万人の訪日客(観光目的)があり、宿泊・飲食・買物など1人あたり平均で約21万円を消費している。(※2)
訪日客の減少がどのくらい続くか予測しにくいが、かりに訪日客の3割減少が30年間続くとして、日本経済全体の経済損失を推定するとGDPで20兆1800億円の減少、うち雇用者所得10兆1600億円にあたる。
 これは以前のメルマガで発表した水産物輸出停止による被害(※3)をはるかに超える金額となる。

 せっかくコロナ明けで観光・飲食業界が期待しているところ、政府の失策によりまたもや多くの関係者が損害を受けることになる。水産物には風評被害補償金など、姑息ながら対応が発表されているが、現時点では訪日客減少の損害について何も対応がされていない。
 汚染水放出は陸上保管に比べてコストが安いと説明されているが、その反面で日本経済全体に莫大な損害を与えている。

(※1)2023年8月30日、ANN NEWSその他各社報道
(※2)政府観光統計 https://statistics.jnto.go.jp/
(※3)【TMM:No4846】では、年間の水産物貿易額を717億円としていましたが、これは魚類だけの数字でした。その他の水産加工品等を加え、さらに香港・マカオの分を集計すると1,367億円となります。
 また訪日客減少の評価期間と同じ30年間で計算を修正しました。その結果、水産物輸出停止の被害はGDPで4兆4800億円、雇用者所得2兆0700億円となります。
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