[2023_07_24_02]IAEAは原子力推進機関 推進機関を「中立」と表現するメディアの不見識 原子力推進を阻害する「危機」を心配しているだけ IAEAは被ばくを強要する機関 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2023年7月24日)
 
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IAEAは原子力推進機関 推進機関を「中立」と表現するメディアの不見識 原子力推進を阻害する「危機」を心配しているだけ IAEAは被ばくを強要する機関 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎ IAEA国際原子力機関とは

 IAEAとは、原子力を推進してきた国際機関(国連機関)です。
 外務省のホームページにも、そのことは明確に記述しています。
 「IAEAは、原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的とする。」「全世界における平和的利用のための原子力の研究、開発及び実用化を奨励し、援助する。加盟国間の役務、物質、施設等の供給の仲介や、活動又は役務を行う。」「国連機関等と協議、協力の上、健康を保護し、人命及び財産に対する危険を最小にするための安全上の基準を設定し又は採用する。」(抜粋)
 原発を推進している機関では放射性物質の「安全性」基準も原発推進が可能な程度に「加減」するのは当然です。

◎ 汚染水排出との関係は

 東京電力による汚染水の海洋放出について、IAEAが反対することはありません。
 IAEAが反対したら、それは自らの行動を全否定することだからです。
 IAEAとは、原子力開発が核兵器開発に繋がらないように監視し、大量の放射性物質の放出が起こらないように監督することが主な仕事です。
 なぜならば、核兵器が世界中に拡散したら、間違いなく核戦争に繋がり、世界が滅亡するからです。(*)
 また、放射性物質の大量拡散事故が起きれば、たちまち世界世論は反原発になってしまい、IAEAの責任も問われ、世界中で原発が廃炉になってしまいます。
 原子力を推進するIAEAにとっては、これは絶対避けなければならないことです。
 一方、IAEAは原子力開発が順調に進むのであれば、一定の範囲の被ばくは「容認されなければならない」と考えています。これが安全基準の根幹にある考え方です。
 放射性物質の排出をゼロにして原子力開発をおこなうことなど物理的に不可能だから、一定の被ばくは容認されることにしたのです。
 それを私たちは押しつけられているだけです。
 特に、核(原発)を持たない南太平洋の島嶼国などにとっては、単に被ばくの危険性が高まるだけで、何の利益もありません。

◎ IAEAは誰の利益で動くのか

 原子力大国である日本では、電力消費者や税金を払っている人から搾取した資金を、原発や原子力施設の立地に伴って行われている「税金のばらまき」として一部の企業や自治体(及び政治家)の利益として還流しています。
 これらのお墨付きを与えてきたのがIAEAであり、日本でも安全基準をIAEAの作成した規則を導入して作ってきました。
 しかしその基準は、多くの科学者により安全とは言えないと批判されてきました。
 IAEAが取り入れている安全基準は、「実行可能な限り低く」という考え方であり、ゼロ被ばくを原則としていません。
 自然放射線も人工放射線も危険なことに変わりはないのですが、事実上自然放射線以上の人工被ばくを防止するとしているだけで、被ばく線量をゼロにせよと入っていません。
 ゼロ被ばくは原子力を止めろというのに等しいからです。これは「実行不可能」なのです。
 この「実行可能な限り低く」が、承認不可能なのです。
 私は「核兵器と原子力を止めれば良いだけじゃない」と考えますから、人工被ばくをゼロ被ばくとする考え方です。
 その立場からは、IAEAは中立などではありません。
 あくまで被ばく(一定の核兵器開発からのものも含めて)を強要する機関です。

 さらにIAEAはこれまで、核燃料サイクル事業の推進も行ってきました。
 英仏の再処理工場からは原発の何千倍もの放射性廃液が垂れ流しになっています。これもIAEAが認めてきました。
 日本では、東海再処理工場で実施されてきました。今では青森県六ヶ所村で再処理工場が建設されています。
 六ヶ所再処理工場が稼働した場合、放射性物質は福島第一原発の何千倍もの量が排出されます。
 福島の汚染水がダメならば、六ヶ所の排水はその何千倍もあるのですから、当然ダメです。
 IAEAはこれら原子力の利用促進に基礎を置いた国連機関です。あくまでも原子力を利用する国や機関、組織や企業のために活動する機関です。

◎ 六ケ所再処理工場の操業と福島第一原発汚染水排出の関係

 日本政府が反対の声を踏みつぶしても、この汚染水を排出する理由は、今後行われる六ケ所再処理工場の操業開始を実施したいからです。
 「福島の復興」や「廃炉の実現」は何ら関係ありません。
 関係あるというのならば、福島県の人々や地元自治体の多くが反対しているのに強行することの説明がつきません。
 どなたか経産大臣でも総理大臣でも、そのことを明確に説明しているのを聞いたことがありますか?。

 福島第一原発の汚染水排出と共に、六ケ所村再処理工場の操業に対しても、世界が注目し、反対する必要があるのです。
 六ケ所村再処理工場は日本の青森県六ヶ所村にあり、これは福島第一原発と同じ太平洋に面しており、引き起こされる海洋汚染は福島第一原発と同じく太平洋から世界中に広まります。
 その量は福島の何百倍にもなるでしょう。トリチウムだけでも福島では年間22兆ベクレルが上限なのに対して六ヶ所再処理工場は9700兆ベクレルと、400倍をはるかに超えます。
 こんなものを認めてはなりません。

(*)核拡散防止と言いつつ、一方では米・露・英・仏・中の核武装は権利として容認し、さらにインド、パキスタンの核武装は核拡散防止条約外(両国とも加盟せず)のことだからと黙認し、イスラエルについては米国のごり押しでイスラエルが公式に認めていないことをもってこちらも事実上黙認。北朝鮮については最初は阻止するために1992年核合意などを取り決めて査察を行ったこともあるが、対米関係の悪化に伴いIAEAによる特別査察の実施を拒否した北朝鮮はNPTやIAEAからの脱退を表明し、それにより無効にされるという経過を辿り、核拡散についても中途半端な役割しか果たせていない。
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