[2023_07_23_02]時事エッセー・沈黙の声 37 “水の惑星”地球の敵になる日本 福島放射能汚染水の海洋放出(浅野健一2023年7月23日)
 
参照元
時事エッセー・沈黙の声 37 “水の惑星”地球の敵になる日本 福島放射能汚染水の海洋放出

 朝鮮新報連載に福島原発汚染水海洋放出で記事

 朝鮮新報(23年7月10日号、第4面)の〈時事エッセー・沈黙の声 37〉に<“水の惑星”地球の敵になる日本 福島放射能汚染水の海洋放出>という見出しの記事を書きました。記事は朝鮮新報電子版(有料)にも掲載されています。
記事の全文を掲載します。
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 岸田文雄自公政権が8月に強行を企む東京電力福島第一原発の敷地内に貯まる放射能汚染水の海洋放出を前に、国際原子力機関(IAEA)は4日、「放出は国際的な安全基準に合致する」と結論付けた包括報告書を公表した。
 岸田首相は同日午後、首相官邸で同日朝来日したグロッシ氏から報告書を受け取り、内外で放出反対の声があるなか、国際機関から「お墨付きを得た形」(朝日新聞)、「後ろ盾を得た」(共同通信)と演出した。グロッシ氏は「この結果は科学的かつ中立的なものだ。日本が次のステージに進む決断を下すのに必要な要素がすべて含まれている」とした。
 グロッシ氏は5日、福島県いわき市で漁業関係者らと会い、福島原発を視察。7日から、韓国、ニュージーランド、クック諸島を訪問する。「核の番人」とされるIAEAのトップが日本政府と東京電力の工作員になっている。
 4日の日本テレビ「news zero」は、多くの国でも「処理水」が海洋放出されていると伝えた。コメンテーターの落合陽一筑波大学准教授は「政府は報告書の内容を国内外に広報してほしい」と述べた。
 しかし、通常の原発運転で出る汚染水と、2011年の事故で溶け落ちた1〜3号機内の核燃料(デブリ)の冷却作業で発生する核汚染水とはまったく違う。事故後に出た原子力緊急事態宣言は約100年間解除できず、デブリ除去は手つかずの状態だ。

*国内外から反対の声

 中国外務省は4日夕、報道官談話を発表し、報告書は「海洋放出のための『通行証』とはならない」と反発した。中国は海洋放出について「安全なら工業用水などに使うべきだ」と主張してきた。中国は福島原発事件に伴い、福島など10都県からの日本産食品輸入を停止している。香港、マカオ両政府は放出が始まれば、新たな禁輸措置を発動する意向を表明している。
 韓国大統領府関係者は4日、「7〜9日に韓国を訪問するグロッシ氏の説明を直接聞き、判断する」と述べた。韓国の政権党・国民の力の広報担当者は4日、「最高の専門家が2年かけた調査で、結果を謙虚に受け止め」とコメント。一方、最大野党の共に民主党の国会議員は会見で「海洋放出を前提としており、中立性に欠ける」と主張した。韓国ギャラップが6月30日に発表した調査結果によると、海洋汚染が「心配だ」と回答した人が78%に上った。
 日本メディアは中韓の反発を強調するが、太平洋諸国フォーラム(PIF)が6月26日、海洋投棄について懸念を示す声明文を発表したことは伝えない。フォーラム加盟国はオーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー、サモアなど16カ国及び2地域。ヘンリー・プナ事務局長が「福島の処理された核廃液について」と題して公表した声明は、「日本の放射性廃棄物の太平洋排出計画は、健康と安全に及ぼす強い懸念があり、世界で放射性廃棄物を人為的、意図的に海洋へ排出する前例になる可能性がある。自国で貯蔵し廃棄する他の処理方法を探すべきだ」と訴えた。
 日本国内にも海洋放出に反対の声が強い。報道各社の世論調査でも、「賛成」は過半数には達しておらず、「反対」との差は数%だ。日本政府と東電は15年に「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と福島県漁業協同組合連合会に文書で伝えている。福島県漁連の鈴木哲二専務理事はIAEA報告書について、「想像の範囲内だが、そもそもわれわれが口を挟めるものでもない。これまで通り、福島の海で漁を続けることを海洋放出反対の意思表示と抵抗の証しとしたい」と話した。県漁連は放出設備の工事完了を受け、6月30日の総会で、「(海洋放出に)反対であるとはいささかも変わらない」とする特別決議を全会一致で採択している。全国漁業協同組合連合会(全漁連)も6月22日の総会で同様の特別決議を承認した。

*実行可能な方策を

 筆者は4日、原発はすべて廃炉にするしかないと主張する元京都大学原子炉実験所の小出裕章助教に取材した。小出氏は「今福島原発に溜まっている汚染水は危険だからこそ薄めている。海に流したとすると、それに含まれるトリチウムは海水に薄められて広範囲に拡散する。汚染を測定すること自体難しいだろうし、住民や漁民が魚介類を食べたところで、健康への影響は見えない。問題は、被曝による被害は他の原因で生じる病気と区別がつかないため、うやむやにされてしまうということだ」と話した。以下は小出氏への質問と回答。

―海洋放出をどう捉えているか。
 放射能汚染水問題は、安全問題だけで考えるのではなく、日本の原子力の死活問題であることを理解すべきだ。5、6月に韓国KBSテレビと中国中央テレビの取材を受けたが、韓国も中国も原発を止めるべきだと取材に対して述べた。影響を受ける国の民衆が反対してくれているのは、ありがたいことだ。

―IAEAに海洋放出について見解を示す権限はあるのか。公正な判断ができる機関か。
 IAEAは原子力を推進する原子力マフィアの総元締めだ。言ってみれば、やくざの大親分。子分のやくざが仕出かし、仕出かし続けている不始末の是非をIAEAに判断してもらうなど、元からばかげている。

―福島の核汚染水はどうすべきか。
 人間には放射能を消す力がない。同じく自然にも放射能を消す力はない。自分に力がないからと言って、放射能を環境に流しても、環境もどうしようもない。放射能は生命体にとって有害で、唯一できることはできる限り長く閉じ込め、放射能が自分の寿命で減っていってくれるのを待つしかない。福島の汚染水は、まずはそれが増えることを防ぐこと、つまり原子炉建屋への流入を止めればいいのだ。完璧にそれができないならタンクを増設することなど容易なことだし、一部の反原発派が言っているようにモルタル固化することだって容易だ。
 実行可能な方策が山ほどあるのに、国と東電がそれを採用しないのは、日本では原発の使用済み燃料はすべて再処理すると決められており、青森県六ケ所村の再処理工場計画があるからだ。再処理とは使用済み燃料を高温の濃硝酸に溶かして、プルトニウムを分離する作業。その過程でトリチウムは全量が水に移り、環境に放出される。福島の汚染水を海に流してはいけないということを認めてしまうと再処理工場の運転もできなくなり、日本の原子力が根本から崩れてしまうからだ。
 岸田政権の原発推進政策は、フクシマ事故をなかったことにするもので、「今だけ、カネだけ、自分だけ」の原子力マフィアの延命策だ。

*共存ではなく脱原発へ

 7月2日、千葉県我孫子市で小原浩靖監督の「原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち」の上映会&トークがあった。会場の壁に、「福島を忘れない!」「原発政策の大転換を許さない!」というスローガンが掲げられていた。小原氏は約30分講演した後、質問を受け付けた。私の質問に対し小原氏は、「日本では、政府とメディアが処理水と呼ぶので、反対運動の中でも処理水問題という人もいる。言葉のすり替えが巧妙、言葉のマジックだ。岸田政権は勝手に何でも強行する。なし崩し的に進める海洋放出はあってはならない」と答えた。
 我孫子の市民はこの映画を広め、脱原発の声を広げようとしている。岸田政権が海洋放出を強行すれば、アジア太平洋の市民が原発と人類は共存できるかを日々問うことになるだろう。
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以上が朝鮮新報の連載記事だ。

 ここで、この記事の取材で、小出裕章氏に送った質問書と、小出氏からの回答の全文を掲載したい。

 私が7月4日にメールで送った質問書は次のとおり。
[ 小出裕章様
 長い間、ご無沙汰しています。真夏のような気候ですが、いかがお過ごしでしょうか。前に、小出さんの今後の活動についてのメールをいただき、小出さんが決められた生き方に、感銘を受けました。励まされました。
 今も、各地で講演などをされ、松本でのスタンディング活動なども、SNSなどで拝見しております。8月6日新居浜と7日松山で日本基督教団四国教区東予分区社会部の主催で講演会があると知って、参加したいと考えています。8月4日から6日まで広島で取材(サミットで不当逮捕された学生2人のことなど)する予定で、7日の松山の講演会に参加できればと思っています。森牧師にFBのメッセンジャーで連絡しました。
 私は、下咽頭がんの手術から3年3ヵ月が経ちました。この間、小出さんには闘病、リハビリ中に、何度も励ましのメッセージを送っていただきました。心より感謝します。
 先週の5月28日(水)に国立がん研東病院で検診があり、21日に受けたCT検査・内視鏡検査で異状なしで、安心しています。転移などがなくて生き延びました。去年2月から開始した、パソコンのAI音声、パワーポイント、電気式人工喉頭を使っての「講演」も時々やっています。電話での取材も人工喉頭でなんとかできるようになりました。趣味のテニスも、人生で最も長い時間やっています。主治医に「この手術を受けた人で、一番元気です」と言われました。「社会復帰されたのが医師としてうれしい」とも言われました。声帯を失くしても、こんなに動き回れるとは思っていませんでした。
 今日は、小出さんに、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)の機関紙、朝鮮新報での連載記事へのコメントのお願いがあり、メールをさせていただいています。朝鮮新報の記者(平壌で13年にお会いした方です)が、私が失声後もSNSで発信しているのを読んで、20年7月から、〈時事エッセー・沈黙の声〉の連載(毎月1回)を載せてくれています。この連載・第37回で、東京電力福島第一原発の核汚染水海中放出について記事を書いています。連載の過去の記事は私のブログ「浅野健一のメディア批評」に載せています。
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/31904449.html
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/32140969.html
 また、「紙の爆弾」などでも記事を書く予定です。
 報道によりますと、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が今朝日来日し、林芳正外相と会談し、共同記者会見を行っています。7日まで滞在します。グロッシ氏は会見で、「福島第一原発をめぐっては現在、重要な局面を迎えている。本日午後、IAEAが2年以上かけて取り組んできた原発にたまる処理水についての包括的な評価を盛り込んだ報告書を提出することができ、光栄に思う」(NHKニュース)と述べました。「アセスメントを伝え、総理と議論する」とも言っています。
また、IAEAはグロッシ氏が明日、福島第一原発を訪れ、現地事務所を開設すると明らかにしています。
 岸田政権は<国際機関からの科学的な評価を後ろ盾として、国内外への安全性の説明を強化する方針。「夏ごろ」とする放出開始時期の判断は大詰めを迎える>(共同通信)とされています。
 韓国政府は今日、グロッシ事務局長が7〜9日に韓国を訪問すると発表しました。
 岸田氏は5月7〜8日に韓国を訪問し、尹氏との首脳会談で、福島第一原発放射能汚染水の海洋放出に関し、韓国の専門家らによる視察団の現地への派遣に合意。韓国の視察団は21日に来日、23、24両日は福島原発を訪問し、汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)や、「処理水」を保管するタンクを中心に確認しました。
 日本の報道各社は、「処理水」(Treated Water)という用語を使っていますが、尹氏は首脳会談でも従来通り「汚染水」(Contaminated Water)と表現。韓国の政府・メディアは今も「汚染水」(最近、汚染処理水という言い方も)と表現しています。
 韓国では、市民・労働者・政権反対党政治家らが様々な反対運動を展開しています。ネットメディアは、日本政府がIAEAなどをカネで支配していると報じています。

 一方、日本のメディアは相変わらず、「処理水」と呼び、汚染水問題も「風評被害」と揃って報じています。

 共同通信は6月30日に配信した<福島第1原発の処理水>という見出しの「とはもの」記事でこう書いています。
 <福島第1原発の処理水 福島第1原発1〜3号機では溶け落ちた核燃料(デブリ)への注水と、建屋に流れ込む地下水や雨水が混ざり、放射性物質を含む汚染水が発生し続けている。汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化したものが処理水だが、放射性物質トリチウムは取り除けず、敷地内のタンクに保管している。6月22日時点の保管量は約133万トンで容量の約97%。東電の試算では2024年2〜6月ごろにタンクが満杯になる。東電はタンクの増設はしない方針。>
 また、6月27日にはIAEAについてこう書いています。
 <IAEA 国際原子力機関の英語「INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY」の頭文字を並べた略称。「アイエーイーエー」と読む。原子力の平和利用を促進し、軍事転用を防止する国連の関連機関で、「核の番人」とも呼ばれる。2005年にノーベル平和賞を受賞した。東京電力福島第1原発事故では発生当初から対応に当たり、日本政府の依頼を受け、処理水海洋放出の安全性を検証している。>

 日本では、海洋放出に反対しているのは中国と南北朝鮮だけのような報道です。地元の漁協は反対方針を変えておらず、アジア太平洋諸国の人たちも反対しています。原発マフィアと一体になった御用マスコミのインチキな「安全」報道があっても、報道各社の世論調査でも、「賛成」は過半数には達していません。「反対」との差はそうありません。
 小出さんは前に、汚染水は各地にある東電の原発などの敷地の中で保管すべきと発言されていました。菅政権が海洋放出方針を決め、IAEA報告書をあたかも公正中立の判断と宣伝して、夏にも強行という構えです。

 小出さんにお聞きします。
 1 海洋放出をどうとらえていますか。
 2 IAEAは海洋放出について見解を示す権限はあるのでしょうか。IAEAは原発問題で、公正な判断ができますか。
 3 福島の核汚染水はどうすべきでしょうか。
 4 岸田政権の原発推進政策に無批判な日本のキシャクラブメディアについてどう思いますか。

 私の記事は2800字です。それぞれの質問に、短くコメントをいただけると幸いです。新報の記事は7日朝が校了です。8日に電子版で掲載され、紙面は10日付です。
 お忙しいところ、勝手なお願いですが、明日中にご返事をいただければ助かります。どうかよろしくお願いします。
 暑さが厳しくなりますが、どうか、お体を大切になさってください。 ]

 小出氏からすぐに返信があった。

[ こんにちは。
 ご無沙汰しておりました。
 お元気でご活躍のご様子、ありがたく思っています。
 浅野さんが声帯を切除しながらも、精力的にご活動を続けてくださっているのに、私は「仙人への道」を一歩一歩進めています。
 誠に申し訳ないことと思います。

 さて、福島原発の放射能汚染水についてご質問いただきました、
 その件では、今年1月に福島県三春町での講演会に行きました。
 ご存知かもしれませんが、その時の動画が以下のURLで流れているようです。

https://www.youtube.com/watch?v=rrXxlQuR8io

 その後、韓国KBS放送の取材を受けました。
 その時に使ったパワーポイントファイルを添付します。

 今福島原発に溜まっている汚染水を海に流したとすると、それに含まれるトリチウムは海水に薄められて広範囲に拡散すると思います。
 汚染を測定すること自体難しいでしょうし、住民や漁民が魚介類を食べ方たところで、健康への影響は見えないでしょう。
 問題は、被曝による被害は他の原因で生じる病気と区別がつかないため、うやむやにされてしまうということです。
 福島の汚染水の問題は、今それが安全か否か(被曝に安全などありませんが・・・)ではなく、スライド25に書きましたように、それは日本の原子力の死活問題に関わっているということです。
 また、スライド22に示したように、今、福島の汚染水の海への放出を許し、原子力を延命させてしまうなら、将来もっと大量のトリチウムが海に流されることになります。
 それを防ぐためにも、福島にある汚染水を海に流させないようにしたいと私は思います。

 以下、ご質問項目に個別にお答えします。

 1 海洋放出をどうとらえていますか。

 上に記しました通り、放射能汚染水問題は、安全問題だけで考えるのではなく、日本の原子力の死活問題であることを理解してほしいと思います。

 2 IAEAは海洋放出について見解を示す権限はあるのでしょうか。IAEAは原発問題で、公正な判断ができますか。

 IAEAは原子力を推進する原子力マフィアの総元締めです。
 言ってみれば、やくざの大親分です。
 子分のやくざが仕出かし、仕出かし続けている不始末の是非をIAEAに判断してもらうなど、元からばかげています。

 3 福島の核汚染水はどうすべきでしょうか。

 人間には放射能を消す力がありません。
 同じく自然にも放射能を消す力はありません。
 自分に力がないからと言って、放射能を環境に流しても、環境もどうしようもありません。
 放射能は生命体にとって有害で、唯一できることはできる限り長く閉じ込め、放射能が自分の寿命で減っていってくれるのを待つしかありません。
 福島の汚染水は、まずはそれが増えることを防ぐこと、つまり原子炉建屋への流入を止めればいいのです。
 完璧にそれができないならタンクを増設することなど容易なことですし、一部の反原発派が言っているようにモルタル固化することだって容易です。
 実行可能な方策が山ほどあるのに、国と東電がそれを採用しないのは、福島の汚染水を海に流してはいけないということを認めてしまうと、六ケ所再処理工場を動かすことができなくなり、日本の原子力が根本から崩れてしまうからです。

 4 岸田政権の原発推進政策に無批判な日本のキシャクラブメディアについてどう思いますか。

 岸田政権の原発推進政策は、フクシマ事故をなかったことにするものですし、「今だけ、カネだけ、自分だけ」の原子力マフィアの延命策です。
 日本のメディアがそのことをきちんと報道すべきですが、浅野さんがずっと闘ってこられたように、日本のマスコミは完全に腐ってしまっています。
情けないことだと思います。

 以上、取り急ぎ、ご返事します。
 不足であれば、再度ご連絡ください。

 暑い日が続いています。
 ご自愛の上、ご活躍ください。

 8月6日の松山での講演会においでくださるとのこと、ありがとうございます。
 久しぶりにお会いできることを楽しみにします。

               2023/7/4  小出 裕章 ]

 小出さんが添付してくれたパワーポイントのスライドから引用する。

 [ 原子力にしがみつく日本は、フクシマの放射能汚染水を海に流す以外にない
 福島の事故で熔け落ちた燃料は約250トン、それに含まれているトリチウムの量は、約3.4ペタベクレル。(ペタは1000兆倍という意味。)

 一方、日本では原発の使用済み燃料はすべて再処理すると決められている。福島原発が事故を起こさなければ、使用済み燃料になった段階で再処理工場へ送られる予定だった。

 再処理とは使用済み燃料を高温の濃硝酸に溶かして、プルトニウムを分離する作業である。その過程でトリチウムは全量が水に移り、環境に放出される。

 六ヶ所村に計画されている再処理工場がもし運転を始めれば、1年間に800トンの使用済み燃料を処理し、毎年18ペタベクレルのトリチウムを環境に放出することで原子力が成り立っている。

 もし、福島のトリチウムを海に流してはいけないということになれば、再処理工場の運転もできなくなり、日本の原子力は崩壊する。そのため、漁民がどんなに反対しようが、世界の国がどんなに抗議しようが、日本というこの国は放射能汚染水を海に流す。(もちろん、私がそれを是としているわけではない。) ]

[ 韓国KBSテレビ取材       2023年6月20日(火)

 福島第一原発に溜まっている水は、れっきとした放射能汚染水
 日本人の大人には原子力の暴走を許し、フクシマ事故を引き起こした責任がある。自分が被曝しても、子どもたちを被曝から守るのが大人の責任
 原子力マフィアに再び原発を動かさせないためにも、フクシマの汚染水を流させてはいけない ]

[ 地球は水の惑星
 日本では、これまで57基の原子力発電所が建てられた。そのすべては自民党政権が「安全性を確認した」として建てられた。そして、電力会社、原子力産業、ゼネコンをはじめとする土建集団、学会、裁判所、マスコミ、すべてがグルになって原子力を進めてきた。もちろん、福島第一原子力発電所も「安全性を確認した」として建てられたが、事故を起こした。原子力マフィアには重大な責任があるが、誰一人として責任取っていない。その上、加害者・犯罪者である彼らは被害者に被曝を強要している。日本が「法治国家」だというのであれば、彼らを犯罪者として徹底的に処罰する必要がある。 ]

 私は7月5日、追加で質問事項を送った。以下は、小出氏の回答。

[ おはようございます。
 メール、頂ました。
―教えていただいた、韓国KBSの取材(6月20日)で、KBSは小出さんのインタビューを放送しましたか。

 取材を受けたのは6月20日ですが、放送されたかどうか、連絡を受けていません。

―韓国や朝鮮民主主義人民共和国、アジア太平洋の専門家や民衆が海洋放出に反対していることをどう思いますか。

 私は「国」というものが嫌いです。
 韓国KBSテレビの取材の前には中国中央TVの取材も5月に受けましたが、韓国も中国も原発を止めるべきだと取材に対して述べました。
 中国中央TVが私の取材を放送したかどうかも連絡を受けていません。
 それぞれの国の民衆が汚染水の海洋放出に反対してくださっていることはありがたいことと思います。

               2023/7/5  小出 裕章 ]
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