[2025_01_21_05]パブコメを出そう 第一回 第7次エネルギー基本計画のここが問題 (1月26日が締め切りのパブコメ) 極めて偏った人選による会議は原発推進の声ばかり 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2025年1月21日)
 
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パブコメを出そう 第一回 第7次エネルギー基本計画のここが問題 (1月26日が締め切りのパブコメ) 極めて偏った人選による会議は原発推進の声ばかり 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 04:00
 第7次エネルギー基本計画(案)
 パブコメ送信先
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620224019&Mode=0
受付締切日時 2025年1月26日23時59分

(「GX2040ビジョン(案)」に対する意見公募は
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595224049&Mode=0

 1.エネルギー基本計画

 2024年12月27日、エネルギー政策の基本文書「エネルギー基本計画」(以下、エネ基)の次期改訂「案」が公表され、パブリックコメントにかけられている。
 エネ基は、3年をめどに見直すことになっている。
 今後のエネルギー需給について策定されるこの計画の決定は2025年夏。
 その結果をもって2025年にブラジル・ベレンで開催される予定のCOP30(第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議)で2035年の二酸化炭素削減目標が議論される。
 この案では、第4次(2012年)から第6次(2021年)まで記載されていた「原発依存度の可能な限りの低減」が消え、原発の利活用から新増設へと180度方針転換した。
 原案を作る経産省の有識者会議「総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会」は、2024年5月から議論を開始しているが、すでに政府は、岸田文雄前首相が座長を務めてきた「GX実行会議」で、「GX2040ビジョン」案が作成され、同時期にパブリックコメントにかけられている。第7次エネルギー基本計画もこの「ビジョン」と整合するように改訂されることになる。

 2.実現性のない原発計画

 現在の弟6次エネ基は2021年に策定された。電力供給力は2030年時点で再生可能エネルギー36〜38%、原子力20%、火力40%(天然ガス20%、石炭19%・、水素・アンモニア1%程度)と想定していた。
 しかし実現できる可能性は全くない。
 特に、原発が20〜22%占めるためには、概ね25〜27基程度が稼働していなければならない。その出力は2200万kw程度が必要。
 しかし現在再稼働しているのは14基、約1260万kw。
 新規制基準適合性審査を通過した原発全てが動いたとしてもプラス3基で17基。1700万kw、全電力の17%程度に過ぎない。あと5年で再稼働ができそうな原発は他に存在しないから、もはや成り立たない目標である。
 現在パブコメにかけられている第7次エネ基では、原子力の利活用という方針に大転換する。2040年時点で原発は2割、火力が3から4割、再生可能エネルギーが4から5割を想定している。電力需要は年間1兆1千から1兆2千Kwhとしているから、少なくても原発では2200万kwh発電する必要がある。設備利用率を80基に相当する。
 現在再稼働している14基、それ以外に19基が再稼働しなければ届かないのだが、何処にそんな原発があるのか。
 14基の他に新規制基準適合性審査を通過した3基を加えても17基、現在審査中の7基を加えても合計で24基、2370万kw程度だ。
 建設中の大間と島根3が稼働しても26基、2780万キロワット程度で、それでも足りない。
 さらに新規制基準適合性審査を受けていないものも動員すれば届くとの見積もりだろうが、老朽化し(柏崎刈羽)、地震に被災し(志賀1、女川3、柏崎刈羽)、海水侵入で破損した(浜岡5)ものばかりだ。
 事故の危険性を全く無視して33基全部動かせば計算上は2割に達するが、現実にこれらが全て再稼働することはない。
 2040年の原発3140万キロワットは実現不可能だ。

 3.エネ基で議論されている主張

 「既設の原子力発電所の再稼働を着実に進める。また、今後の電力需要増に応えるには、次世代革新炉の新増設・リプレースに向けた取り組みを加速する。使用済み核燃料や放射性廃棄物の課題に対処するため、核燃料サイクルの確立や最終処分場の確保が必須。事業者にも不断の努力を求めつつ、国が責任をもって取り組むべき。」GX実行会議での十倉雅和経団連会長の意見だ。
 電気事業者や財界にとどまらず委員の多くはこの意見に同調しており、GX実行会議の場は原発推進の声で埋め尽くされている。
 これと同じなのは第7次エネ基の策定作業が進む会議での議論で、まるでコピーのような文書ばかりが出てきている。エネ基の案は、ほとんどこの通りの内容になるのも当然だ。
 極めて偏った人選により行われる会議は、民主的でも客観的でもなく、推進したい側の勝手な主張で作られるだけの「原発推進方針」である。
 ベースにある考え方は以下のようなストーリーに基づく。
 「2040ないし2050年頃には電力需要が増大し、今の発電能力では足りず電力不足に陥りかねない。」
 特にデータストレージセンターやAI利活用による電力不足は日本の成長産業を絞め殺しかねず、せっかくのチャンスを棒に振るとして、電力供給力の増強すなわち、「原子力を最大限活用していく方針を明確に示す必要がある。」(経団連「エネルギー基本計画の見直しに向けた提言」より)と主張している。
 薄っぺらい産業界の、およそ実現しない「電力設備不足」議論を元に、再生可能エネルギーでは足りないので原発をとの、昔から続く誤りだらけの前提に基づく方針に、何度同じ誤りを繰り返すのかと、憤りを感じる。

 4.原発「可能な限り低減」が消えたもとで

 政府は福島第一原発事故の教訓として2014年の第4次エネ基から2021年の第6次エネ基まで原発依存を「可能な限り低減」するとしてきた。
 しかしこうした表現の元でも原子力は常に推進されてきた。特に核燃料サイクル政策は動く可能性が低いにもかかわらず推進する方針は最初から一貫している。
 原発の利用を低減するのならば再処理は最初に止めるはずだ。プルトニウムを取り出しても燃やす原子炉がなくなるのだから、国際公約として「余剰プルトニウムは持たない」としているのに、燃やす原発がないことになる。ところが核燃料サイクル事業は中止しないことから、原発依存の低減は二枚舌に他ならなかった。
 つまり原子力政策は見せかけの「原発依存の低減」のもとでずっと「推進」されてきたとも言える。
 その中でも犯罪的組織は経産省だ。責任官庁として「可能な限り低減」させるべき具体的な計画は何も策定しないどころか、計画的かつ段階的に原発の利活用に向けた布石を打ってきた。規制庁と規制委も40年の運転機関制限を炉規法で定めていながら、例外的といいつつ20年の延長を認める規定のもとで合計60年運転を既成事実化した。
 2021年の脱炭素電源法(GX電源法)で運転期間の規定を規制委の規制法から経産省所管の電気事業法に移したことで、ついに微かな歯止めさえなくなり全ての原発が60年運転許可を得ることになる法律改訂が強行された。
 規制委が行うのは「長期管理計画」の認可だけで、原発の運転延長を認める権限は経産省に移った。しかも運転延長の根拠は、利用政策の観点からの認可要件が法定化されている。

 具体的には次の通り。
 「その発電用原子炉が、平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。」「炉規法に基づく発電用原子炉の設置許可の取消や運転停止命令、長期施設管理計画の認可制度において不認可の処分を受けていないこと。」「延長しようとする運転期間にその発電用原子炉を運転することが、非化石エネルギー源の利用促進を図りつつ、電気の安定供給を確保することに資すること。」「その発電用原子炉に係る発電事業に関する法令遵守の態勢を整備していることその他事業遂行態勢の見直し及び改善に継続的に取り組むことが見込まれること。」「延長しようとする運転期間が20年を超える場合、その20年を超える期間が以下の運転停止期間を合算した期間以下であること。

 1.安全規制等に係る法令等の制定や改正、運用の変更に対応するため、運転を停止した期間。
 2.行政処分により運転を停止した場合には、当該行政処分の取消し・無効等により、運転を停止する必要がなかった期間。
 3.行政指導に従って運転を停止した期間。
 4.仮処分命令を受けて運転を停止した場合には、当該仮処分命令の取消し等により、運転を停止する必要がなかった期間。
 5.他の法令による処分であって取消しが確定したもの等、予見し難い事由に対応するため、運転を停止した期間。」である。

 これで経産省の審査の結果、運転延長が認可されない原発が出現するとは考えられない。60年を超える期間の運転延長では、事業者が作為的に審査期間を引き延ばして運転時期を調整することさえ可能になる規定だ。
 規制委が審査していた新規制基準は、40年を超えた原発は20年の延長申請をしていなければ自動的に廃炉になった。
 ところが新しい制度ではタイムアウトしないことになったため、いかなる老朽原発でも動かせる余地が残る。
 例えば、柏崎刈羽原発は1号機が1985年9月18日に営業運転を開始したことから今年の9月には40年を超える。
 炉規法の規制ならば、この時までに再稼働の認可を受け、さらに20年の延長申請が通っていなければ廃炉になるはずだった。
 ところが今年6月に施行される電気事業法では、こうしたタイムアウトの規定がないため、いつでも「再稼働の申請」を出すことが出来、さらに炉規法では「長期管理計画」が許可されれば稼働できる。
 経産省の「再稼働の申請」が却下される可能性は先に見たとおり却下される可能性はないから、あとは規制委の判断だけだが、時間に制約がないため許可されるまでいつまでも「長期管理計画」を申請し続けられる。
 安全規制は規制委で行うとしているが、現実的には規制委が安全上の理由で原発を止めたケースがないことから、長期管理計画が認められない原発が出てくる可能性は低い。安全側に立った規制ではない。

 5.「脱炭素電源」の欺瞞性

 原発の利活用を定めた2021年の「GX脱炭素電源法」。第7次エネ基の検討時には既に存在した原発利活用政策を定めた法律が、このような名称であることが欺瞞と詐術を表すものだ。
 GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは「脱炭素」の方針を意味するが、発電時に二酸化炭素を出さないという点だけを取り上げて「ゼロエミッション電源」などと原発を規定している。
 ゼロエミッションとは本来「再利用などを通して廃棄物を限りなくゼロにする」という意味だが、放射性廃棄物を大量に発生させる原発に使っているという点だけでデタラメだ。
 「カーボンニュートラル」という言葉も飛び交うが、化石燃料を燃やすタイミングをことさら問題視するために使っている用語であり、原発が極めて大きな環境汚染源であることを見えなくさせる「言い換え」だ。
 本気で達成するための議論ではなく、原子力推進体制を再構築することを目的に「あらゆる政策を動員する」ために用いられる。
 念のために付け加えるならば、原発はウラン鉱山から鉱石を掘り出し、精錬し、生成し、濃縮し、加工し、組み立てて原子炉に入れるまでで莫大な化石燃料を使う。
 さらに使用済燃料の冷却、保管、貯蔵、処分でも燃料を使い、再処理など行おうものならさらに大量の燃料を使う。これらのトータルが正確に評価されていないのに「原発は二酸化炭素を出さない」または「少ない」との評価は正しくない。
 GXとは、化石燃料中心の産業や社会構造を、クリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り組みのこと。地球温暖化による環境課題を解決し、持続可能な社会を作ることを目的とするとの考え方だ。
 原子力開発の暗部を知らなかった黎明期に「無限に安定的に供給でき廃棄物も少ないバラ色のエネルギー」として原子力を想像していた時代ならばいざ知らず、度重なる原発事故と開発による放射能汚染の現実を知った今、「クリーンエネルギー」と言った時点で、完全に破綻した考えである。
 二酸化炭素削減と放射性物質汚染はトレードオフの関係にはならない。

 6.「次世代革新炉」と称する原発の正体

 第7次エネ基では「次世代革新炉の開発・設置」と記載している。
 これは震災後に比較的早期に再稼働をしている原発もあることから、「2040年より前に既設炉のうち300万kW以上が運転期間60年に到達し、その後に既設炉の脱炭素電源としての供給力を大幅に喪失していく」から「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組む」としている。特に関西電力と日本原電の原発を念頭に置いたものだと考えられる。
 運転期間を最大延長しても2040年頃には期限が切れる関電美浜3、高浜1、2や日本原電東海第二、廃炉確実の敦賀2の対策として、PWR型を2基、敦賀原発3・4号機として敦賀市に建設することなどを想定している。
 敦賀原発3・4号機はウエスチングハウス社製のAP1000型で計画されており、この建設については原電が震災前に「設置許可申請」を出していた。まだ設置許可が下りていないが今後推進すると想定される。
 しかしAP1000など次世代炉は極めて高価である。
 AP1000は米国でボーグル3、4号機としてスリーマイル島原発事故後米国で初めて運転開始したが、完工は7年遅れ、費用は二基合わせて4兆3千億円もかかっている。
 さらにフランスのアレバが開発したEPRは「次世代革新軽水炉」と呼ばれるものだが、既に世界で6基建設を進め、そのうち中国で建設された2基やフィンランドのオルキルオト3号機が運転を開始している。
 しかし中国以外は、いずれも建設期間が大幅に伸び、中には訴訟も絡んで極めて高価な原発になっている。
 オルキルオト3号機は、2005年に建設が開始されたものの運転開始は2023年4月。総額1兆7千億円にも上る費用がかかり、さらに運転直前に3台全ての二次系給水ポンプの羽根車に亀裂が生じる欠陥も明らかになった。
 フランスのフラマンビル3号機もまた2012年運転開始予定だったが、2024年9月にようやく臨界に達する。建設費用は2兆円を超える。
 イギリスのヒンクリーポイントCは、160万kw級2基を計画しているが合計で約5兆〜5兆1400億円に達するという。運転開始時期も1基は2027年頃を想定しているが、こちらも大幅に遅れている。
 既に稼働している中国の台山1・2号機は、運転直後に1号機の燃料損傷が見つかった。しかし中国は直ぐに原発を止めず、運転を継続しようとしたため、EPRを建設したフランス・フラマトム社が中国の頭越しに燃料損傷が起きていることを米国のメディアにリークした。批判が集まったこともあり、中国は運転を止めて損傷燃料を交換した。
 次世代炉と称する原発はメルトダウンしたデブリを受け止める「コア・キャッチャー」など高度な安全対策が必須であることもあり、極めて高額だ。
 これらの投資は、再生可能エネルギーシステムに向けるべきとの批判が世界で高まっている。

 7.今するべきは電力システムの改革
 電力システムを適正な送電の仕組み作りと再生可能エネルギーの活用を第一とする仕組みへ転換する

◎ 原子力業界にとって「電気が足りなくなる」議論はまさしく「福音」である。
 電力需要が右肩下がりの今は、「電気が足りないから原発を」と主張しても響くわけがない。
 しかし「今」ではなく「将来」足りなくなるという主張は立証の困難性から「専門家」と称する人々が口々に言い出せば「真実」(または確からしい話)として大々的に報道され「事実」とみなされてしまう。第7次エネ基では、こうした議論が横行している。実際にはどうなのか。
 電力中央研究所とは、まさに原子力ムラの「専門機関」なのだが、この将来推計でさえ簡単にまとめれば「2050年は今の25%増しから現状よりやや減少する」まで幅があるという結果だ。
 真ん中をとっても現状から15%程度増である。2050年は今から26年も先の話。年率換算で0.5%増に過ぎない。最大推定でも年率1%以下の増加だ。これくらいならば節電で十分乗り切れる。
 2011年から現在までは、少子高齢化と省エネの進展で年率1%ほど減少し続けていることから、何の対策もしなくても増えない可能性のほうが高い。
 しかし何で電力を賄うのか考えるとき、再生可能エネルギーの不安定さと地域偏在は確かに大きな課題だ。

◎ 今すぐに必要なのは、電力システムの更なる改革と増強である。
 送電網を既存の電力会社から切り離し、公正で公平な公的機関と民間企業体の合同組織(ただし大電力及び関連会社は除外)に移管するべきだ。
 現在の電力網は、巨額の維持管理費用がかかることを名目として9電力会社が維持している。これら設備の規模や使用権限については電力会社が一元的に握っており不透明だ。
 供給力に十分な余力があるのに再生エネルギー会社の送電を拒絶することも起きている。これは電力会社の電力供給計画に、動いていない原発の容量を入れていたりすることが原因の一つである。
 また、電気を送る費用(託送料金という)を電力会社が再エネ会社に請求する際にも、単に送電網の維持管理費用だけでない費用が組み込まれている。
 この託送料金には送配電部門における人件費、設備修繕費、減価償却費、固定資産税のほか、電源開発促進税、賠償負担金、廃炉円滑化負担金等が含まれている。
 原発費用を組み込む典型的な例が「使用済燃料の再処理費用過去分(2020年まで)」や「廃炉円滑化負担金」である。原発を持ったこともない再エネ企業などに賦課するのは理不尽以外のなにものでもない。
 こうした構造をやめて、送電システムを現在の電力会社から新たな機関に委譲する。(念のために付け加えると、対価を支払い買い上げるということ)
 ただしこの機関では維持管理等の作業はできないので、既存の電力会社に所属する職員や下請け企業群を別会社として独立再編させる。
 これには既存電力の資本も経営者も入らない。
 電力供給を専業とする会社である。運営は完全公開性で、財務諸表だけでなく、あらゆる増強計画も公表することが必要だ。
 電力システムを適正な送電の仕組み作りと再生可能エネルギーの活用を第一とする仕組みへ転換する。

◎ 特に北海道や東北の風力と九州の太陽光等、地域偏在性が高いものを大消費地に送る仕組みとして海底高圧直流送電システム(日本海側と太平洋側に2つの幹線)を構築することが必要だ。これには数兆円かかる。
 しかし原発に投資するよりもはるかに魅力的だろう。
 これにより北海道から九州までの需給バランス調整ははるかに容易になる。東京が逼迫しているのに九州で太陽光が余っている…という状況にはならない。
 また、北海道胆振東部地震のような自然災害でブラックアウトを引き起こすリスクも大幅に低減できる。
 南海トラフの地震で西日本の発電所が壊滅的打撃を受けても東日本から大電力を送ることができる。

 8.徹底した省エネ・節電こそ最大の対策

◎ 第6次エネ基では年間の電力消費量について2050年では30〜50%も増えるのに2030年までは10%以上減るという、呆れるほど矛盾した見通しを出している。電気自動車、ストレージ(情報蓄積装置)、生成AIなど、新たな電力消費産業の進展により電力消費量は増加するというのが政府の基本的認識のはずだが、どうして2030年で大きく減る予想なのか。
 これは再生可能エネルギー電源比率および原子力発電比率を極めて高く設定するトリックとして、電力消費量の分母を小さくする偽装を用いた。
 第7次エネ基では、もはや「偽装」ではなく、現実に2040年および2050年の「電力消費量見通し」を引き下げなければ、いわゆる「目標値」を達成できないことになる。
 分母を減らすということは消費電力量の大幅な削減、すなわち省エネしか方法はない。
 結局2040年の電力需要を「1兆1千億から1兆2千億kwh」としている。もちろん大きな幅はあるが、現状の「9000億kwh」からは最大3割増しとしている。

◎ 再エネの導入規模も大幅な上方修正が迫られることになる。この場合、大量の再エネを安定供給するため、2つの施策が必須となる。
 1つは既に述べた広域連系の拡大、もう一つは貯蔵システムの構築だ。
 結局、将来は再エネの拡大しか道はないことは明らかだ。
 再エネはどうしても出力変動を免れない。そのため貯蔵システムの構築以外にも電力のバックアップシステムが必須となる。まだ火力の役割があるとしたら、この点である。
 また、バックアップを従来の蓄電池に依存するのは不安定要因がつきまとう。
 価格の面や供給力にはまだ限界があり、さらにレアメタル資源の偏在、国際情勢に大きく左右されること、今後、蓄電池市場が高騰することも考慮しなければならない。
 そこで、再エネが主力となりバックアップの電源が安定運営できるまでは火力によるバックアップが不可欠になる。

◎ その火力はガス火力。エネルギー効率を85%以上に高め、温排水や二酸化炭素排出を極限まで減少させる技術が必須になる。
 廃熱も回収し使い尽くすシステムだ。この技術は世界中で必須になる。日本が海外に売り込める技術にもなる。
 第7次エネ基において、政府・経産省は、原発の再稼働と新増設を含むGX法の完全反映を目指す。
 先に述べたとおり、エネ基を議論している資源エネルギー庁の「基本政策分科会」では原発推進意見のオンパレード。その前提としての電力需要増の議論が席巻している。
 これに対して実行可能で最も確実な政策は、徹底した省エネ・節電を行うことである。
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