[2025_04_24_06]高レベル貯蔵30年 搬出先未定の廃棄物増 再処理事業で新たに発生 識者「保管方法 複数提示を」 知事「残り20年結論を」 「出口戦略」国、事業者に要求(東奥日報2025年4月24日)
 
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高レベル貯蔵30年 搬出先未定の廃棄物増 再処理事業で新たに発生 識者「保管方法 複数提示を」 知事「残り20年結論を」 「出口戦略」国、事業者に要求

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 日本原燃が2027年度の操業を目指す六ヶ所再処理工場(六ヶ所村)では、使用済み核燃料の処理によって高レベル放射性廃棄物も新たに生じる。最終処分先が未定のままでは、搬出先が不透明な廃棄物が村にたまり続けることになる。識者は原子力事業者が県や村と約束した搬出期限に、最終処分場の完成が間に合わない場合を見据え、「具体策を複数の選択肢で示すことを検討すべき」と指摘する。 (佐々木大輔) 高レベル廃棄物は海外からの返還分とは別に、六ヶ所再処理工場が操業すれば高レベル廃液が出て、27年度以降、ガラス固化体として年間最大千本が新たに生じる。過去の試験で発生した346本と合わせ、工場内で保管する見通し。
 返還分と違って貯蔵期限は未定。県は「操業前に事業者らと確認することになるだろう」(担当者)とする。原子力発電環境整備機構(NUMO)によると、国内の原発などで保管中の使用済み核燃料を全て固化体に換算すれば、六ヶ所村などで貯蔵中の分を含めて約2万7千本相当に及ぶ。
 海外返還分を村内で管理する一時貯蔵施設は、再処理工場と設備の一部を共有。固化体返還は16年を最後に中断中だが、工場が原子力規制委員会の審査をクリアし完成すれば、返還輸送の再開にもめどが立つ。英国には固化体約380本分が未返還のまま残る。
 1995年4月に村へ初搬入した返還分の貯蔵期間は「30〜50年間」のため、26日で期限が残リ20年を切る。期間を決めた当時、村助役だった橋本勲さん(85)は「再処理工場が動けば(廃棄物が出て)『1年目』がまた始まる。処分場が完成せず、村から搬出されなくても(廃棄物の貯蔵は)繰り返される」と複雑な表情を浮かべた。
 最終処分問題に詳しく、経済産業省の小委員会で委員を務める寿楽浩太・東京電機大学教授(科学技術社会学)は「県や村との約束を守ることが大前提だが、(期限内の処分場完成は)難しくなっていると考える。政府や事業者は間に合わない場合を想定し、期限以降の保管方法を含めた対応を考えざるを得ない局面になりつつある」とみる。
 国などに対し「具体策を複数の選択肢で県民、社会に示す検討を始めるべきだ」と指摘。地元に貯蔵の延長を願い出るだけでなく、固化体や使用済み核燃料の保管を他の地域と分担する仕組みなども、「道義的な面も含めた選択肢の一つにはなり得る」という。
 県や村についても「この『30年』のタイミングで、有識者を交えて解決策を探り、代案や別の選択肢を政府に提案したり社会に訴えかけたりする手もある」と提言。「(放射線の影響が弱まる)数万年の期間の安全を考えても、拙速にならず皆の納得を得るための期間は確保すべき」とした。

 知事「残り20年結論を」 「出口戦略」国、事業者に要求

 六ヶ所村内で一時貯蔵する高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)を巡り、宮下宗一郎知事は23日、最終処分場の完成時期が不透明な現状を受け、「(貯蔵期限まで)残り20年のカウントダウンが始まることを認識し、結論を得る動きを早く進めるべきだ」と国や原子力事業者に注文した。本紙インタビューに答えた。
 処分場が選定されないまま六ヶ所再処理工場が操業すれば、搬出先未定の固化体が村内に蓄積していくことになる。この点について宮下知事は「心配事が増える」と懸念。最終処分や搬出期限の問題は「再処理が始まって廃棄物が増えるタイミングが、加速度的に動きを進める一つの契機になる」との見方を示した。
 1995年の初搬入分は貯蔵期間「30〜50年間」に基づき、最終的な搬出期限が2045年となる。宮下知事は「確実に搬出されるよう取り組んでほしい。全体の時間軸で最終的には整合を取り、出口をつくることが大事」と強調。「国や事業者は常に出口戦略を考えるべきだ。残り19年、18年と、カウントダウンが進めばより厳しいものになっていく」とくぎを刺した。
 官房長官ら関係閣僚と意見を交わす「核燃料サイクル協議会」に言及し、知事として「折に触れて公式な場で働きかけていく」とも述べた。
        (佐々木大輔)
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