[2022_01_22_01]【処理水行動計画】まずは結果を示せ(1月22日)(福島民報2022年1月22日)
 
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【処理水行動計画】まずは結果を示せ(1月22日)

 政府は昨年末、東京電力福島第一原発で発生する処理水の海洋放出処分に向けた行動計画をまとめた。風評対策などに目新しさはなく、県民からは効果を疑問視する声も出ている。政府関係者は地元の理解が得られるよう説明を尽くすと繰り返すが、実効なき対策では意味がない。政府は計画に盛り込んだ取り組みを早急に実施した上で検証の場を設け、まずは結果を県民に示すべきだ。
 計画で示した今後一年間の主な取り組みは(1)風評を最大限抑制する処分方法の徹底(2)モニタリングの強化・拡充(3)国際機関などによる監視・透明性の確保(4)安心が共有されるための情報の普及・浸透(5)国際社会への戦略的な発信(6)安全性の知識の普及状況の観測・把握−などが柱になっている。総じて見れば従来の対策の継続・焼き直しの印象が強く、効果は見通せない。
 例えば「安心が共有されるための情報の普及・浸透」は風評の抑止には欠かせない。ただ、最も重要な消費者の理解向上に向けた具体的な取り組みとして挙がっているのは主にインターネットや多様な媒体、イベントなどを活用した情報発信だ。単に情報を流すだけで風評を払拭[ふっしょく]・抑止できるなら苦労はしない。イベントなどもコロナ禍で思うように開けないのが現状だ。大方の県民は「これで消費者の理解向上が図れるのか」と感じているのではないか。
 岸田文雄首相は十九日の衆院本会議の代表質問で処理水処分の理解促進に向け「地元の皆さんの懸念を払拭できるようにする」「安全性や風評対策について丁寧に説明を尽くしていく」と述べた。単に対策を地元に説明するだけでは理解は得られない。求められているのは「国民理解の醸成」という結果だ。
 県民の間に懸念がくすぶっている以上、各種対策の効果を見極める場が必要だ。定期的に世論調査などを行った上で、県民や各種団体の代表ら利害関係者を交えて結果を検証する。効果が確認できれば、それでいいし、思うような結果が出ない場合はさらなる対策を講じる。それでもだめなら、処理水の処分方法そのものを再検討する。こうした手順を踏むのが物事を進める上での筋だろう。
 行動計画には賠償方針の具体化も盛り込まれた。政府は思うような結果が出せなくても、結論ありきで来春の海洋放出を強行するのでは、との疑念も湧く。国民の声に耳を傾け、施策の方針転換もいとわない岸田首相には、改めて真摯[しんし]に県民と向き合うよう求めたい。(早川正也)
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