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[2025_01_17_07]南海トラフ地震の発生確率「80%」が覆る可能性 地震調査委が新データを基に見直し 国は「中身話せない」(東京新聞2025年1月17日) | ![]() |
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06:00 30年以内の発生確率(長期評価)が「80%程度」とされる南海トラフ地震について、政府の地震調査委員会が、根拠としているデータや研究結果の見直しを始めたことが分かった。議論は非公開で進んでおり、複数の委員への取材によると、確率の値や表記の仕方などに変更が加えられる可能性が高い。(小沢慧一) あわせて読みたい 発生確率の水増しを暴く 特集「南海トラフ 80%の内幕」記事リスト ◇長期評価部会委員の半数が議論認める 東京新聞は地震調査委の下部組織で、地震学者らが確率の検討を取りまとめる長期評価部会の委員全16人に取材を申し込んだ。 およそ半数の委員が議論していることを認めた。複数の委員が新しいデータや知見を重視し、「確率算出の手法を見直そうという話になっている。手法が変われば、確率の値が変わる可能性は高い」と話した。 事務局の文部科学省の担当者は「見直しを検討することを含めて検討しており、具体的な内容は話せない」と答えた。 ◇南海トラフだけ「時間予測モデル」 主に議論されているのは2013年に地震調査委が発表した、南海トラフの確率の算出にだけ使われている「時間予測モデル」の根拠となったデータの扱いだ。 大地震時には地盤が隆起し海底が浅くなるため、水深の変化の記録から次の地震発生時期を予測するモデルで、高知県・室津港の古文書に記載された港の水深の変化を基にしている。 見直し議論のきっかけになった2024年発表の論文 だが、東京新聞と共同調査した京都大の橋本学名誉教授と東京大の加納靖之准教授が2024年2月、古文書に詳しい記録時期や場所が記されていなかったことや、港が人為的に掘り下げられた可能性があることなどを指摘する論文を、日本自然災害学会の学会誌に発表。 「古文書の記録はデータとして信頼が置けず、南海トラフ地震の発生確率に同モデルを使うべきではない」と指摘した。 複数の委員によると、長期評価部会はこの論文を受け、どのようなデータと計算手法が妥当かなどを議論しているという。 ただ、時間予測モデル自体は「完全に否定できる材料はない」として見直しの検討は俎上(そじょう)に上がっていない。 ◇消えた「低い確率も併記」案 南海トラフ地震以外の地震の確率は、発生間隔を平均した「単純平均モデル」が採用されている。これを南海トラフに当てはめると、発生確率は「20%程度」にまで落ちる。複数の委員は取材に、確率の表記も「両論併記を検討するべきだ」と話した。 時間予測モデルの問題点は、2013年の確率策定時にも委員らが指摘し、報告書の主文に「20%」も併記する案が出た。 だが、防災の専門家や政府担当者らが、確率が下がることで防災予算に影響が出るなどと猛反対し、「20%」が消えた。 南海トラフの発生確率は時間経過に伴い自動的に引き上げられており、15日に「70〜80%」から「80%程度」に更新された。 ◇「確率」が防災の妨げになる現実 根拠とするデータに疑義が示されている南海トラフ地震の発生確率が、見直される可能性が高まった。この一歩をさらに進めるためには、「確率」が防災の妨げにさえなっている弊害に目を向けるべきだ。 大地震発生の確率は、阪神大震災の震源となった活断層の存在が住民に伝わっていなかった反省から、危険性を周知する目的で導入された。だが、確率の高低が防災意識と自治体の対策に格差を生み出した。 象徴的なのは、確率を日本地図にした「全国地震動予測地図」だ。突出して高い確率が出るモデルを使った太平洋の南海トラフ沿いが、危険を示す濃い赤色で塗りつぶされている。 だが近年、熊本、北海道、能登半島など、確率が低いとされた地域で大地震が頻発している。石川県の防災計画に携わった室崎益輝・神戸大名誉教授(防災工学)は取材に「確率を信じ、大地震は太平洋側と油断した。防災に確率は不要だ」と述べた。 低確率は「安全宣言」にとらえられかねず、いつどこで大地震が起きてもおかしくない日本ではリスクとなる。地域ごとの危険性を住民が知り、備えにつなげられるよう、誠実な議論を期待する。 |
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KEY_WORD:南海トラフ巨大地震_:HANSHIN_: | ![]() |
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