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[2025_02_11_01]あの事故からもうすぐ14年 福島第一原発事故で「東日本壊滅」の危機を乗り切れたのはなぜか? 今明かされる「衝撃の事実」(現代ビジネス2025年2月11日) | ![]() |
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参照元
07:01 東日本壊滅はなぜ免れたのか? 取材期間13年、のべ1500人以上の関係者取材で浮かび上がった衝撃的な事故の真相。他の追随を許さない圧倒的な情報量と貴重な写真資料を収録した、単行本『福島第一原発事故の「真実」』は、2022年「科学ジャーナリスト大賞」受賞するなど、各種メディアで高く評価された。文庫版より、その収録内容を一部抜粋して紹介する。 【写真】 福島第一原発では建屋が爆発したが、東日本壊滅という最悪事態はは免れた あの事故から14年の歳月が流れようとしている。 2011年3月11日の巨大地震に端を発する福島第一原発事故である。震度6強の揺れと、15メートルを超える津波に襲われた福島第一原発は、幾重にも用意していた冷却装置がことごとく潰えて、電源を失う。稼働していた1号機から3号機の核燃料は高温に熱せられてメルトダウンし、2度にわたって水素爆発を起こし、核燃料デブリとなって原子炉や格納容器へと溶け落ちていった。 事故から4日目に2号機がメルトダウンした時、吉田昌郎(よしだ・まさお)所長は「このまま水が入らないと東日本一帯が壊滅すると思った」と打ち明けている。「東日本壊滅」は、当時の菅直人総理大臣が原子力委員会の近藤駿介委員長に依頼してシミュレーションした「最悪シナリオ」にも記されている。 近藤駿介内閣府原子力委員会委員長が作成した「福島第一原子力発電所の不測事 態シナリオの素描」で明らかになった、最悪シナリオ発生時における移住を迫られる地域。福島第一原発の半径170キロ圏内がチェルノブイリ事故の強制移住基準に 相当すると試算。250キロ圏内を、住民が移住を希望した場合には認めるべき汚染 地域とした(CG:DAN杉本、カシミール3Dを用いて作製。高さは2倍に強調した) 「最悪シナリオ」では、原発内の放射線量が高くなり、作業員が全員退避して注水できなくなると、連鎖的に各号機の状態が悪化し、格納容器が破損。さらに燃料プールの核燃料もメルトダウンし、大量の放射性物質が放出される。その結果、福島第一原発の半径170キロ圏内がチェルノブイリ(※旧ソ連ウクライナのチョルノービリ)事故の強制移住基準に達し、半径250キロ圏内が、住民が移住を希望した場合には認めるべき汚染地域になると推定されている。半径250キロとは、北は岩手県盛岡市から、南は神奈川県横浜市まで、東京を含む東日本を覆う広さである。しかし、現実は、最悪の事態には至らず、「東日本壊滅」は回避された。それは、なぜなのか? 事故は、吉田所長以下が現場に踏みとどまり、原子炉への注水を続けていくうちに、次第に収束に向かっていく。この事故をテーマにした映画やドラマ、小説の多くは、人の手による注水活動が、最悪の事態回避に、決定的な役割を果たしたように描かれている。 (写真:東京電力) しかし、事故の検証取材を続けていくと、そうとは言い切れない事実にぶち当たってくる。その象徴とも言えるのが、東京本店の命令に逆らって、吉田所長が続けた1号機への海水注入である。1号機が水素爆発した直後の3月12日夕方、現場の奮闘で再開した原子炉への海水注入を、総理官邸が再臨界の可能性を問うたことをきっかけに、東京本店が注入の中止を命じる。ところが、ここで吉田所長は、一芝居打つ。テレビ会議では注水中止を大声で指示する裏で、現場には密かに海水注入を継続させたのだ。このトリックプレイは、映画やドラマ、小説でも繰り返し伝えられたこともあって、1号機の危機を救った英断と広く知られるようになった。 しかし、事故から5年後、思わぬ真相が明らかになる。最新の研究で1号機の海水注入は、配管の様々な箇所から漏洩し、注水方法を変えた23日までほぼ冷却に寄与しなかった可能性が濃厚になったのである。長期にわたって冷却できていなかった1号機は、溶け落ちた核燃料デブリが格納容器の奥底まで浸食し、2号機や3号機に比べても、デブリの取り出しがより難しくなることが予想されている。吉田所長の英断が1号機を救ったという事故像は、もはや覆されているのである。 福島第一原発事故では、このように決死の打開策で危機を脱したと思えたことが、後にほとんど効果がなかったと判明することが少なくない。むしろ、危機を救ったのは、人の手を介さない偶然の積み重ねだったことに突き当たり、肌寒い思いにさせられる。なぜ、事故は最悪を回避できたのか。その詳細はいまだに謎なのである。 本書は、2011年3月11日の巨大地震を起点に、福島第一原発の事故現場と東京電力本店さらに総理官邸で、何が起き、人々がどう対応したかを、時系列に沿って分刻みで再現したものである。この13年の継続取材で突き止めた新事実や最新の調査・研究を踏まえて、当初、真相と思えたことがどんでん返しのように変わっていくさまも織り交ぜながら、現時点でできうる限り正確な事故像を提示することに努めた。 本書の内容は、2021年2月に刊行された『福島第一原発事故の「真実」』の第1部をもとに、新たに判明した事実を加筆修正している。なお、同書第2部の「検証編」は、最新の調査結果を踏まえた記述を新たに加えたうえで文庫版「検証編」として同時刊行した。『福島第一原発事故の「真実」』は、ありがたいことに刊行後、様々な書評で取り上げられ、2022年には、科学ジャーナリスト大賞を頂いた。本書が、この事故の真実を正確な歴史として後世に継承していくための一翼を担うことを願っている。 さらに連載記事<1号機爆発まで24時間50分…東日本大震災が発生した「まさにその瞬間」の「福島第一原発」の「あまりに緊迫した状況」>では、発災直後の緊迫した様子を詳細に語っています。 |
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