[2024_09_26_14]火山調査委員会 防災体制見直しの目玉、進化は今後(東奥日報2024年9月26日)
 
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火山調査委員会 防災体制見直しの目玉、進化は今後

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 政府の火山調査研究推進本部(火山本部)の下部組織である火山調査委員会が、国内111の活火山の現状評価をまとめた。同本部は、多くの登山者が死亡した2014年の御嶽山(岐阜、長野両県)の噴火を機に進められた火山防災体制見直しの目玉。観測や調査を一元的に担う司令塔としての期待を担うが、情報発信力などの真価が問われるのはこれからだ。

 「火山本部は研究者にとっても悲願で必要だった」。昨年9月、火山本部の設置に向けた有識者会合後の取材に、座長を務めた清水洋九州大名誉教授(現・火山調査委員長)は語った。
 火山観測や調査を巡っては、気象庁や大学、研究所がそれぞれ進める状況が続き、連携不足が指摘されてきた。火山の専門家は地震に比べると少なく、人材育成も課題となっている。国立大が法人化した04年以降、人員や予算が減り、弱体化が進んだことも一因だ。

 こうした中、14年9月に発生した御嶽山の噴火は死者58人、行方不明者5人を出す戦後最悪の火山災害となり、国は火山防災対策の見直しを迫られた。翌15年、改正活動火山対策特別措置法(活火山法)を施行し、警戒地域に指定した自治体に、避難体制などを話し合う「火山防災協議会」の設置を義務付けた。
 活火山法の再改正により今年4月、火山本部が発足。調査観測計画の策定などを担う政策委員会と、大学や自治体などが実施する観測、測量に関する情報の収集や分析、評価を行う火山調査委員会が置かれた。

 調査委は今回、111の活火山について現状評価を示し、このうち1年以内に噴火が発生した桜島や、火山活動に変化が見られる岩手山など8火山について重点的に評価を行う対象とすることを決めた。調査委としては初の評価だが、これは従来、気象庁が事務局を務める火山噴火予知連絡会が行ってきたものとほぼ変わらない。
 桜島のほか口永良部島など計4火山が選定された鹿児島県の担当者は「政府から詳しい説明を聞かないと、今回の評価の意図が具体的には分からない」と、従来との違いの曖昧さに困惑した様子。避難訓練や気象台との意見交換など「これまで進めてきたハード・ソフト両面の施策を継続していく」と強調した。

 岩手県の担当者は、8月下旬以降に岩手山の活動が活発になっているため、関係自治体が登山者に注意喚起しているとし「国の評価結果を受け、必要な対策があれば対応する」と述べた。
 火山本部では、今後10年間で観測体制を整備し、噴火の前兆を把握する研究に取り組むとの基本施策と観測計画の要点を、政策委員会が今年8月に決定したばかり。「(本部設置は)喜ばしいが、問題は中身。魂を入れなければならない」(関係者)という状態だ。
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