[2024_09_29_01]中間貯蔵施設に核燃料搬入 むつ市財政潤うか 独自の課税スタート(東奥日報2024年9月29日)
 
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中間貯蔵施設に核燃料搬入 むつ市財政潤うか 独自の課税スタート

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 むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設に26日、核燃料69体が入った金属容器(キャスク)が搬入されたことで、市がリサイクル燃料貯蔵(RFS)に独自に課す「使用済燃料税(核燃新税)」の課税がスタートした。市は国からの電源立地地域対策交付金などと合わせ、貴重な自主財源として各種施策に充てる考えだが、貯蔵計画が2024〜26年度分しか示されていないこともあり、市民生活にどの程度の変化をもたらすかは現時点で見通せない。

 核燃新税は、貯蔵する使用済み核燃料のウラン重量1キロ当たり620円を課税すると条例で規定。キャスク1基のウラン重量は約12トンで、市は貯蔵計画を基に24年度の税収を434万円、25年度1488万円、26年度5208万円と試算している。
 山本知也市長は26日の取材に対し、核燃新税を産業振興、子育て施策、防災対策などに活用する考えを述べ「地域の皆さんにとってより良いむつ市であるために努力したい」と語った。
 県が原子力事業者に課す「核燃料物質等取扱税(核燃税)」を原資に立地・周辺自治体に配分する核燃税交付金は、東通原発(東通村)などの周辺自治体として12年度以降に計35億9824万円を受けている。県が中間貯蔵施設を課税対象に加えたことで増額も予想されるが、市によると県の方針は示されていない。

 交付金 再建の支え

 「財政破綻寸前だった」「借金で火の車」。誘致構想が浮上した2000年前後の財政状況を知る複数の市OBは口々に話す。4期目に入っていた杉山粛市政だったが、市の一般会計は1998年度から累積赤字を抱え、2005年度には24億8800万円まで膨らんだ。
 むつ総合病院をはじめとした医療の充実、道路などインフラ整備、産業振興、教育振興。「やらないといけないことだらけだったが財源がなかった」。杉山市長秘書の経験を持つ新谷加水元副市長(75)は振り返る。そして「『生活にカネがかからないむつ市』という、理想の地域づくりにつながる可能性があると考えたのだろう」と、杉山市長が施設誘致に突き進んだ胸の内を推し量る。
 誘致を「杉山市長の独断だった」と振り返る富岡幸夫市議会議長(73)も「『何か』がなければ、むつ市は潤うことができずにいた。施設を引き受けることでむつ市を、市の財政を豊かにできる可能性があった」と同調する。
 実際、東京電力が施設の立地可能性調査に着手した01年度から国の電源立地地域対策交付金の交付が始まり、23年度までに累計234億2225万円の財源を得た。01年当時、杉山市長は取材に対して「財政の穴埋めのためではない。あくまで海洋科学研究都市を造るため」と誘致の理由を説明したが、こうした財源が財政再建を下支えしたことは疑いようがない。市一般会計の累積赤字は10年度決算で解消した。

 「キャスク少ない」

 ただ、富岡議長は「ただ、今もってむつが潤うまでには至っていない」と指摘する。さらにある関係者は、搬入されるキャスクの少なさに不満を漏らす。「26年度までの3年間で8基という計画は論外だ。誘致して良かったと言えるだけの効果を得るには十分ではない−と言い出す人も出てくるのではないか」(山内はるみ、熊谷慎吉)
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