[2025_11_03_04]摩擦なしで回るローター技術、OISTが開発 高感度傾きセンサーへ(日経新聞2025年11月3日)
 
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摩擦なしで回るローター技術、OISTが開発 高感度傾きセンサーへ

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 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、磁力で浮上し、ほぼ摩擦なしで回転し続けられるローター技術を開発した。永久磁石の上に炭素製の円盤が回転する仕組みで、微弱な力で回転できる。航空機やスマホなどに搭載される傾きセンサー「ジャイロセンサー」などの性能向上につながる可能性がある。

 OISTのジェイソン・トゥワムリー教授らが開発したローター技術は、磁力を使って円盤状の部品を浮上させて回転する仕組みだ。円盤は炭素原子がシート状に並んだグラファイトで作られ、電気を使わずに室温で安定的に回転する。実験では直径1センチメートルの円盤を真空下で浮上させ、少しの力で最大1日中回り続けた。

 磁力を使ったローター技術は古くからあるアイデアだが、回転を邪魔する現象が起きる課題があった。電気を通す物質を磁石の近くで動かすと電気が発生する「電磁誘導」が起きる。ローターの場合、回転する円盤が振動したり、位置がずれたりすると、運動エネルギーが電気エネルギーなどに変換され、回転速度の低下につながっていた。

 研究チームは円盤や永久磁石を精密に真円に加工し、回転時に生じる振動などを極限まで抑えたところ、電磁誘導の影響を受けずに回転させることができた。トゥワムリー教授は「傾きセンサーなど実用的な用途開発には工学的な課題はまだ多い」としつつも、まずは科学研究用のセンサー開発を目指す。将来は高性能なジャイロセンサーなどの開発につながるとみる。

 研究成果をまとめた論文は国際科学誌「コミュニケーションズフィジックス」に掲載された。
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