[2025_11_22_02]【柏崎刈羽原発】もう失態は許されぬ(11月22日)(福島民報2025年11月22日)
 
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【柏崎刈羽原発】もう失態は許されぬ(11月22日)

 09:21
 福島県民の原子力政策に対する不信と疑念が払拭されぬまま、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に向けた流れが強まった。福島第1原発事故の傷は癒えず、東電は災禍後もトラブルを重ねてきた。こうした中、新潟県の花角英世知事は苦渋の同意判断を下したと言える。今後も失態が続けば容認は白紙に戻りかねず、国のエネルギー政策全体が大きく揺らぐ。その自覚がどれほど東電にはあるのか。

 花角知事は記者会見で、再稼働を巡る賛否により県民の分断を懸念したと示唆した。「合理的な理由がなく他人の営業の自由を止められない」とも説明した。新潟県民208万人の暮らしを背負うトップの苦悩に国と東電は深く思いをはせねばならない。

 柏崎刈羽原発は、福島第1原発事故発生から6年後の2017年、6、7号機が原子力規制委員会の審査に合格した。しかし、2021年以降、社員のIDカードの不正使用による中央制御室侵入が発覚。テロ目的などの侵入を検知する設備が故障し、代替措置が不十分だったことも判明した。重要施設周辺への無許可のスマホ持ち込みも明らかになった。20日には、テロ対策の秘密文書の管理不備があったと発表されたばかりだ。その企業文化、倫理観を強く疑わざるを得ない。

 こうした実態を反映した結果だろう。新潟県が9月に実施した県民意識調査で、「再稼働の条件は現状で整っている」の回答は「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」を合わせ60%に上った。住民の信頼回復には、いばらの道が待つ。

 一方、福島県内では7市町村に原発事故に伴う避難区域が残り、県内外で2万人超が避難生活を続けている。原発再稼働を急ぐ東電の姿勢に、わが県民感情は決して穏やかでない。柏崎刈羽原発から本県境まで、60キロ足らずだ。小早川智明社長自らが本県で、柏崎刈羽原発の再稼働に向けた方針や安全対策を丁寧に説明する必要がある。国は東電任せにせず、原発回帰に至った経緯を含めて県民と対話の機会を持つべきだ。

 原発1基の稼働で東電は年間1千億円の収支改善が見込まれ、廃炉の財務基盤が厚くなる。だが、安全文化は金で買えないことも深く認識してほしい。(菅野龍太)
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