[2024_07_08_04]<社説>核のごみ処分場 適地選定の信頼揺らぐ(東京新聞2024年7月8日)
 
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<社説>核のごみ処分場 適地選定の信頼揺らぐ

 07:29
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村での「文献調査」は4日、経済産業省の作業部会による審議が終了した。特定放射性廃棄物小委員会の承認を経て来月にも完了する。深刻な課題を評価しないまま、次の段階の「概要調査」に先送りする見通しで、適地選定のあり方、信頼性への疑問は深まる。
 原発で使用済みになった核燃料から、燃料として再利用できるプルトニウムなどを取り出した後の残りかすが核のごみ。ガラス状に固めて地下300メートルより深い安定した地層に埋設することが法律で決まっている。放射線量が人体に安全とされるレベルに下がるまでには10万年かかるとされており、厳重な管理が必要になる。
 調査は、既存の論文やデータを精査する「文献調査」、地面を掘って地層を調べる「概要調査」、地下に施設を造って検討する「精密調査」の3段階。処分の実施主体・原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年から調査対象となる自治体を募ってきたが、文献調査受け入れだけで交付金最大20億円の条件にもかかわらず、応募はなく、やっと20年11月に寿都、神恵内両町村が、全国で初めて文献調査に応じた。その後、佐賀県玄海町も受け入れた。
 NUMOはこの2月、「文献調査」で火山や活断層などに関する延べ1500点の資料を分析した結果として報告書案を公表。寿都町の全域と神恵内村の南端の一部を、概要調査に進む候補地とし、作業部会の審査にかけた。
 ただ、この候補地には、処分場立地の適否を示す国の「科学的特性マップ」が「好ましくない」としたエリアが含まれ、審議過程でも活断層や火山活動の恐れなど、危険性が指摘されたが、経産省とNUMOは「概要調査以降に検討する」とし、小委員会も承認の見通しだ。特性マップは、玄海町もほぼ全域を「好ましくない」としており、やはり調査対象にすることとの整合性を欠く。適地選定の真摯(しんし)さが疑われる。
 そもそも、核のごみの最終的な行き場が決まらないまま、原発の「最大限活用」を掲げる政府方針に無理がある。それに沿い、調査の「実績」を積み上げようとしているだけなら費用の無駄遣いだ。そして、その原資は、私たちが支払う電気料金である。
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