[2023_12_22_01]自民県議も「東京電力には原発を運転してほしくない」…「生まれ変わる」宣言に新潟が裏切られ続けた2年半(東京新聞2023年12月22日)
 
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自民県議も「東京電力には原発を運転してほしくない」…「生まれ変わる」宣言に新潟が裏切られ続けた2年半

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  <連載 「約束」の今 東京電力と原発>
 「トラブルをゼロにするのは極めて難しい。小さな問題を大きな問題につなげないことが重要だ」

 ◆「うみを出し切る」と社長は言い切ったはず

 テロ対策の不備で運転禁止が続く柏崎刈羽原発に、原子力規制委員会が調査に入った12月11日。柏崎刈羽の稲垣武之所長は、今も違反がなくならないことを報道陣から問われると、淡々と答えた。
 この「小さな問題」に、新潟県民の厳しい目が注がれている。
 運転禁止命令を受ける1カ月前の2021年3月、東京電力の小早川智明社長は新潟県庁を訪れ、花角英世知事や県議らに「うみを出し切り、生まれ変わるつもりで立て直したい」と約束した。しかし、侵入者対策用の照明を電源に接続しないまま放置したことをはじめ、不祥事はなくならない。ある自民党県議は「『信頼を回復する』と言ったのに、東電の体質は何も変わっていない」とあきれる。

 「信頼回復を最優先事項に位置付け、これ以上信頼を損ねれば存続に関わるとの危機感を持ち、生まれ変わった姿を行動と実績で示す」 (運転禁止命令後に改定した東京電力の経営計画より)

 ◆賠償費用の捻出を大義名分に「再稼働」に突き進む

 柏崎刈羽の再稼働は東電にとって経営上の最重要課題とされている。福島第1原発事故の賠償と廃炉で、約16兆円とされた東電の負担額はさらに増える見通し。22年末に政府が賠償指針を見直したほか、処理水の海洋放出での風評被害で新たな賠償が加わった。巨額の費用を捻出するため、東電は再稼働して利益を上げることが必要と主張する。
 この理屈に対し、県議会の反応は冷ややかだ。「廃炉は国が責任を持って費用を負担すればいい。柏崎刈羽には関係ない」。原発に賛成、反対の立場を超え、議員たちは東電の言い分に納得していない。
 再稼働への地元同意の是非を判断する新潟県は、議論に向けて材料をそろえつつある。前提としてきた福島第1原発事故の独自検証のとりまとめを今年9月に終わらせ、年度内に柏崎刈羽が県内にもたらす経済効果の試算を出す。

 ◆運転同意をめぐって「出直し知事選」の観測も

 花角知事は5年前の初当選時から、同意の是非を決めた上で「県民の意思を確認する」と繰り返してきた。12月の県議会でも「信を問う方法が責任の取り方として最も明確で重い」と述べた。県議会内には早くも知事選の観測が流れる。
 一方で、東電に対する県民の信頼は地に落ち続け、原発を推進する立場の自民党会派内でも、有権者からの反発を気にして再稼働をおおっぴらに口にできる空気はしぼんだ。柏崎刈羽を東電から切り離し、代わりとなる別の事業主体を望む切実な声も聞こえてくる。
 ベテラン自民県議は再稼働は必要とした上で、3年ほど前に頭を下げに来た小早川社長に放ったのと同じ言葉を繰り返した。
 「東電には、柏崎刈羽を運転してほしくない」

 東京電力柏崎刈羽原発
 新潟県柏崎市と刈羽村の誘致を受けて建設。1985〜97年に計7基が営業運転を開始し、総出力は世界最大規模の821万2000キロワット。2007年の中越沖地震では、3号機の火災をはじめトラブルが相次いだ。21年以降、テロ対策の不備のほか、完了したはずの7号機の事故対策工事の未完了、タービン設備の配管損傷、不十分な溶接工事など不祥事が相次ぎ発覚した。

<連載 「約束」の今 東京電力と原発>全3回
 福島第1原発事故を起こした東電が、柏崎刈羽の再稼働に向けて自らに課した「約束」は守られているのかー。その現在地を見た。(渡辺聖子、小野沢健太が担当します)
KEY_WORD:柏崎_核セキュリティー違反_:KASHIWA_:CHUETSUOKI_:FUKU1_:汚染水_:廃炉_: