[2023_11_22_10]富士山噴火想定 降灰で首都圏住民の6割に物資届かず 政府試算(毎日新聞2023年11月22日)
 
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富士山噴火想定 降灰で首都圏住民の6割に物資届かず 政府試算

 06:30
 1707年の富士山の大噴火では、火山灰が江戸の街に2週間も降り続いたという。今後、同じような噴火があれば最悪の場合、どういう状況になるのか――。
 毎日新聞は、対策に関する政府の内部資料を入手した。噴火による降灰で通行止めになる道路が日々増えるなどして、2週間後までには首都圏の人口(約4433万人)の約6割に相当する住民に物資が届かない状況に陥る可能性があると試算していた。
 内部資料は、火山防災を担当する内閣府が作成。首都圏の降灰対策を議論するため、2022年3月に非公開で開かれ、関係省庁や専門家を交えた検討会で配布された。防災対策の議論に向けて、火山灰による影響の全体像を示すものだという。

 試算にあたり、政府は07年の宝永(ほうえい)噴火と同じように複数回の大噴火が起き、火山灰が東京都や神奈川県、山梨県、千葉県などに約2週間、段階的に降り積もると仮定している。
 試算では、噴火の約2週間後までに、道路に積もった火山灰などのため車が通行できなくなり、物資が届かない状況に陥る住民は約2700万人、送電線への降灰のため停電に遭遇するのは約3600万人と見込んでいた。
 こうした火山灰の影響や木造家屋が倒壊するほどの降灰などにより避難が求められるのは、最大で2670万人と試算していた。
 一方、復旧には道路上の火山灰をいかに取り除くのかが、カギになる。内部資料では、確保できる作業員を少なめに見積もると、緊急車両が走行する主な国道(緊急輸送道路)で1車線の開通に約3日間、2車線だと約5日間かかると推計していた。
 道路の復旧が進まなければ物資が届かず、避難もままならなくなる可能性がうかがえる内容だった。今後、車で物資を運べない地域には、別の手段で届けるのかも含めて議論することになる。
 内閣府の担当者は、内部資料の試算について「(降灰の影響が出る想定の地域の)人口データをそのまま足しただけ。精査は進んでいない」と話す。
 政府の中央防災会議の作業部会で降灰対策について議論した時、主査を務めた藤井敏嗣(としつぐ)東京大名誉教授は「宝永噴火から3世紀がたち、マグマがたまっている可能性があり、いつ噴火してもおかしくない」とみている。
 その上で「噴火の仕方によっては首都圏の交通がまひする可能性があり、道路を開通させて物資を供給するための議論をしていくことが重要だ」と指摘する。
 この作業部会は2020年4月、宝永噴火と同じような大噴火で、降灰が2週間続く場合の想定結果を公表した。風向きによって、噴火から3時間で都心に火山灰が降り積もり、東京23区の一部では1日で3センチ、2日で10センチ超も降灰するとした。
 また、二輪駆動車が動けなくなる降灰量については、降雨時が3センチ以上、雨が降っていない場合は10センチ以上と想定。電力は、降雨時に3ミリ以上の降灰で停電する可能性があると見積もっていた。【安藤いく子、山口智、奥山智己】
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