[2023_08_20_08]日本の水産物輸出が滞り始めた…政府の風評被害対策は?各国の輸入規制の状況は? 処理水海洋放出<Q&A> (東京新聞2023年8月20日)
 
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日本の水産物輸出が滞り始めた…政府の風評被害対策は?各国の輸入規制の状況は? 処理水海洋放出<Q&A>

 2023年8月20日 06時00分
 東京電力福島第一原発の処理水が海洋放出されるのを前に、日本の水産物の輸出が滞り始めています。処理水に含まれる放射性物質を懸念する国や地域が、検査態勢を強化するなどの措置を打ち出しているためです。風評被害が生じた場合、どのような対策が取られるのでしょうか。(渡辺聖子)

 ◆緊張した2国間関係も規制に影響か

 Q 日本の水産物の輸入を巡る外国の対応は?
 A 中国が7月から全面的な放射性物質の検査を始めました。検査に時間がかかるため、生鮮品の取引ができない状況です。日中関係が緊張状態にあることも一因とみられます。香港は海洋放出した場合、福島県を含む10都県の水産物の輸入をただちに禁止すると発表しました。ウクライナ侵攻で関係が悪化したロシアも衛生・検疫や流通上の管理を強化するとしています。
 Q 食品の輸入規制は撤廃されてきたのでは?
 A 原発事故後、輸入停止や検査証明書を求める規制措置は、多い時で55カ国・地域に上りました。その後、緩和や撤廃が進み、最近では欧州連合(EU)やノルウェー、スイスなどが規制を撤廃しました。継続しているのは8月15日時点で、韓国、中国、台湾、香港、マカオ、仏領ポリネシア、ロシアの7カ国・地域です。

 ◆政府は基金300億円準備、実害発生なら東京電力が賠償

 Q 日本政府は水産物への風評被害対策にどう取り組むの?
 A 海洋放出の方針決定後に創設した300億円の基金を活用します。販路を広げるための商談会の開催費用や、企業の社員食堂で利用してもらう際の調達費用などの使い道が想定されています。仮に魚の市場価格が下落するなどして一時的に冷凍保管する場合は、漁協などの団体が水産物を買い取る資金の借入金利や、出荷するまでの保管費用を全額支援します。ただ、漁協側は買い取り資金を自己調達し、冷凍保管した魚の販売先も自前で探す必要があります。

 Q 実害が発生した場合は?
 A 東京電力が賠償をします。価格下落や減収に伴う損害などが対象です。行政機関などが公表した統計データを使って被害の有無を確認し、損害額を算定するとしています。
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