[2023_08_20_07]中国原発の廃水と福島の汚染水は根本的に異なる 中国権威機関(新華社2023年8月20日)
 
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中国原発の廃水と福島の汚染水は根本的に異なる 中国権威機関

 【新華社深せん8月20日】日本政府は福島放射能汚染水の海洋放出を近いうちに開始するとしている。各国から非難を受けても政府に当初の計画を見直す考えはなく、一部の政治家や読売新聞などのメディアも「日本が放出するトリチウムの濃度基準は中韓などいずれの国よりはるかに厳格」「中国の原発が年間で放出するトリチウムは福島第1原発の6.5倍」などの言論を発している。

 中国核工業集団(中核集団)や中国広核集団(中広核集団)など国内原子力大手によると、中国の原子力発電所の廃水は通常運転で生じる液体流出物で、福島原発の事故処理過程で生じる廃水とは根本的に異なる。放射性核種の種類や処理の難しさなどが大きく違い、同列に論じることはできないという。

 福島原発事故の処理廃水と通常運転する原発の廃水には本質的な違いがある。第一に発生源が異なり、第二に放射性核種の種類が異なり、第三に処理難度が異なる。福島原発事故の廃水は、事故後に溶融した炉心に注入された冷却水と原子炉内に浸透した地下水や雨水であり、溶融炉心に存在する各種の放射性核種を含み、処理難度が高い。一方で通常運転で生じる原発廃水はプロセス排水や地表排水などが中心で、微量の核分裂性核種を含むものの国際基準を厳格に順守しており、利用可能な最高の技術で処理され、厳格な監視・測定を通じて基準を満たしたものを計画的に排出している。排出量も規定の基準値を大幅に下回る。

 中国の原発廃水は主にプロセス排水、化学工業排水などで、いずれも燃料ペレットに直接触れていない。国際基準を順守し、成熟し信頼性の高いプロセス処理を経て、全ての監視・測定に合格した後、基準を満たすものを排出している。中国は原発廃水に含まれる放射性核種を総量的に規制しており、排出量は年度ごとに承認している。中核集団が運営する各発電所が2020年に排出した廃水に含まれるトリチウムの量は承認量の24〜58%に過ぎなかった。

 中国外交部の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は7月7日、日本が福島原発事故の汚染水と世界で通常運転している原発の排水を一緒くたにするのは概念のすり替えであり、世論のミスリードだと指摘した。

 汪氏は、福島原発事故で溶融した炉心に直接触れた放射能汚染水と炉心に直接触れていない通常運転下の原発の排水が本質的に異なることは専門家でなくとも容易に想像できるとし、由来が異なり、含まれる放射性核種の種類も異なり、処理の難度も異なることから、はなから比較対象にならないと述べた。国際原子力機関(IAEA)は日本の放射能汚染水浄化装置の有効性と長期的信頼性の評価を行っておらず、今後30年間で全ての放射能汚染水が処理基準を満たせる保証はないとも強調。日本が通常運転下の原発の排水を持ち出して海洋放出という誤った決定を正当化しようとするのは、科学の名を借りて国際社会をミスリードするやり方だと非難した。

 香港核学会の陸炳林(りく・へいりん)会長は、一般原発の営業運転で排出される水と福島の汚染された水を比較することはできないと指摘。トリチウムは含有量が基準を満たせばよいが、福島の放射能汚染水にはトリチウムのほかにも放射性物質が含まれていると説明した。福島原発で放射能に汚染された廃水にはプルトニウムやストロンチウム、セシウムなどの超ウラン元素を含む放射性核種62種類が含まれ、生物学的半減期は最長18年に及ぶなど比較的影響が大きいことにも触れ、日本は大部分の放射性物質をろ過できるとしているが完全浄化は無理であり、放出される放射能廃水にはより多くの放射性物質が含まれることから中国の大亜湾原発が排出する汚水よりもはるかに複雑だとの見方を示した。

 安全は中国の原子力発電が堅守し続ける生命線である。中核集団が発表した2022年度CSR(企業の社会的責任)報告書によると、同年に中核集団の原発で稼働を続けた発電ユニットは25基で、安全状態は維持され、原子力と放射線の安全性も良好な記録を維持した。中広核集団が発表した同年度のCSR報告書でも同社の原発の発電ユニット26基は安全かつ安定した稼働を維持した。世界原子力発電事業者協会(WANO)が原発の運転性能を評価するWANO指標では、79.2%の発電ユニットのWANO性能指標が世界の先進レベルに入っている。広東省深せん市の嶺澳原発1号機は今年3月16日時点で連続安全運転日数が6千日を超えた。日数はその後も更新され続け、同型機の安全運転日数の世界記録を保持している。(記者/王豊)
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