[2023_07_18_04]福島・相双漁協と国・東電が意見交換 処理水放出、不安の声次々(毎日新聞2023年7月18日)
 
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福島・相双漁協と国・東電が意見交換 処理水放出、不安の声次々

 東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出計画を巡り、第1原発に最も近い相馬双葉漁業協同組合(相双漁協)が18日、福島県相馬市で国や東電と意見交換会を開いた。漁業者ら約200人が集まったが、要望していた西村康稔経済産業相の出席が「日程の都合」(経産省)でかなわず、漁業者からは「我々の死活問題なのに、なぜ大臣が来ないのか」と憤りの声も上がった。
 海洋放出を巡っては、4日に国際原子力機関(IAEA)が安全性を確認する包括報告書を公表し、7日に原子力規制委員会が放出設備の使用前検査の終了証を交付した。政府は「夏ごろまでに放出」の方針を変えておらず、相双漁協の今野智光組合長は冒頭あいさつで「外堀を埋められたような感じだ」「若い後継者や女性乗組員も増えており、期待を持って漁業に就労した人にダメージを与えないでほしい」などと述べ、改めて「断固反対」の立場を示した。
 国と東電は2015年、福島県漁業協同組合連合会(県漁連)に「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分も行わない」と約束。県漁連は反対の立場を続けており、西村氏は今月、「約束は順守する」と発言した。
 意見交換会では、組合員や女性部から風評被害への懸念や漁業継続への不安の声が相次いだ。「『関係者の理解を得た』とどうやって判断するのか」との質問に、経済産業省の松永明参与は「安全対策、風評対策、理解の度合いを政府として総合的に考えたい」と述べるにとどまった。
 県漁連には7漁協が正会員に名を連ね、相双漁協は水揚げ額、組合員数ともに約7割を占める。今野組合長は6月7日に経産省を訪れ、西村氏に相馬に来て組合員らに計画を説明するよう直談判していた。
 相双漁協は12年、わずかな魚種・海域で操業を再開し、昨年度の水揚げ額は30億円に達したが、震災前の4割と復興の道半ばだ。今野組合長は閉会後、「安全性は今日までの説明で理解できる部分もあるが、安心は別問題。国がどこまで努力して、我々の理解を得られるような方策や説明の場を開くのかが今後の課題だと思う」と話したうえで、「対話を続けたいが、『きょうが(放出決定前の)最後の場になるのでは』という危機感もある」と表情を曇らせた。【尾崎修二】
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