[2023_07_14_09]EU 原発事故後の日本産食品の輸入規制 撤廃を正式決定(NHK2023年7月14日)
 
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EU 原発事故後の日本産食品の輸入規制 撤廃を正式決定

 EU=ヨーロッパ連合は、東京電力福島第一原子力発電所の事故のあとから続けてきた日本産の食品に対する輸入規制について撤廃すると発表しました。規制は来月にも完全に撤廃されることになります。
 EUは福島第一原発の事故のあと、福島や宮城など10の県で生産される一部の水産物や山菜などを対象に放射性物質の検査証明書の提出を求める輸入規制を行ってきました。
 EUは13日、輸入規制を撤廃すると発表し、その理由について、日本とEU加盟国が行ってきた食品検査の結果が良好だったことによるとしています。
 これにより規制は来月にも完全に撤廃されることになります。日本との定期首脳協議のあとの記者会見で、EUのフォンデアライエン委員長は「福島の現状をタイムリーかつ、透明性のある方法で伝えてくれた日本の当局に感謝したい。科学と確固たる証拠、そしてIAEA=国際原子力機関の評価に基づいて決断した」と述べ、EUと日本との相互の信頼が決定を後押ししたと強調しました。
 日本産の食品の輸入規制をめぐっては、おととしにアメリカが、去年にイギリスが撤廃しましたが、EUのほか中国や韓国などあわせて12の国と地域が規制を続けてきました。

 安全保障面での協力拡大に向けた新たな共同声明も

 日本時間の13日午後7時すぎから1時間半あまり行われた、岸田総理大臣とEUのミシェル大統領、フォンデアライエン委員長との定期首脳協議では、福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、岸田総理大臣が「IAEA=国際原子力機関の報告書で国際基準に整合的だと判断された」と伝えたのに対し、EUは報告書を歓迎すると応じました。
 また協議では、ロシアや中国、北朝鮮の動向などにより、安全保障環境が厳しさを増していることを踏まえて、日本とEUの間で外相級の「戦略対話」を立ち上げ、サイバーや宇宙を含めた安全保障面などでの協力を強化していくことで一致しました。
 さらに、半導体のサプライチェーンの強じん化といった経済安全保障分野のほか、気候変動やエネルギーなどの幅広い分野で連携していくことも確認しました。
 そして一連の協議の成果を共同声明として発表しました。

 岸田首相「被災地の復興を大きく後押し 高く評価し歓迎」

 岸田総理大臣は共同記者会見で「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持や強化に向けて引き続き連携していくことを確認できた」と強調しました。
 またEUによる輸入規制の撤廃について「EUが日本産食品の輸入規制の撤廃を決定したことは、被災地の復興を大きく後押しするものであり、日本政府として高く評価し、歓迎する」と述べました。

 交渉にあたってきた福島出身の外交官は

 日本とEUとの定期首脳協議で、EU側から岸田総理大臣に対し、福島第一原発事故のあと続けてきた日本産の食品に対する輸入規制を撤廃する方針が伝えられました。
 この交渉に去年5月からあたってきた1人が、外務省欧州連合経済室の首席事務官・三好あさぎさんです。三好さんは福島県西会津町の出身で「地元のためになることをしたい」と特別な思いで取り組んできました。ただ加盟国の中には撤廃に慎重な声もあり、一筋縄ではいかなかったと言います。
 三好さんは「EUの加盟国は27か国あり、いろいろな立場があって、担当レベルから政治家レベルまで重層的に働きかけをしていった」と振り返りました。ことし3月、EUの担当者が福島第一原発を視察に訪れた際には通訳も兼ねて案内し、廃炉に向けた取り組みなどを説明しました。担当者は真剣に説明を聞いてくれたということで、理解が深まるきっかけになったのではないかと感じています。
 状況が大きく好転したのは6月下旬でした。EU側から規制撤廃に向けた動きが出てきたというメールが三好さんのもとに届きました。うれしい反面油断したらいけないとギリギリまで交渉を続け、今回、実を結ぶ形となりました。
 三好さんは「被災地の復興にとっても後押しになるし、風評被害を乗り越えていくという観点でも意義があると思っている。私は東日本大震災の発災時は地元にはおらず、何かしら地元に貢献したいと思っていたがなかなかできずにいた。ようやく東北人として福島出身者として貢献できたかなと、うれしい気持ちです」と故郷への思いを語りました。
 EUの規制は一部の食品に放射性物質の検査証明書の提出を求めるものですが、中国や韓国、台湾などは、品目や産地によっては輸入停止といった厳しい措置をとっています。三好さんは今回のEUの規制撤廃を契機に、これらの国や地域でも緩和や撤廃に向けた機運を高めたいとしています。

 福島県 内堀雅雄知事は

 EUが日本産食品の輸入規制を撤廃することを伝えたことを受けて、福島県の内堀雅雄知事は13日夜コメントを発表しました。
 この中で内堀知事は「今回の撤廃は福島県の風評払拭を大きく後押しするものと受け止めている。EUにおける輸入規制の撤廃は加盟する27か国すべてに適用され波及効果は非常に大きいと考えている」として撤廃を歓迎しました。
 その上で「国と連携しながら科学的根拠に基づいた正確な情報や県産の農林水産物の魅力の発信を強化し、さらなる輸入規制撤廃に向けて全力で取り組んでいく」としています。
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