[2023_03_12_02]福島第一原発 廃棄物置き場の容量が限界迫る このままでは汚染水処理が…(東京新聞2023年3月12日)
 
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福島第一原発 廃棄物置き場の容量が限界迫る このままでは汚染水処理が…

 東京電力福島第一原発事故から11日で12年。事故収束作業の長期化に伴い廃棄物の問題が深刻化している。汚染水を浄化処理する際に出る汚泥の置き場の容量が、まもなく限界に達する。増設の計画はあるが一時しのぎでしかなく、綱渡りの状態が解消する見通しはない。(小野沢健太)

 ◆浄化が不十分な水が漏えいする危険も

 原発の敷地南端に、高さ10メートルほどのコンクリートの壁がそびえ立つ。廃棄物置き場を囲む。ここには「HIC」と呼ばれるポリエチレン製の容器がある。毎日増える汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化処理したときに出る汚泥を入れる。
 2月2日時点の貯蔵量は4128基。置き場の98%が埋まり、残るは64基だ。月平均で20基弱の廃棄物が発生する。早ければ5月ごろに満杯になりそうだ。
 置き場がなくなれば、ALPSを運転することはできない。原子炉建屋などにある高濃度汚染水とタンクに保管している、浄化が不十分な水がたまり続けることになる。ALPS処理前の水が漏えいする危険が高まる。
 HIC 高性能容器の略称で「ヒック」と呼ばれる。直径1.5メートル、高さ1.8メートル、厚さ約1センチのポリエチレン製の円筒形。多核種除去設備(ALPS)で浄化処理する際に発生する泥状の廃棄物を収納する。敷地南側にある屋外の置き場に、コンクリートの箱の中に入れて保管。現状の保管容量の上限は4192基分。

 ◆増設進めても27年6月ごろには満杯に

 東電は、HIC置き場の空きスペースに、192基分が入るコンクリートの箱を増設中だ。ぎりぎりのタイミングとなる5月中の運用開始を計画する。広報担当者は「工事は順調に進んでおり、4月の運用開始に前倒しすることを目指している」と説明する。 増設分の容量は1年〜1年半ほどだ。東電はさらに192基分を増設し、ALPSの運転方法を修正してHICの増加ペースを抑制することを計画する。ただし、これらの対策が想定通りに進んだとしても、2027年6月ごろには満杯になる。現状の置き場にそれ以上の増設ができるかは不透明で、東電は「新たな置き場を検討中」としている。

 ◆問題未解決のまま進む放出の準備

 HICの保管容量の逼迫は、東電のずさんな設備計画が招いた。HIC内の高濃度に汚染された汚泥は水分が多く、漏えいする恐れがあるため、東電は、汚泥を脱水して固形物化し、金属の箱に入れて別の倉庫に保管することで、リスクを下げる方針を立てた。その場合、HICは焼却処分して減っていくため、新たな置き場の増設は必要なかった。
 当初、22年度に脱水する設備の稼働を見込んだ。しかし、21年6月に原子力規制委員会から設備の被ばく防止対策が不十分だと指摘され、設計をやり直した。東電は運用開始の目標を計画の4年遅れの26年度に改めた。設計には今後1年以上かかる見通し。目標通りに進むかは分からない。
 政府と東電は、春から夏に処理水の海洋放出を始める計画。保管中の処理水の7割は放出基準を満たしていないため、ALPSで再び浄化処理しなければならない。処理に伴う廃棄物問題が解決できないまま、放出への準備ばかりが進む。
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