[2023_05_18_04]ウクライナに「ウラン弾」供与、英国の重大責任 放射能汚染で「イラク戦争の悲劇」再現も 東洋経済誌(Web版)の最新報道(5月16日付) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2023年5月18日)
 
参照元
ウクライナに「ウラン弾」供与、英国の重大責任 放射能汚染で「イラク戦争の悲劇」再現も 東洋経済誌(Web版)の最新報道(5月16日付) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎ イギリス政府がウクライナに主力戦車「チャレンジャー2」とともに劣化ウラン弾を供与することが報道された。
 劣化ウラン弾は核兵器や原子力発電の副産物で、標的に当たると高温で燃焼して放射性微粒子を拡散する兵器である。

◎ 劣化ウラン弾は人体や環境に深刻な影響を及ぼすと指摘されており、イラクやボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボなどで使用された後にがんや先天性異常などの病気が増えたと報告されている。
 ロシアはイギリスの劣化ウラン弾供与に反発し、対抗策として核兵器の使用も辞さないとの姿勢を示している。

◎ G7広島サミットで核不拡散が議題になる中、劣化ウラン弾の使用を問題視する市民グループは「ウクライナの大地を、劣化ウラン弾で汚染させるな」との署名を呼びかけている。

 ウクライナに「ウラン弾」供与、英国の重大責任
 https://toyokeizai.net/articles/-/672359
 プーチン氏、イギリスからウクライナへの劣化ウラン弾供与に警告
 https://www.bbc.com/japanese/65034724

 わかりやすい解説を試みます。いろいろな意見がネット上にも溢れているようですが、それに対する意見という側面もあります。

◎ 劣化ウラン弾を含む一連の武器を「劣化ウラン兵器」と総称します。
 このような兵器の使用について国際法に違反しているかどうかは議論があるのは事実です。特にイギリス国防省は否定をするなど、軍事関係者は多くが否定的です。
 一方で、劣化ウラン兵器の使用による人体や環境への影響については、1980年代から国際的に懸念が高まっており、その結果として繰り返し国連総会の場で禁止決議や調査決議が可決されています。

◎ 劣化ウラン兵器と同様に、国際人道上の問題や環境への影響に着目して禁止、廃絶運動が展開された兵器に対人地雷やクラスター弾があります。
 これらの兵器については既に禁止条約が成立しており、批准した国はもちろんのこと、批准していない国についても使用に対しては厳しく非難されることになります。

◎ 劣化ウラン兵器は、核兵器や原子力発電の核燃料を生産する際に行われるウラン濃縮で生ずる濃縮残渣が原料です。
 この副産物は核分裂性ウランの濃度が0.25%程度に下がっていることから「劣化」ウランと呼ばれます。劣化の意味はウラン235の割合に対してに過ぎません。
 残った大半はウラン238ですが、これもれっきとした放射性物質であり、金属毒性もウラン235と同程度です。
 これを弾体やおもりや安定装置として使用した兵器が劣化ウラン兵器で、目標に当たると高温で燃焼して放射性微粒子を拡散する性質を持ちます。
 この微粒子は、重金属としての化学毒性と放射性毒性により、内部被曝やがんなどの健康被害を引き起こす危険性があります。

◎ 国際法上、劣化ウラン弾の使用は禁止されていないという見解が一般的になされます。
 しかし、国際人道法の原則に照らせば劣化ウラン兵器の使用は不必要な苦痛や損害をもたらすとして、その合法性はないと考えられます。
 なぜならば、一般産業においてキログラム単位のウランは厳しく規制される放射性物質であると同時に、その取り扱いは核物質防護上も厳格に管理を要求され、劣化ウラン弾一つが300グラム(30ミリ機関砲弾)程度であっても、無許可で持ち歩き保管していたら刑事罰の対象になります。

◎ 国際人道法の考え方から、劣化ウラン兵器が通常の兵器とは異なり、大きな後遺障害や環境汚染を引き起こすことに鑑みて、廃絶すべきとの意見が国際的にも多数になりつつあります。
 国際機関においても例えば、国連環境計画(UNEP)は劣化ウラン弾使用に懸念を示しています。

◎ また、市民グループやNGOでは劣化ウラン兵器の使用に反対する運動を展開しています。
 例えば、「劣化ウラン弾の使用に反対する市民ネットワーク」は、「ウクライナの大地を、劣化ウラン弾で汚染させるな」との署名を呼びかけており、「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)は、「イラクやボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボなどと同じように、ウクライナでも深刻な被害が生じかねない」と指摘し批判しています。

◎ 以上のことから、劣化ウラン弾の使用は国際法に違反していると現段階では断定できないとしても、人体や環境への影響を考慮すれば、その使用を控えるべきだという主張に反対する理由はないといえます。
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