[2023_03_30_14]電力販売めぐる電力会社のカルテルで課徴金1000億円余 公取委(NHK2023年3月30日)
 
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電力販売めぐる電力会社のカルテルで課徴金1000億円余 公取委

 事業者向けの電力の販売をめぐり中国電力と中部電力、九州電力が関西電力と顧客を奪い合わないよう申し合わせるなどカルテルを結んでいたとして、公正取引委員会は各社に対し、過去最高額となる合わせて1000億円余りの課徴金を納付するよう命じました。関西電力は、違反行為を最初に自主申告したため、免除されました。

 課徴金の納付を命じられたのは、
 ▽中国電力と
 ▽中部電力、その販売子会社
 それに
 ▽九州電力の4社です。

 公正取引委員会によりますと、4社はそれぞれ関西電力とカルテルを結び、遅くとも2018年から、大規模な工場やビル向けの「特別高圧」、中小の工場や事業所向けの「高圧」の電力について、互いの営業エリアで顧客を獲得しないよう申し合わせたり、官公庁への電力供給の入札をめぐり、競争にならないよう参加を制限したりしていたということです。
 これまでの調べによりますと、電力の小売りが全面自由化された翌年の2017年に、関西電力がほかの電力会社の管内で営業を本格化させたのをきっかけに、幹部らによる話し合いの場が持たれるようになったということです。
 公正取引委員会は、各社の収益確保や電気料金の引き下げを防ぐねらいがあったとみていて、競争を不当に制限する独占禁止法違反にあたるとして、4社に対し過去最高額となる合わせて1010億円の課徴金を納付するよう命じるとともに、中国電力などに、再発防止を求める排除措置命令を出しました。
 一方、関西電力は、調査が始まる前に違反行為を最初に自主申告したため、課徴金は免除され、排除措置命令も受けませんでした。

 中国電力「深くおわび」

 中国電力は、公正取引委員会から707億円余りの課徴金の納付命令と、再発防止を求める排除措置命令を受けました。
 これについて会社では「株主の皆様、お客様をはじめ関係者の皆様に多大なるご心配、ご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます」とコメントしています。
 そのうえで「本件に対する受け止めと再発防止の取り組みについてはそれぞれの命令の内容を踏まえ、改めてお知らせします」としています。
 中国電力は午後5時半から瀧本夏彦社長が会見を開き、今後の対応について説明することにしています。

 中部電力「おわび申し上げる」

 中部電力は、公正取引委員会から子会社の分も含め、275億円余りの課徴金の納付命令を受けたことを明らかにしたうえで「お客様や株主、地域の皆様、お取引先をはじめ関係者の皆様にご心配をおかけし、おわび申し上げます。命令の内容を精査するとともに今後の対応を検討してまいります」というコメントを発表しました。

 九州電力「厳粛に受け止めている」

 九州電力は、公正取引委員会から子会社を含めて27億円余りの課徴金の納付命令を受けたことを明らかにしたうえで「コンプライアンス行動指針の中で競合企業と公正な競争関係の維持を明記し、従業員への周知徹底をはかるなどしてきたが、今回、行政処分を受けたことを厳粛に受け止めている」とコメントしました。
 今後の対応については、命令の内容を精査、確認したうえで、行政処分を受け入れるかどうかを慎重に判断するとしています。

 違反行為を最初に自主申告し課徴金免除の関西電力の社長は

 関西電力の森望社長は、30日夕方、大阪市内で記者会見を開き、違反行為について謝罪しました。
 会見で森社長は、カルテルを結んだ経緯について、電力各社との競争の激化によって電力の販売価格が下がってきたことを受けて、2018年に開いた社内の会議で、関西エリア以外での営業活動を縮小する方針を決めたことを明らかにしました。
 この会議には、岩根茂樹元社長と、森本孝前社長の2人も出席していて、当時、副社長だった森本氏が、中国電力と九州電力に直接、こうした方針を伝えたということです。
 また、自主申告を決断した経緯などを問われたのに対し、森社長は「2020年の秋ごろに、外部からの指摘を受けて社内調査を行った結果、独占禁止法違反に該当すると考えられる行為を認識したので、その時点で、公正取引委員会に報告を行った。他社についてのコメントは差し控えさせていただく」と述べました。
 そのうえで、森社長は「競合他社との接触に関するルールを設けるなど、これまでも対策に取り組んできたが、このような事態を二度と起こさないという強い決意のもと、私が先頭に立って、再発防止と法令順守体制の強化の取り組みを徹底していく」と述べ、自身の辞任については否定しました。

 専門家「厳しい目で見ていく必要がある」

 公共経済学が専門で、電力やガスの政策に詳しい東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授は「本来はいろいろな事業者の競争によって切磋琢磨(せっさたくま)し、消費者の利益を図るということが自由化やシステム改革の本旨であるにもかかわらず、競争を制限し、価格を高止まりさせるような具体的な行動が出たことはとても残念だ」としたうえで、「まずはコンプライアンスなどを今まで以上に整備し、このようなことを繰り返さないことを体制として整備することが重要だ。それに加えて全国規模で切磋琢磨しながら競争し、『今までと体質が変わった』と消費者に分かるような形で積極的にアピールする必要がある。今回問題とならなかった地域でも、“暗黙のカルテル”が起こる可能性はあるため、本当に競争が機能しているのか電力・ガス取引監視等委員会や公正取引委員会、それに消費者も、厳しい目で見ていく必要がある」と話していました。

 公取委の調査では

 公正取引委員会の今回の調査では各電力会社が、業界団体である電事連=電気事業連合会の会合の機会を利用してカルテルに関する打ち合わせを行ったことなども明らかになりました。
 これを受けて、公正取引委員会の田辺治審査局長は30日、九州電力の社長でもある電気事業連合会の池辺和弘会長に、今後、同じようなことが起きないよう役員と職員に周知徹底を求める申し入れ書を手渡しました。

 田辺審査局長「理念をないがしろにする違反行為」

 また田辺審査局長は、会見で「地域を代表する企業である電力会社により、長年にわたり推進されてきた自由化の目的・理念である電気料金を最大限抑制することや、事業者の事業機会を拡大するという理念をないがしろにする違反行為だ。電力会社間の協調関係を背景に会社によっては、代表者を含む役員級など幅広い層が関与して違反行為が行われた。相手方の供給区域の顧客を競争で奪わないようにするという2社間の市場分割であり、自社の供給区域における競争を制限するものにほかならない」と述べました。

 経済産業省は各社に行政指導

 発表によりますと行政指導が行われたのは、中部電力と子会社の「中部電力ミライズ」、関西電力、中国電力、九州電力と子会社の「九州みらいエナジー」の6社です。
 経済産業省は法令順守の観点から極めて問題があるとして、各社に対して組織の文化も含めて原因や課題を検証することや、社員研修や教育を実施することなどを求めました。
 さらに今回の行政指導の実効性を高めるため、外部人材を活用した検証制度を設けるほか、必要に応じて追加の改善策をまとめるべきとしていて、各社から取り組みの進捗(しんちょく)について報告を受けることにしています。
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