参照元
○10月25日、中国電力は、ボーリング調査に関し、民亊訴訟を山口地裁岩国支部に提訴しました。訴えの内容は、埋立免許(埋立権)に基づく妨害排除(予防)請求、及び埋立施行区域の「占有の保全」です。 しかし、そもそも中電は、祝島漁民の「自由漁業を営む権利」を補償なしに侵害しようとしており、「補償なしの漁業権(財産権)侵害」は憲法29条に反する違法行為です。中電は、「2000年補償契約で補償した」と主張していますが、2019年以降のボーリング調査等に伴う補償を2000年に支払えていたはずがありません。注1したがって、中電の妨害排除(予防)請求は、「違法行為を妨害するな」との法外な請求にほかなりません。 ○そのうえ、妨害排除(予防)請求権は、物権の持つ請求権ですが、公有水面埋立法には、埋立権が物権であるとの規定はありませんから、物権法定主義に基づくだけでも、埋立権は物権ではありません。注2 それゆえにこそ、公有水面埋立法8条は、埋立免許を受けて埋立権を得ても、漁業権等の水面権に補償しなければ(補償契約を通じて同意を得なければ)埋立工事を実施できない旨、規定しているのです。 ○「占有の保全」の請求については、中電は、「埋立免許を得れば、埋立施行区域内を(他の使用を許さずに)排他的に占有できる」旨主張するのですが、公有水面埋立法8条は、埋立免許後にも埋立施行区域内に水面権が存在し続けていることを前提とした規定であり、中電の主張が間違っていることは明らかです。 また、そもそも、海は、そのままでは支配不能ですから、「特定人による排他的支配」である「占有」などできるはずがありません。最高裁田原湾判決(昭和61年12月16日)も、「海は、古来より自然の状態のままで一般公衆の共同使用に供されてきたところのいわゆる公共用物であって、……、特定人による排他的支配 の許されないものである」(注3)と判示しています。 ○他方、祝島漁民の「自由漁業を営む権利」は「慣習に基づく漁業権」です。 「慣習に基づく漁業権」は、慣行水利権と同様、「慣習に基づく公共用 物使用権」の一種ですが、「慣習に基づく公共用物使用権」は「慣習法上 の物権」にあたるとされており、妨害排除(予防)請求権を持ちます(注4)。 したがって、中電でなく、逆に祝島漁民こそが、妨害排除請求権を持つ のです。 ○結 論 4点 以上のことから、結論として次の(1)−(4)が言えます。 (1)中電訴状の主張は、いずれも失当である。 (2)祝島漁民に補償されない限り、埋立・調査は違法行為にあたる。 (3) 違法行為を犯しているのは中電であり、祝島漁民は漁業を営んでいるだけである。 (4) 妨害排除(予防)を請求できるのは、中電でなく祝島漁民である。 注1:この点に関する祝島島民の会からの質問に中電は、一切答えられていない。 たんぽぽ舎MLニュースNo.4046,4068,筆者のホームページ (http://kumamoto84.net)等を参照。 注2:民法175条で「物権は民法その他の法律で定めたもの以外は創設できない」旨規定されており、民法その他の法律(慣習法も含む)に規定がない限り、物権は創設できない。 注3:「公共用物」とは、直接に公共の福祉の維持増進を目的として、一般公衆の共同使用に供される物で、例としては、海・河川・湖沼や道路・公園等がある。 注4:原龍之助『公物営造物法』,290-293頁を参照。 注5:本稿の論旨について、詳しくは次のYouTube「上関原発と中電訴訟」を参照。 https://www.youtube.com/watch?v=TXCTkR8yFmY |
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