[2022_11_08_03]福島原発事故賠償 東電への資金回収は最長64年度まで 会計検査院試算(毎日新聞2022年11月8日)
 
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福島原発事故賠償 東電への資金回収は最長64年度まで 会計検査院試算

 2011年の東京電力福島第1原発事故の賠償を巡り、国が東電側に事実上貸し付けた資金の回収が、最長で64年度までかかることが会計検査院の試算で判明した。検査院は4年前の試算では最長で51年度までとしていたが、今回の試算で13年先に延びた。東電が被災者らに支払う賠償額はまだ増える余地があり、検査院は「回収完了の時期は今回の試算より、将来さらに先に延びる可能性もある」と指摘している。
 原発事故を巡っては、被災者への賠償金や環境省などが行う除染作業の費用などを東電が支払っている。一方、国は民間の金融機関から資金を借り入れ、国債を交付する形で「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」を通じて東電を支援。機構は東電や他の電力会社からの「一般負担金」などを国に納付する形で事実上の返済を進めている。
 検査院によると、これまで国が東電支援のために交付した国債は13兆5000億円で、機構から国に返納されていない金額は約8兆円。機構は一般負担金に加え「東電からの特別負担金」と「機構による東電株の売却益」などを返納の原資としており、検査院はこうした資金の状況から、全額回収にどの程度かかるかを試算した。
 試算では、東電の経営状況や株価が見込み通りに良くなっていないとし、最も時間を要するケースとして23年度以降の特別負担金は年間400億円、東電株の売却益は1100億円にとどまると仮定。この場合、全額回収は64年度まであと42年かかると算定した。
 ただ、23年春ごろには廃炉作業に伴う処理水の海洋放出が始まる見込みで、風評被害が起きた場合に賠償額が増える可能性がある。また、全国で被災者や避難者が起こした裁判で確定した賠償額が政府指針に基づく基準を超えていることから、指針が見直された場合に賠償額もさらに増えることになる。
 こうしたことから、検査院は「賠償額の増加に伴って国からの交付(貸し付け)額がさらに増えれば、国民の負担も増えることになる」とした上で、政府に状況に応じた国民への丁寧な説明を求め、東電にも収益力の改善を要請した。【柿崎誠】
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