[2022_08_09_01]社説:関電「起訴相当」 再捜査で真相の究明を(京都新聞2022年8月9日)
 
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社説:関電「起訴相当」 再捜査で真相の究明を

 巨額の原発マネーに絡む関西電力の金品受領や役員報酬補てん(ほてん)の問題を巡り、国民から選ばれた大阪第2検察審査会は旧経営陣9人について「起訴相当」または「不起訴不当」と議決した。
 会社法違反(特別背任)容疑などで告発された9人を、大阪地検特捜部は昨年11月に嫌疑不十分で不起訴としたが、全て覆した。
 議決は旧経営陣に関する数々の容疑を指摘した。「捜査を尽くした」とした特捜部に対し、「強制捜査を行っておらず、事情聴取も十分であったかは疑問。さらなる捜査を期待する」と投げかけた。
 議決は市民目線に基づく判断として納得できる。捜査が不十分との指摘を重く受け止めねばならない。再捜査で容疑をうやむやにせず、より踏み込んで事実を解明することが求められる。
 金品受領問題は、関連会社も含めて83人が福井県高浜町の元助役(故人)から総額3億6千万円相当を受けとっていた。報酬補てんは、東日本大震災後の赤字で役員報酬をカットしながら、退任後にひそかに嘱託として再契約した計18人に計約2億6千万円を支払っていたとして問題になった。
 議決は、報酬補てんについて「報酬に見合うだけの業務がされていたとも言い難く、実態がほとんどない者もいた。電気利用者への裏切り行為だ」と非難。八木誠前会長と森詳介元会長を特別背任容疑で起訴相当とした。
 金品受領行為に絡む役員の追加納税分を関電が負担する方針を決めた業務上横領と特別背任の疑いでは、この2人と岩根茂樹元社長を起訴相当とした。
 金品受領の収賄容疑や、元助役関連会社へ不適切工事を発注した特別背任などの容疑については、のべ9人を不起訴不当とした。
 起訴相当の容疑は再び不起訴となっても、検審が改めて起訴相当と議決すれば強制起訴される。
 起訴相当議決を巡っては、2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件で起訴猶予となった地方議員らについて、検察が在宅起訴や略式起訴に転じた例がある。
 起訴により、公開の裁判で不透明なカネの流れと刑事責任が追及される意義は大きい。検察は市民の疑念に応えねばならない。
 関電は社外取締役の権限を強めるなどガバナンス(企業統治)改革に取り組んでいるが、旧経営陣の行いが利用者を裏切り、原発政策への不信感に結び付いていることを自覚し、信頼回復のためには再捜査に全面協力すべきだ。
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