[2022_07_27_04]石垣島内陸に「津波石」、河口上流500メートルで発見(日経新聞2022年7月27日)
 
参照元
石垣島内陸に「津波石」、河口上流500メートルで発見

 江戸時代の1771年4月、沖縄・先島諸島を襲った津波をめぐり、海から陸に運ばれたとされる高さ数メートルの巨石「津波石」が2つ、同諸島内の石垣島で新たに見つかった。河口から500メートル前後離れたマングローブ林で、確認された津波石では最も海から離れた場所で発見。従来説より強力な津波だった可能性があるという。原因となった地震は謎が多く、実態を解明する手掛かりとして期待されている。
 最悪クラスの被害を生んだ津波は最大高さ約30メートルに達し、約1万2千人が溺死した。古文書にも記録されており、日本の元号を用いて「明和の大津波」と呼ばれている。
 津波石は元々、海の中にあったサンゴやその化石などの岩石で、大きいものは重さ200トンを超える。これがどれくらい動いたかを見積もり、津波や地震の規模を推定する。
 先島諸島は過去、明和と同規模かそれ以上の津波に繰り返し襲われてきた。石垣島の東側海岸近くで見つかった5つは、津波石として国の天然記念物となっている。
 今回、新しく2つを見つけたのは東北学院大学の柳沢英明准教授(津波工学)の研究チーム。宮良湾沿岸の河口から約450メートル上流のマングローブ林で縦約4メートル横約12メートルの石を、河口から約600メートルで直径約2メートルの石を発見した。
 サンゴやその化石で、重さはそれぞれ約202トン、約2.6トンと推計される。わずかに含まれる放射性炭素を分析して、サンゴが陸に打ち上げられて死んだ時期などを測定。明和の大津波で運ばれたと考えて矛盾はないことが分かった。
 明和の大津波を引き起こした地震は痕跡や記録が少なく、謎が多い。琉球王国の役所が残した文書「大波之時各村之形行書」などから、強い揺れはなく、揺れの割に津波が大きくなる要因があったとの見方が一般的だった。マグニチュード(M)も7.4程度と推定されてきた。
 しかし近年、石垣島では地震による地割れが見つかり、強い揺れを伴う巨大地震の可能性が浮上。政府の地震調査委員会は、津波の規模から逆算しM8.5程度と新たに推定した。地震のエネルギーは従来の40倍超だ。
 柳沢准教授は「かつて石垣島の内陸には他にも津波石は多くあったはずだが、土地の開発で撤去されてしまったようだ。マングローブ林は保護対象で、開発からは逃れた。今回の津波石は、そのおかげで残されたのではないか」と話す。〔共同〕
KEY_WORD:YAEYAMA_: