[2022_07_27_02]東電株主代表訴訟控訴期限(7/27)を迎える 原告側勝訴判決は確定するか 被告人の控訴は7月26日時点で確認されず 株主側は仮執行命令付き判決だから仮執行に着手、つまり差し押さえ等の手続きを開始せよと求める文書を発送 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年7月27日)
 
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東電株主代表訴訟控訴期限(7/27)を迎える 原告側勝訴判決は確定するか 被告人の控訴は7月26日時点で確認されず 株主側は仮執行命令付き判決だから仮執行に着手、つまり差し押さえ等の手続きを開始せよと求める文書を発送 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◎ 7月13日、東京地裁民事8部(朝倉佳秀裁判長、丹下将克裁判官、川村久美子裁判官)による株主代表訴訟判決により、勝俣恒久元会長と清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長、小森明生元副社長の東電の取締役5名に対する善管注意義務違反と任務懈怠による福島第一原発事故の責任を認定し、さらに小森明生元副社長を除く4名に対する、総額13兆3210億円の損害を支払うよう命じた判決。
 歴史的な「朝倉判決」について、被告側は7月26日時点で控訴をしていないという。
 このまま判決が確定すれば、天文学的な賠償金の支払い命令が確定する。

◎「株主」ではなく「東京電力」に支払う

 この判決について、一部の人々は誤解をしていると思われる文章をブログなどに書いている。
 この13兆3210億円の支払先を原告つまり48名の株主であると思っているように受け取れる内容が散見される。
 もちろん、賠償金の支払先は東電であり、株主には一円たりとも支払われない。むしろ訴訟にかかる費用は訴えた株主も負担をするので勝っても「持ち出し」である。

◎株主代表訴訟の意義

 株主代表訴訟は公益を守るとの主旨から、訴えが認められても賠償金は株主ではなく、会社に支払われる。
 このため請求額にかかわらず、訴訟費用の印紙代つまり訴えの際に納付する金額は一律13000円と低額に設定されている。すなわち請求額が22兆円であっても13000円でよいということ。一般的な損害賠償請求訴訟ならば200億円を遙かに超える巨額の手数料が必要になってしまう。
 会社の被った損害などについては、経営者がその責任を取らねばならない場合は、降格、解任、解雇、賠償などについて会社により行われる。一般的には取締役会などで決議されるか、株主総会で議決される。
 しかし会社が役員らを処分しない場合は、株主が代わって訴訟を起こし、賠償を請求することが認められている。(会社法第847条)
 今回の東電株主代表訴訟は、東電の取締役らが原発の事故を想定した津波対策を事前に行っていなかったことなどが原発事故の原因となり、取り返しのつかない未曾有の人災を引き起こした責任があるとして、株主48名が訴えた。
 その判決で旧経営陣の5名に任務懈怠つまり津波対策などをきちんと行う義務を怠ったことを認定、その損害額つまり原発がメルトダウンして放出した放射性物質の影響で被害を受けた人々、産業、自治体、そして東電自身の損害額を一定の時期で13兆3210億円と認定し、これを4人の旧経営陣が東電に支払うことを命じた。
 弁償先は東電だが、その費用は賠償金として被災者に支払った額、そして福島第一原発の無残な残骸になった原発の廃炉費用として認定している。
 東電は現在、経営難に陥っており、被災者の損害賠償請求訴訟最高裁判決などで今まで以上に高額の賠償金を支払わなければならない現状では、13兆3210億円には満たなくても、旧経営陣4名から少しでも賠償金を取ることができれば、今後の賠償に充てることも出来る。

◎仮執行命令付きと強制執行手続き

 朝倉判決は仮執行命令付きの判決だった。
 これは、債権者つまり東電が、債務者つまり旧経営陣4名の負債額つまり13兆3210億円の仮執行をすることができるということ。
 仮執行とは、本来判決は確定しなければ賠償義務も確定しないところ、それでは今後の控訴審、上告審で何年も時間がかかってしまい、その間に損害賠償に充てるべき被告人の財産などがなくなってしまう可能性もあるので、現段階で仮差押えなどで賠償金を確保することを言う。
 金銭請求訴訟では仮執行命令付きはめずらしくはないが、今回の株主代表訴訟では賠償額が高額な上、本来賠償を受け取るべき東電が、被告人の補助参加者となっていることで、問題はやや複雑だ。
 賠償を受け取る側である東電は、今回の訴訟に旧経営陣側の立場で補助参加してきた。株主側代理人の海渡雄一弁護士は「支払い命令が確定したのに東電が旧経営陣に請求しなければ、現経営陣による一種の背任だ」と批判している。
 東電が自ら、旧経営陣に責任はなかったとの立場で訴訟に参加していたことで、いまさら手のひらを返して「賠償金を支払え」というとは考えにくいわけ。
 そこで、株主側は仮執行命令付き判決だから仮執行に着手、つまり差し押さえ等の手続きを開始せよと求める文書を発送している。 合わせて、今後控訴審などがあることを想定し、会社が被告人の側に立って補助参加をするようなことがないようにも求めている。
 東電が着手しないのならば、株主側で行うことも検討している。
KEY_WORD:東電株主訴訟_13兆円賠償命令_:FUKU1_:廃炉_: