[2022_07_27_01]福島第一原発「汚染水」海洋投棄認可に抗議する 原子力規制委員会は人々の声を聞け 新たな安全神話は許されない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年7月27日)
 
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福島第一原発「汚染水」海洋投棄認可に抗議する 原子力規制委員会は人々の声を聞け 新たな安全神話は許されない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 東京電力(東電)福島第一原発事故により発生し続けている放射能汚染水。
 7月22日、これを海洋投棄する認可を原子力規制委員会(規制委)は東電に対して行った。
 その直前に実施されたパブリックコメントで送られていた数多くの反対、懸念を示す意見や、排水せずとも済むとの提案(※注)があったにもかかわらず、規制委はこれを全て無視して決定した。(※注)規制委は「意見1233件のうち、提出意見数は670件、関連意見数は323件である。なお、意見数は、総務省が実施する行政手続法の施行状況調査において指定された算出方法に基づく」としている。

 ◎新たな「安全神話」に反対

 海洋投棄される汚染水は、地下水や雨水、冷却用の注入水が溶け落ちた核燃料、いわゆる「デブリ」に接触して放射性物質の「カクテル」となったものである。
 確かに「多核種除去設備ALPS」などを通しているので放射性物質の濃度は下がっている。しかしゼロではない。
 また、この設備では除去できない放射性炭素14も存在している。
 海に捨てられる放射性物質の総量は、この間の規制委の会合でも明らかにされていないので、どれだけ放出されるかはわからない。
 それなのに、「排水を毎日飲み続けるという、十分に保守的な仮定を置いています。このため、規制基準を満足するかたちでの海洋放出であれば、人や環境への影響は考えられません。」「今回の放射線影響評価により評価された線量は極めて低く、健康影響をもたらすとは考えられません。」 など、極めて断定的に「安全」を主張する態度は、新たな安全神話を作り出すことに他ならない。

 ◎ロードマップの矛盾は無視する規制委

 規制委は、汚染水海洋投棄は、敷地がタンクに占拠されていて廃炉に支障を来すからという理由を挙げる。40年以内の廃炉スケジュールとの関係で、2051年度末には廃炉は完了しているとの、およそ実現不可能は工程を前提におき、そのため敷地を空け必要があるとする。
 具体的には「ALPS処理水の海洋放出により貯蔵タンクの解体・撤去が可能となり新たに燃料デブリ保管施設、使用済燃料保管施設、固体廃棄物貯蔵庫等を設置するためのエリアを確保できる」というのだが、これこそ荒唐無稽である。
 誰もが出来ると信じていないロードマップについては一切言及されていない。

 ◎海洋投棄はリスク低減にはならない

 「リスクを下げ、廃炉作業を着実に前に進めることが何より重要で」あるとの規制委の主張だが、実際には1000基あまりあるタンク群は、見た目には初めのうちは減らない 工程が進み、2040年を過ぎた当たりでようやく、半分程度になるとみられる。工程の終わりまでに数百基のタンク群は存在し続ける。
 一方で、規制委はタンク群が地震に弱いこと、大地震に襲われた場合倒壊のリスクがあることを認めている。であるならばなおさら、現在の陸上に大量のタンクを並べる方法は早急に廃止し、地震や津波に強い地下式大型タンクに移すべきである。
 規制委は自らのリスク評価にも矛盾する主張を続けている。

 ◎反対の声は依然として強い

 海洋投棄に反対しているのは、多くの漁業関係者をはじめとした地元の人々だ。
 福島第一原発事故により生産の場を奪われてきた人々は、苦労の末にやっと生産活動を軌道に乗せつつある。特に漁業は、原発事故以外にも海洋環境の激変に伴う漁獲高の変動や、従事者の減少などで厳しい環境に置かれている。農業についても気候変動や風水害で大きな打撃を受けている。そこに海洋投棄が加われば更に困難な事態を作り出す。
 東電が風評被害を補償するといっていても、原発事故の賠償さえろくに実行しない会社を信じる人はいない。
 こうした困難を強いる規制委の決定を容認することは出来ない。

 ◎海洋投棄はまだ止められる

 規制委の決定は、今までの流れからは予測できる範囲のものである。改めて何かが変わったと言うことでは内。しかしながら東電の工事は、これで本格的に始まるであろう。
 国も東電も、「関係者の理解なくして海洋放出はしない」と「確約」してきた。
 これを守らせ、海洋投棄をさせない取り組みを継続していこう。
KEY_WORD:汚染水_:FUKU1_:廃炉_: