[2022_05_28_04]反核燃派、村長選盛り上げに躍起 青森・六ケ所(河北新報2022年5月28日)
 
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反核燃派、村長選盛り上げに躍起 青森・六ケ所

 任期満了に伴う青森県六ケ所村長選(6月7日告示、12日投開票)で、核燃料サイクル事業の反対派が関心を高めようと奮闘している。日本原燃が2022年上半期を目指す同村の使用済み核燃料再処理施設は完工延期が濃厚な見通し。反核燃派は着工から約30年が経過しても完成のめどが立たず、「事業は破綻している」と批判する。さらに、放射性物質トリチウムを含む処理水の課題を表面化させ、村内外に議論を広める構えだ。(青森総局・伊藤卓哉)

完工延期濃厚「事業は破綻」 処理水放出、青森にも関心を

 村長選にはいずれも無所属で、核燃料サイクルによる振興を掲げる現職戸田衛氏(75)と、反核燃・反原発を訴える新人山田清彦氏(65)が立候補する予定。
 山田氏は元青森県三沢市議で、市民団体「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」の事務局長を務める。21日の事務所開きでは、完工延期により、税金や電気料金の一部が事業費に注がれている現状を憂い、「国民負担を考え、ここでやめさせなければ」と強調した。
 山田氏が争点の一つとする処理水に含まれるトリチウムは、東京電力福島第1原発で総量約860兆ベクレル。対して、同村の再処理工場が06〜08年に行った試運転(アクティブ試験)では、約2150兆ベクレルが海洋放出された。本格稼働となれば、はるかに上回るトリチウムが太平洋に流れ出る見込みだ。
 陣営幹部は「福島は議論が活発にされているが、青森では俎上(そじょう)にも上らない。この選挙は広く関心を持ってもらう好機」と捉える。

14、18年は大敗「議論巻き起こすことに意味」

 反核燃派は14、18年とも戸田氏に大敗し、得票率は1割に満たなかった。高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定を巡り、36年ぶりの選挙となった2月の北海道神恵内(かもえない)村長選で、大敗した瀬尾英幸さん(80)は意義を訴える。「無風では何も変わらない。選挙を通じて議論を巻き起こすことに意味がある」
 自治体の財政基盤の強さを示す財政力指数(20年度)は同村が1・79で県内トップ。原子力関連施設の立地がなく、指数が最も低い0・1の風間浦村とは18倍の差がある。「原子力マネー」が村に潤いを与えてきたのも事実だ。
 事業推進派に暗雲が立ちこめたのは昨年9月。核燃料サイクル政策を巡り、自民党総裁選で河野太郎行政改革担当相(当時)が事業停止を主張した。ただ、いっときの突風に過ぎず、その後大きなうねりになることはなかった。
 「国にはエネルギー政策が国民から支持されるよう取り組んでほしい」。戸田氏は、4月25日の政策発表会見で余裕を見せた。

[使用済み核燃料再処理工場]全国の原発で出た使用済み核燃料を処理し、再び燃料として使う核燃料サイクル事業の中核施設。取り出したプルトニウムをウランとの混合酸化物(MOX)燃料に加工し、国内の原発で利用する。原燃が1993年に着工し、当初は97年に完成予定だったがトラブルなどで延期を重ねた。2020年7月、国の新規制基準への適合性審査に合格し、同年8月に25回目の延期を表明した。総事業費は14兆4400億円に膨らんでいる。
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