[2022_04_13_06]今や世界滅亡への道 核戦争の瀬戸際にある ロシアの侵攻で明らかになった原発の危険性すべての核を廃絶することが生きのびる道 (上)(2回の連載) 渡辺寿子(原発いらない!ちば)(たんぽぽ2022年4月13日)
 
参照元
今や世界滅亡への道 核戦争の瀬戸際にある ロシアの侵攻で明らかになった原発の危険性すべての核を廃絶することが生きのびる道 (上)(2回の連載) 渡辺寿子(原発いらない!ちば)

大見出しの紹介
1.原発・核施設への攻撃は過酷な核事故を起こす
2.日本の原発にミサイル攻撃があれば大規模な核事故となる
3.警察力でミサイルを防げるのか
4.ロシアの侵攻を口実に原発再稼働推進の動き
5.「核共有」議論台頭−非核三原則破壊 日本核武装への道
 以上を(上)に掲載

 以下を(下)に掲載
6.今や核戦争の危機が現実に迫っている
7.「核抑止論」−核で戦争は防げない
  核を持っても安全にはならない
8.核抑止論は核拡散につながる
9.「核抑止論」は平和をもたらさない
10.核戦争計画者の検証
11.核兵器が存在すること自体が危険
12.すべての核の廃絶が人類を救う道

1.原発・核施設への攻撃は過酷な核事故を起こす

 ロシアのウクライナ侵攻戦争はウクライナの人々の多くの生命を奪い、400万人以上の国外難民と600万人以上の国内難民を生み続け、ウクライナ人が生命の危機にさらされています。
 このロシア軍の侵攻で恐ろしいのは、ロシア軍が原発や核施設を攻撃していることです。
 ロシア軍は2月24日侵攻直後に、チェルノブイリ原発を攻撃、制圧し3月4日には一部運転中だった欧州で2番目に大きい南部ザポロジエ原発も制圧、また原発だけでなくハリコフで核物質を扱う「物理技術研究所」なども攻撃し、原子力施設損傷への懸念が高まっています。
 ロシア軍の軍事行動によりチェルノブイリ原発へ外部電源が繋がらなくなりました。後に隣国ベラルーシから電力供給を受けて電力供給が回復したとされますが、チェルノブイリのように停止中の原発でも電力供給が止まると使用済み核燃料の冷却が出来なくなり、原発過酷事故となり、放射能は環境中にまき散らされます。
 稼働中の原発が攻撃されれば事態はもっと深刻になります。
 ウクライナだけでなく、ロシアも隣国も、ヨーロッパ全体が放射能に汚染され、さらに地球規模の放射能汚染が引き起こされます。
 チェルノブイリ原発の立入禁止区域で山火事が発生したという最近の情報があります。事実とすればチェルノブイリ原発から出て周辺の森にとどまっていた放射能が空中に拡散する恐れがあります。放射性物質の拡散はコントロール不能とみられています。

2.日本の原発にミサイル攻撃があれば大規模な核事故となる

 このように原発が武力攻撃されれば、大規模な放射能汚染、核事故が起きる可能性が明らかになりました。
 原子力規制委員会の更田委員長は3月9日衆院経済産業委員会で、日本国内の原発がミサイル攻撃を受けた場合、「放射性物質がまき散らされることが懸念される。現在の施設で避けられるとは考えていない」との見解を示しました。
 国内の原発について政府は「特定重大事故等対処施設」の設置を義務付けています。
 原子炉建屋が航空機衝突などを受けた際、遠隔操作で原子炉の冷却や減圧を続けられるよう緊急時制御室や冷却ポンプなどを整備することを求めています(これすら規制委の使用前検査を通ったのは全体の1割程度ですが)。
 これをテロ対策だとしていますが、テロ自体もミサイル攻撃などを想定したものではありません。
 規制委の更田委員長は「二国間の紛争による武力攻撃などは想定していない」としました。

3.警察力でミサイルを防げるのか

 ロシアのチェルノブイリ原発などへの武力攻撃という事態を受けた首相は3月14日の衆院予算委員会で、原子力の安全について福井ですでにやっているような警察の専従警備隊を配備出来ないか議論すると述べました。
 「福井での取り組み」とは、福井県警が24時間体制で県内の原発に配備している「原子力施設警備隊」のこと。元になった嶺南救助隊は原発警備の専従ではありませんでした。
 2001年9月の米中枢同時テロを機に原子力施設に常駐する警備隊に変更、100人の専従隊員がいます。携行するのはサブマシンガン、自動小銃、ライフル。爆発や銃弾に対応する車両も配備し、原発施設内で警備する。経費は国の予算が充てられています。
 しかしこのような専従警備を全国の原発に配備したとしても、飛んでくるミサイルを防ぐことはできないのは明らかです。全国知事会が政府に原発への武力攻撃を防ぐよう要望したということですが、ミサイルから防御するには原発を止め、燃料を取り出して、廃炉にするしかありません。

4.ロシアの侵攻を口実に原発再稼働推進の動き

 自民党の原発推進派議員でつくる電力安定供給推進議員連盟(会長細田衆院議長)は3月15日停止中の原発を速やかに再稼働するよう政府に要望しました。
 ロシアによるウクライナ侵攻で、原油価格や電気料金が上昇し、安定的な電力供給に影響を及ぼす恐れがあるとして再稼働が必要だと訴えました。
 これに対し萩生田経産相は「再稼働が円滑に進むよう国も前面に立つ」と応じました。ロシアの原発攻撃で原発が武力攻撃されたらいかに危険か分かったはずなのに、原発推進派はここぞとばかり再稼働を進めようとしています。

5.「核共有」議論台頭−非核三原則破壊 日本核武装への道

 ロシアのウクライナ侵攻は、原発攻撃による放射能汚染だけでなく、核兵器そのものを使った核戦争が起こり得るのです。
 このような情勢に便乗して日本の核武装論者たちが動き出しました。
 戦争を止める力を高めるとして、米国の核兵器を日本国内に配備して共同運用する「核共有」導入の検討を求める声を上げ始めたのです。
 はじめから日本自身が核兵器を持って核武装するのではなく、米国の核を日本に配備し、日米で共同管理・運用することからはじめ、実質的に日本の核武装を実現していく構想は、かねてから右派の論客・中西輝政京大教授などが提唱していたものです。
 まず「持ち込ませず」に手をつけて非核三原則をなし崩し的に壊し、日本の核武装を実現していこうというのです。
 日本の核武装を悲願とする安倍元首相が口火を切り、安倍氏に近い高市早苗自民党政調会長などがそれに続きました。岸田首相は核共有は政府として導入は検討しないと言明し、非核三原則を堅持する意向を国会で表明しました。
 また自民党安全保障調査会も「国家安全保障戦略」改定に向けた党の提言に核共有を盛り込まず、非核三原則を堅持することになりました。 夏の参院選を意識して自民党は公式には当面、非核三原則維持ということにしましたが、この議論は水面下では止むことはないでしょう。
                         (下)に続く
 (「原発いらない!ちば」2022年4月最終号より了承を得て転載)
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