[2022_04_13_07]汚染水の海洋放出に反対する抗議声明(あおもりネット2022年4月13日)
 
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汚染水の海洋放出に反対する抗議声明

 2022 年 4 月 13 日

内閣総理大臣 岸田文雄 殿
経済産業大臣 萩生田光一 殿
環境大臣 山口壮 殿
衆議院議長 細田博之 殿
参議院議長 山東昭子 殿
東京電力ホールディングス株式会社 代表執行役社長 小早川智明 殿

        汚染水の海洋放出に反対する抗議声明

なくそう原発・核燃あおもりネットワーク
共同代表 浅石紘爾 大竹進 鳴海清彦

1.約束違反の汚染水放出決定

 昨年 4 月 13 日、国は福島第一原発で発生した汚染水の海洋放出を決定し、2023年から 30〜40 年かけて放出すると発表しました。東京電力や国(経済産業省)は、これまで「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束していましたが、この決定は重大な約束違反です。これに対して、福島県漁連をはじめ多くの団体・住民から反対の声明が出されています。
 私たちは、福島近海と周辺海域をトリチウムで汚染してはいけないと考えています。

2.汚染水放出に反対する理由

 福島では年間 22 兆ベクレルのトリチウムが海洋に放出される予定ですが、私たちは、以下の理由で汚染水の海洋放出に反対します。

@ 海水で薄めて、ゆっくり放出しても放射線総量(780 兆ベクレル)は変わりなく、濃度が上昇する可能性もある。
A 汚染水にはトリチウム以外の放射性物質(セシウム、ストロンチウム、ヨウ素129、プルトニウム、カドミウム等)も含まれている。
 しかも、トリチウム以外の放射性物質の総量は公表されていない。
B トリチウムは海から大気、森へと循環する。
C トリチウムは植物・生物によって有機化される(OBT)。
 光合成によって水と炭酸ガスからトリチウム入りデンプンが生成され、有機物となる。貯留中のタンク中には、すでに有機結合型トリチウムができている。
D トリチウムは、海藻・アワビ・小型魚・大型魚へと生物濃縮する。
E トリチウムは DNA の水素結合に取り込まれると遺伝子は損傷する。
 高線量で発生するマウス白血病は、2 番染色体の PU.1 遺伝子の異常が原因であることがわかっている。
 有機トリチウムの人体に対する影響は、科学的には明白に立証されていないためトリチウムは安全との意見もあるが、白血病、がんの有病率を上昇させるとの研究報告が多数なされている。
F ベータ線は簡単に測定できず、モニターが難しい。
G 海底トンネルで 1km 沖合に放出しても再循環する。
H 実際に起こりうる将来の被ばくに対する国民の不安を解消する十分な説明がなされておらず、また、海洋放出の合意形成の努力もしていない。そのうえ、当然起きるであろう風評被害について、生産者の納得、理解を得ることなく海洋放出に見切発車している。

3.六ヶ所再処理工場からのトリチウム放出

 私たちは、六ヶ所再処理工場の廃止を求めています。六ヶ所再処理工場からは、平常運転時において他に類を見ない年間 9,700 兆ベクレルのトリチウムが何らの処理も施されることなく全量放出される予定で、いわばたれ流されます。この量は福島の 440 倍以上に相当します。トリチウムは六ヶ所村では沖合 3 qに放出していますが、逆流して村落のある港や湖沼に循環してきます。私たちは、トリチウム被ばくを許さない共通の立場において、今回の処理水放出に強く反対します。

4.汚染水の増量

 3 月 16 日に発生した福島県沖地震によって格納容器内の水位が 40cm下がり、3 月 23 日から注入水量を毎時 3.5 m3から 5.5 m3に増やしています。地震による格納容器の損傷拡大については全くわかっていないことから、処理水の放出量が今後増加する事態は容易に想定されますが、その対策が示されていません。

5.誤った情報開示は許されない

 復興庁は「知ってほしい 3 つのこと」というトリチウムに関するチラシを作成し、全国の学校に一方的に送り付けました。内容が間違っているだけでなく、教育委員会に相談もなく送りつけたことは手続き上も問題で、強く抗議します。国と東京電力は事実を隠さず、正しい情報を公表するべきです。

6.海洋放出の代替案を早急に検討すべきである

 凍土壁に代わる汚染水減少対策に全力投球するべきです。
 トリチウムの半減期は 12.3 年で年々放射能量は減少します。大型タンクによる長期保管やモルタル固化による処分など海洋放出に代る方策を早急に検討実施すべきです。

7.結語

 以上のように、海洋放出は、人体や環境に対する安全性に疑問があるうえ、代替案の検討も尽くされていないし、正確な情報提供もなされていません。こうした状況のもとで、漁業者をはじめとする多くの国民、住民が海洋放出に反対するのは当然のことです。
 よって、私たちは、今回の海洋放出決定に対して強く抗議し、直ちに放出計画を中止し、汚染水対策を抜本的に見直すことを要求するものであります。
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