[2022_03_23_02]再生エネの不確実性、原発再稼働… 電力逼迫警報が突き付けた課題(産経新聞2022年3月23日)
 
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再生エネの不確実性、原発再稼働… 電力逼迫警報が突き付けた課題

 東京電力と東北電力の管内で発令されていた電力需給逼迫警報が23日、全面解除された。16日の福島県沖の地震の影響で電力の供給力が落ちていたところに悪天候や気温低下が重なり、一時は広範囲での停電が懸念された。今回は急場をしのいだとはいえ、企業や家庭の節電に頼った側面もあり、電力の安定供給のあり方に課題を突き付けた。
 「既存の火力発電所の休廃止が進む中、近年は供給力の確保が重要な課題で、(電力需要のピークに対して供給力にどの程度の余裕があるかを示す)供給予備率が平常的に低くなっている」。横浜国立大学大学院の辻隆男准教授(電力系統工学)はこう指摘する。
 地域間で電力を相互にやり取りする「連系線」の増強は課題の一つだ。連系線の容量が増えれば、電力を融通する柔軟性が高まる。経済産業省の担当者は23日の報道陣への説明で「安定供給という観点からも、連系線を広げて融通の余地を増やすことが大事だと改めて確認した」と話した。
 連系線の整備には長期間を要し、費用に見合う効果が得られるかも問われる。連系線の将来像をめぐっては、広域運用の司令塔である電力広域的運営推進機関でマスタープランの策定を進めているが、今回の東日本での需給逼迫を踏まえた検討が求められそうだ。
 一方、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの導入が進んだことで、発電量が季節や天候に左右される再生エネの不確実性が電力需給の全体的なバランスに響くようになっている。
 東電管内で電力網に接続している太陽光発電の出力は今年1月末で約1777万キロワットで、完全に発電されれば東電の供給力全体の25%程度に相当する。太陽光の発電量は、関東が好天の日には1千万キロワットを超す時間帯もあるが、東電によると警報が発令されていた22日は悪天候のため最大で約174万キロワットにとどまった。
 再稼働が遅れている原子力発電の活用も問われる。政府は昨年、令和12年度に総発電電力量の20〜22%を原発で賄う方針を打ち出したが、元年度実績は6%でその差は大きい。新規制基準の下で再稼働したのは西日本の6原発10基にとどまり、東日本はゼロだ。
 東日本で需給が逼迫した22日、経団連の十倉雅和会長は記者会見で「既設の原子力の有効活用を真剣に考えるべきだということが再認識された」と述べた。
 供給力の確保に加え、需要面でも対策を深める必要がある。横国大の辻准教授は「非常時には柔軟に需要を減らす『デマンドレスポンス』と呼ばれる仕組みを成熟させるなど、電力システムの柔軟性を高めることが重要だ」と指摘する。(森田晶宏)
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