[2022_03_15_02]チェルノブイリ原発の外部電源復旧確認できず ザポリージャ原発は2基が稼働中 保障措置システムの停止はザポリージャ原発では復旧 福島第一原発事故と同様に交代できない職員が苦闘 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年3月15日)
 
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チェルノブイリ原発の外部電源復旧確認できず ザポリージャ原発は2基が稼働中 保障措置システムの停止はザポリージャ原発では復旧 福島第一原発事故と同様に交代できない職員が苦闘 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

☆ 3月10日の【IAEA第17報】と3月11日の【第18報】を合わせて 紹介します。

◎ ザポリージャ原発は現在のところ二基が運転中で、電力も供給されていると見られます。
 しかしながらチェルノブイリ原発では、電力復旧はベラルーシの外部電源が復旧したと報じられていますが、依然として電力供給は出来ていないと見られます。
 また、核物質防護にも大きな影響を与えるIAEA保障措置システムの停止は、ザポリージャ原発では回復した者のチェルノブイリ原発では未だ復旧していないとのこと。
 さらに、発電所職員の勤務交代が出来ず、同じ人がずっと勤務を続けているといいますから、過酷です。

◎ 条件は異なりますが、地震と津波、さらに爆発にまでさらされ、長期間交代メンバーが到着しなかった東電福島第一原発事故を思い出します。
 3基がメルトダウンし、1基が爆発で破壊された福島第一原発事故と同様の厳しい状態にウクライナの原発が置かれている現状であるとしたら、11年も経て、今ウクライナで福島第一原発事故が再現されていると思えて仕方がありません。
 おそらく、福島第一原発事故に遭遇し、死を覚悟した職員と同様に、死を覚悟しながら放射能汚染を再び繰り返すまいと勤務しているウクライナの労働者の置かれている状況に、胸が痛みます。
 以下、抄訳です。

☆ 3/10【IAEA第17報】抄訳

◎ ロシアが管理下に置いたチェルノブイリ原発が外部電源を喪失した翌日、ウクライナ政府は国際原子力機関(IAEA)にチェルノブイリ原発からのあらゆる連絡が途絶えたと伝えた。グロッシ事務局長が明らかにした。
 また、事務局長は電力が復旧したという報告も把握しており、確認を求めていると述べた。
 通信途絶前の情報によれば電力線は損傷しており、送電網から遮断されているという。
 電力供給のため非常用ディーゼル発電機の燃料を継続輸送する必要がある。
 電力は使用済核燃料や水質管理、化学水処理など安全上重要なシステムに供給されており、一方、放射線監視や換気システム、通常の照明などの機能が維持できない。

◎ しかしながら第16報で報告されたように、使用済燃料施設の冷却水の量は、電力供給がなくても自然循環状態でも熱除去を維持するのに十分であり、送電網遮断は様々な放射性廃棄物の管理施設がある原発の本質的な安全機能には、重大な影響を及ぼさない。

◎ 規制当局による使用済燃料貯蔵施設の安全分析報告書は、ディーゼル発電機などの非常用電源から供給される電力を含む全電力喪失の場合「本質的な安全システムへの影響はない」と結論づけたと述べた。
 また、使用済燃料貯蔵プールの構造及び系統に損傷がなく、本来の機能が維持されていることも確認できた。
 非常用電源が失われた場合でも、使用済み燃料プールの水位と温度を監視することは可能だと当局は述べた。
 しかし、施設内の換気が不十分なため、放射線安全状況が悪化している中で作業を実施することになる。また、運転時の放射線安全手順に従うことも今はできない。

◎ 2月24日にロシア軍が制圧した前日から、交代することができていない。
 チェルノブイリ原発の職員の状況の悪化と疲弊について、事務局長は警鐘を鳴らした。
 ザポリージャ原発の電源状況は、第16報で報告されたものから変更はない。
 このサイトには、4本の高圧送電線(750kV)の外部電力と、待機状態の電力線がある。4本のうち2本が破損しているため、現在は2本の電源ラインに加えて1本が待機状態だ。
 事業者は、原発が必要とする電力は、一系統の電力線で十分供給できるとIAEAに伝えている。さらに、ディーゼル発電機は予備電力を供給する準備ができており、待機している。

◎ しかし、同プラントのもう一つの課題として、現状では、必要な予備部品や設備、専門職員を現地に派遣して計画的な修理を行うことができず、1号機の補修作業は、プラントの運転手順書で要求される最低限のレベルまで減らされている。
 第16報で報告された、チェルノブイリ原発及びザポリージャ原発の放射性物質及び活動を監視するために設置された保障措置システムからの遠隔データ伝送の喪失に関して、IAEAはこれらの設置された監視システムとの通信を再確立することができていない。

☆ 3/11【IAEA第18報】抄訳

◎ ウクライナ当局は、ロシアが支配するチェルノブイリ原発の敷地への外部電力供給を復旧するため、損傷した電力線の修理を開始したことを国際原子力機関に報告したと、グロッシ事務局長は本日発表した。
 3月10日の夜に始まった作業で一区画の修理には成功したが、まだ電力は供給されておらず、その他の場所も損傷があることを示していると規制当局は述べた。原発敷地外の厳しい状況にも関わらず、修復作業は継続するという。
 非常用ディーゼル発電機は3月9日から現場に予備電力を供給しており、規制当局は施設に新たな燃料が供給されたと報告した。
 しかし、電力線の早期修復は極めて重要である。

◎ また、チェルノブイリ原発を管理する上での課題に加えて、規制当局と現地の通信は3月10日に切断された。
 その結果、施設での放射線モニタリングに関する情報をIAEAに提供することが不可能となった。
 それでも、規制当局は、発電所の敷地外の上級管理者を通じて、現地の状況に関する情報を引き続き受け取っている。 (中略)

◎ チェルノブイリ原発の職員はますます困難な状況に直面している。
 211人の技術要員と警備員は、実質的に2週間以上現場で暮らしていると当局は述べ、食糧備蓄の確保についても、懸念を表明した。(中略)
 ザポリージャ原発では、ロシア軍が6基の原子炉を有するウクライナ最大の原発を制圧した3月4日の事件の後、損傷した訓練センターや他の場所で見つかった不発弾を探知し、処理する作業が進行中であると規制当局は述べた。
 また、工場を運営するスタッフは日常業務に支障をきたすことなく、通常のスケジュールに従って交代勤務をしているという。
 しかし他国の軍隊が存在することは、労働者の士気に影響を与え、プレッシャーとなっていると付け加えた。

◎ 規制当局は発電所との連絡は維持しているが、IAEAはザポリージャ原発管理部門に接触するのに苦労している。
 ハリコフ市では、以前にも被害を受けた原子力研究施設が、さらに被害を受けたと当局は述べた。この施設は、医療および産業用途のための研究開発および放射性同位元素製造に使用されていた。
 核物質は未臨界であり、放射性物質の保有量は非常に少ないため、IAEAは損傷が放射線学的影響を及ぼさないであろうと推定した。

◎ とはいえ、IAEAは武力衝突の際にウクライナの核施設が直面するリスクを改めて強調し、同国の核のセキュリティを確保することを目的としたグロッシ事務局長の取り組みの緊急性を強調した。

◎ また、ウクライナの原発稼働状況については、ザポリージャ原発2基、リヴネ3基、フメリニツキー1基、南ウクライナ2基など、15基の原子炉のうち8基が稼働を続けているとした。
 放射線量は正常だった。

 更新16で報告された、放射性物質や原発の活動を監視するために設置された保障措置システムからの遠隔データ送信の部分的喪失に関して、IAEAは、ザポリージャ原発からは復旧したが、チェルノブイリ原発からはまだ復旧しておらず、南ウクライナ原発からのデータ転送には一定の問題があったと述べた。
 ※≪事故情報編集部≫より
  この文章は、3月13日受信です。
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