[2022_03_12_03]社説:福島原発の廃炉 難作業克服へ道筋示せ(京都新聞2022年3月12日)
 
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社説:福島原発の廃炉 難作業克服へ道筋示せ

 いまだ全容がつかめない事故の深刻さを改めて思い知らされる。
 東京電力福島第1原発事故から11年たったが、廃炉に向けた作業は険しさが続いている。
 東電は先月、1号機の原子炉格納容器内の調査で、溶け落ちた核燃料(デブリ)の可能性がある堆積物を初確認した。
 事故で炉心溶融(メルトダウン)した1〜3号機全てでデブリらしき一端をようやく捉えたが、どこに、どれだけあるか詳細は分かっていない。
 極めて強い放射線を出して作業を困難にしており、目標の全量取り出しは見通せないのが現状だ。
 政府や東電が掲げる30〜40年での廃炉完了というゴールへの道筋はかすんでいる。
 廃炉作業は、現場の高い放射線量や損壊建物のがれきなどに阻まれ、主要な作業計画の見直しが繰り返された。デブリの取り出しは最難関で、工程表で事故後10年以内とした着手が遅れている。
 溶けた燃料が制御棒などの炉内構造物と混ざり合い、冷え固まったデブリは、1〜3号機合わせて880トンとの推計がある。
 人が近づけないためロボットを入れての調査は限定的で、詳しい形状や成分、分布などはつかめていない。
 東電はまず、内部の把握が比較的進んだ2号機で年内に試験的に少量の取り出しを始め、実態解明を目指す。徐々に量を増やす計画だが、本格的な取り出しには、それぞれの内部状況に応じた専用装置の開発が不可欠という。
 取り出したデブリの保管場所も必要で、その後の処分先は議論すら始まっていない。道のりは遠いが、着実に進めねばならない。
 原子炉建屋上部のプールで保管中の使用済み核燃料の搬出も難題だ。
 4号機は2014年、3号機は21年に終えたが、計約千体が残る1、2号機では24年度以降の取り出し開始を目指している。水素爆発で崩れたがれきの撤去や大型カバー設置を進め、建屋の高い放射線量を下げるのが課題といえる。
 いまもデブリを冷やす注水が続き、雨水や地下水と混ざった汚染水が発生し続けている。政府の方針を受け、東電は23年春ごろから、除去しきれない放射性物質トリチウムを含む処理水を薄めて海洋放出する計画だが、風評の懸念など漁業関係者らの反対は根強い。
 長期にわたる被害と廃炉の困難さに関心を向け続けたい。政府と東電は、国民に明確な道筋を示して理解を得ていく責任がある。
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