[2020_10_13_04]女川原発、実効性なき避難計画に基づく再稼働認められない「脱原発首長会議」が緊急声明(週刊金曜日2020年10月13日)
 
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女川原発、実効性なき避難計画に基づく再稼働認められない「脱原発首長会議」が緊急声明

 全国の市区町村長とその経験者で構成する「脱原発をめざす首長会議」(世話人は村上達也前茨城県東海村長ら6人)は9月12日、東日本大震災で被災した東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働問題をテーマにしたフォーラムをオンライン形式で開催した。同日発表の緊急声明は、重大事故時に住民を避難させる避難計画の実効性が確認されることが、再稼働の「最低の条件」と指摘。「そうでない限り、宮城県は再稼働について立地自治体として同意すべきではない」と求めた。
 東北電力の調査によれば、女川原発2号機(出力82万5000キロワット)は、東日本大震災で原子炉建屋の壁に1130カ所のひびができたことが確認された。この「被災原発」に対し、原子力規制委員会は176回の審査会合の末に、2月に新規制基準に適合していると認める「審査書」を決定した。東日本大震災で被災した原発としては、日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)に続き、2基目となる。
 再稼働に向けては、原子力規制委員会の審査のほか、関門はざっくり言えば二つある。一つは、新しい規制基準を満たすための安全対策工事だ。東北電力は4月、安全対策工事の完了時期を2020年度から22年度に延期すると発表した。海抜約29メートルの防潮堤建設などに時間がかかるためだ。
 もう一つの関門は立地自治体の同意。女川町、石巻市、宮城県の同意が必要となる。安全対策工事の延期によって急ぐ必要がないにもかかわらず、しかもコロナ禍によってさまざまな集会が中止・延期される中、宮城県は8月に原発30キロ圏内の住民説明会を7回開催した。
 野党系県議が「県内で感染者が増え、説明会への参加をためらう人がいる」と開催延期を要求したが、県は予定通り実施。参加者は募集定員の約4割にとどまった。その説明会では「(避難ルートは)震災でも台風でも浸水して車が通れなくなった。どう避難すれば良いのか」などの疑問の声が上がり、避難計画の実効性が不安視されている現状を浮き彫りにした。

【「避難」前提にエネルギーを生産することの愚かしさ】

 9月12日のオンラインフォーラムでは、女川原発から30キロ圏内にある宮城県美里町の相澤清一町長が、『河北新報』が4月に実施した世論調査で再稼働に反対が61・5%、原発の安全性については74・0%が「不安に思う」と回答したことを紹介。「多くの方が不安を持っている。民意を聞くのが地方自治の基本であり、それをないがしろにするのは地方自治の否定につながる」と述べ、再稼働反対への強い姿勢を示した。
 首長会議の世話人の一人、桜井勝延前福島県南相馬市長は「避難計画についていろいろと議論されているが、『避難計画は機能しない』というのが、東日本大震災の際に私が経験した教訓。そもそもなぜ避難することを前提にエネルギーを生産しなければならないのか。命と向き合わなければならないようなエネルギー政策を推進することが間違いだ」と述べた。
 また、村上前東海村長は東日本大震災を振り返り「私はあの時、女川から東海までの全原発14基すべてがメルトダウン寸前にあったと思っています。この思いは今も変わっていません」「女川原発の根本的な問題は、原子炉自体にある。炉型は、ゼネラル・エレクトリック(GE)製の沸騰水型MARK1型である。この炉型の欠陥は福島第一で証明済み。女川はまったくダメです」とのメッセージを発表した。
 フォーラムには宮城県議で「脱原発をめざす宮城県議の会」の佐々木功悦会長や「女川原発の再稼働を許さない! みやぎアクション」世話人の舘脇章宏氏、弁護士で「新潟県原子力災害時の避難方法に関する検証委員会」委員を務める大河陽子氏が登壇。首長会議からは保坂展人・東京都世田谷区長ら15人が参加した。
(佐藤和雄・脱原発をめざす首長会議事務局長、2020年9月25日号)
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