[2017_06_14_02]関西・中部・北陸電力連携の狙いは「東電との再編封じ」(週刊ダイヤモンド2017年6月14日)
 
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関西・中部・北陸電力連携の狙いは「東電との再編封じ」

 電力業界におけるレジスタンスである。6月2日、関西電力と中部電力、北陸電力の3社は、送配電部門の連携を強化することを決めた。
 経済産業省は推定総額21.5兆円にも上る福島第一原子力発電所の廃炉や賠償、除染の費用を確保していくために、その中心的役割を果たす東京電力ホールディングスの収益力強化を目指している。そのために東電には他電力と送配電や原子力事業の再編・統合を進めるように指導。東電が5月に発表した新たな経営計画「新々総合特別事業計画」には、送配電事業において2020年代初頭に共同事業体をつくることが明記された。
 だが、巨額の福島関連費用を背負い、かつ、国の管理下にある東電と組むことに、他電力全社はそろって拒否反応を示していた。特に岩根茂樹・関電社長は「共同事業体は考えていない。ニーズもない」と明確に否定。再編しなくとも連携強化は進められるという考え方を示していた。
 その考え方通り、3社はもともと送配電部門で設備の効率的運用や保守業務、災害時の応援などの協力関係を築いてきた。供給エリアが同じ周波数帯であることや、関電が富山県や長野県等に水力発電所を保有している関係で、送配電施設が供給エリアを跨いで設置されていたからだ。
 今回はそれに加えて、設備の最適化や需給調整など協業分野を広げる。いわば従来の延長線上の連携で、「大々的に喧伝するほどのことでもない」という声も業界内からは漏れるが、国の「東電と再編せよ」という圧力に抵抗の意思を示す絶好の機会でもあったのだ。

● 難易度上がる東電再編

 もっとも、3社には連携強化を進めておきたいそれぞれの事情があった。
 関電は昨年度、販売電力量で中部電に抜かれ、業界2位の座から陥落。16年4月からの電力自由化で大阪ガスの攻勢を受けており、すでに32万件以上の顧客を奪われた。高浜原発3、4号機が再稼働し、7月からの電気料金値下げで反撃に出る予定だが、関西圏全体の電力需要は下落傾向。コスト削減は喫緊の課題なのだ。
 中部電も電力自由化で越境販売してきた東電などに顧客を奪われている。今後は、原発再稼働を武器に関電からも攻められるリスクがあり、コストが削減できるなら、将来の強敵となり得る関電とも手を組んでおきたいのだ。
 北陸電はより深刻だ。設備の修繕費増加で、16年度は業界内で唯一、最終赤字に転落したのだ。今期も修繕費は高止まりする見込みで、コスト削減が図れる3社連携は渡りに船だった。
 今後、業界内では国の圧力から逃れる形で、レジスタンスに参加する電力会社が出てくるかもしれない。そうなれば、国と東電が目指す再編の難易度はさらに高くなるだろう。
 (「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)


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