[2011_12_08_02]津波対策 可能だった 住民への情報に不備 原発事故調 中間報告の柱に(東奥日報2011年12月8日)
 政府の東京電力福島第1原発事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東大名誉教授)が(1)大津波に備えた防水対策や電源準備は可能だったが、実施されなかった(2)避難住民に被ばく軽減のため必要な情報や指示が届けられなかったーの2点を問題視し、26日に公表する中間報告で事故の教訓を得るための考察の柱にする方向で調整していることが7日分かった。

 また吉田昌郎前所長(病気療養のため1日付で本店に異動)が調査委の事情聴取で、原子炉格納容器が爆発して収束作業が不可能になり、はるかに多くの放射性物質が飛散する事態を懸念したと証言したことが分かった。関係者によると、吉田氏は「地獄を見た」「(燃料が格納容器の底を貫通する)チャイナ・シンドロームになると思った」とも話した。
 調査委は、もっと大きな惨事となる恐れがあったことを深刻に受け止め、通常の事故調査の枠にとらわれず、原発事故とどう向き合うかを広い視点で提言する方向で議論している。ただ、どこまで踏み込むか慎重論もあり、調整が続いている。
 調査委は6日に開いた非公式会合で、中間・報告のうち事実関係をまとめた六つの章をめぐる議論をほぼ終了。畑村委員長や作家の柳田邦男委員長代理らが起草した「考察」と「提言」の素案の本格討議に入った。
 考察は、責任追及でなく、被害者に寄り添って事故の教訓をくみ取ることを主眼にしており、住民の立場から必要な指示や連絡がなかったことに焦点を当てる方向だ。
 政府は3月11日の事故発生後、同心円状に避難区域を設定し、半径3キロ、10キロ、20キロと順次拡大。しかし放射性物質が風で流れた北西方向の20キロ圏外に計画的避難区域を設定したのは4月22日だった。この間、情報不足で自分の居住地域より線量が高い地域に避難した人もおり、住民に「余分な被ばく」をさせたとの指摘がある。
 津波については東電の2008年の社内研究で、想定を大きく上回る津波の可能性が示されたが「具体的根拠のない仮定に基づく」(東電社内調査中間報告)とされ、対策に生かされなかった。
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