[2011_08_25_02]東電 10メートル超す津波試算 福島原発 08年、対策取らず(東奥日報2011年8月25日)
 東京電力は24日、2008年4〜5月に福島第1原発に高さ10メートルを超える津波が来る可能性があると試算していたと明らかにした。しかし、実際の津波対策にこの試算結果を反映せず、経済産業省原子力安全・保安院へも震災直前の3月7日まで3年近く報告していなかった。
 東電は、「あくまで調査研究活動の1つにすぎない」としているが、原発の防災対策に対する認識の甘さがあらためて問われそうだ。
 保安院は原発事故をめぐる第三者機関「事故調査・検討委員会」に報告した。
 試算は、国の耐震設計審査指針が06年に改定されたことなどを受け実施。第1原発の5、6号機でいずれも海抜10・2メートルの津波を推定。2号機で9・3メートル、1、3、4の各号機でも8・7〜8・4メートルに及んでいた。敷地の一部では、津波が最高で15・7メートルまで駆け上がるとの結果も出た。
 従来の東電の想定津波は最大5・7メートルで、震災の津波では14〜15メートルまで海水が到達した。第2原発への津波について、試算は7〜8メートルとした。
 保安院には東電の課長クラスの担当者が説明。保安院は「早急に対策が必要」と指導、設備面の対応を求めたという。
 試算は、政府の地震調査研究推進本部の見解をもとに、三陸沖から房総半島沖にかけての海溝付近でマグニチュード(M)8.2程度の地震が起きたと想定。東電はこのほか第l原発に6メートルを超える津波の可能性があるとも試算、09年9月に口頭で保安院に報告した。保安院の森山善範原子力災害対策監は、震災直前の報告について「その後の対応は検証されないといけない」と述べた。

 福島第1原発の津波被害

 福島第1原発では3月11日、津波により海面から14〜15bの高さまで海水が到達、屋外に設置されていた非常用ディーゼル発電機が海水をかぶって壊れた。このため、炉心を冷やす水を送るポンプを動かす電力が確保できなくなり、炉心溶融や建屋の水素爆発を招いた。また、計器などの機器に電流を送り込むための設備がある建屋地下室が浸水、電力供給の復旧が遅れて被害を拡大させた。
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