[2011_08_25_01]地震学会 「想定外」問い直しへ 大震災で臨時委設置 来春提言とりまとめ 日本地震学会(東奥日報2011年8月25日)
 「これまでの研究に何が足りなかったのか」。マグニチエード(M)9.0という観測史上最大級の地震となった東日本大震災は、多くの地震学者にとって「想定外」だった。約2千人の専門家らが加入する日本地震学会(会長・平原和朗京大教授)は25日までに、研究の在り方を問い直す臨時委員会を設置し、検討を始めた。
 10月15日に静岡市で防災などをテーマとする特別集会を開き問題提起、研究者の反応や議論を踏まえて、来春までに提言をまとめる。
 3月11日の地震は、下に沈み込む太平洋側のプレートとの間にひずみをためた陸側のプレ一卜が跳ね上がって起きた。震源域は長さ約400キロ、幅約200キロに及び、海底面が最大で数十メートル動き、大津波を発生させた。
 それまで日本周辺では東海、東南海、南海の3地震が同時発生したとみられる1707年の宝永地震が推定M8・6で最大と考えられており、M9規模の地震が起きる可能性を指摘する研究者はほとんどいなかったという。
 特に東日本では平均約37年周期で繰り返し発生し、政府の地震調査委員会が「今後30年以内の発生確率99%」としていたM7.5前後の宮城県沖地震が知られ、平原会長は「宮城県沖地震に関心が集中し過ぎていたのかもしれない」と話す。
 1995年の阪神大震災の後には全国に地震計などの観測網が整備され、緊急地震速報がスタート。しかし当時、これらの政策に「必ずしも研究者が積極的に関与したとば言えない」との声もあり、臨時委では研究者や学会の政策に対する姿勢や、社会との関わりについても検証するという。
 委員長を務める鷺谷威・名古屋大教授は、「事前に想定できなかったのはなぜか。被害を減らすために何かできなかったか。地震学者にかけていたものがないか省みて意識改革を促し、今後に生かしたい」と話している。

 日本地震学会

 研究発表や意見交換を通じ、地震学の普及と発展を目指す学術団体。会員は地震学者ら約2千人で、事務局を東京都文京区に置く。毎年秋に大会と呼ばれる集会を開催しているほか、年に4回、専門誌「地震」を発行している。1880年に世界初の地震学会として創設されたのが始まりで、組織改編などを経て現在の学会は1929年に創立。2010年12月に公益社団法人となった。
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