[2011_08_25_03]「四連動」想定必要 三連動に加え沖合震源 東大研教授指摘 津波、2倍にも(中日新聞2011年8月25日)
 東海・東南海・南海と「三連動」の発生が懸念される西日本の巨大地震。これに加え、これまで想定していなかった沖合の震源域も併せて動く「四連動」が起きる可能性があるとの研究結果を東大地震研究所の古村孝志教授がまとめた。
 東日本大震災の巨大地震のメカニズムを反映しており、試算では津波がこれまでの想定の二倍程度まで高くなる可能性があると警告している。
 海側のプレート(岩板)が陸側のプレートの下に沈み込む「南海トラフ」では、東海・東南海・南海の各地震が繰り返し発生。これまで、三地震が連動しマグニチュード(M)8・6だったとみられる江戸時代の宝永地震(1707年)が最大級とされ、防災対策も宝永地震を念頭に進められてきた。
 古村教授は、南海地震などを研究する中で、1605年の「慶長地震に着目。地震の揺れが比較的小さいのに、大きな津波が来襲する「津波地震」だったとし、宝永地震より約75キロ沖合の海溝に近い部分を震源域とすれば津波地震の発生を説明できるとした。
 東日本大震災後、古村教授は宝永地震の震源域に加え、さらに沖合の慶長地震震源域も同時に動く「四連動」の可能性を考え始めた。試算では、これまでの「三選動」より1・5〜2倍程度の規模の津波が発生する可能性が示された。
 高知大の岡村真教授らのグループは、高知県土佐市の池で、約二千年前に巨大津波が襲ったことを示す堆積層を発見。厚さ約50センチで、宝永地震の層の倍以上あった。
 岡村、古村両数授は「宝永地震を上回る津波があったとすれば、宝永地震と慶長地震の震源域が連動した可能性が高い」とみる。
 この超巨大地震″の津波メカニズムは「東日本大震災の巨大津波と同じ」と古村教授。
 今回の震災では、プレート境界深部の震源域が相次いで破壊。さらに、太平洋プレートが陸側のプレートの下に沈み込みを始める日本海溝付近で、浅い部分も大きく破壊されたため海底の変動が大きくなり、巨大津波になったとみる。
 この浅い部分は、明治三陸地震(1896年)と延宝地震(1677年)の震源域に挟まれた領域。両地震は津波地震と考えられており、今回動いたのは津波地震が長年ない「空白域」だった。
 古村教授は「浅い震源域は、明治三陸や慶長地震のように単独で滑る可能性もあったが、今回は深い部分につられて動いたのかもしれない」と分析。
 「南海トラフでも同様の現象は起こり得る。
 宝永地震を最大級とみるべきではなく、津波対策などを再点検する必要がある」と訴える。
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